新エネルギー導入に積極的な小さな島国

たいていの島は何らかの再生可能エネルギー源に恵まれている。河川、滝、風、太陽光、バイオマス、波力、地熱貯留層などだ。しかし、どれをとっても結局、発電や輸送に際しては、海外から輸入した化石燃料に大方、あるいは完全に頼らざるをえないのが実情である。

石油価格の高騰に伴い、38ヵ国の小島嶼開発途上国(SIDS)の内、34ヵ国において、燃料輸入は年間輸入高の20%を占めるまでになっている。これは、国内総生産の5%から20%にあたる。さらに、EUの286島の多くでも、総輸入高の15%に及んでいる。

先週、ここで 2日間にわたり50カ国が参加した会議が閉幕し、「The Malta Communiqué On Accelerating Renewable Energy Uptake For Islands(島々のための再生可能エネルギー導入を推進するマルタコミュニケ)」 が採択された。その下で提唱されている取り組みは、化石燃料への依存およびそこから生じる公害を大幅に削減、場合によってはゼロにしつつ、エネルギー保障、雇用、経済、社会福祉は向上させようというものだ。

マルタにおける「再生可能エネルギーと島のグローバルサミット(The Renewals and Islands Global Summit)」は、アブダビを本拠として100ヵ国が参加する国際再生可能エネルギー機関(IRENA)およびマルタ共和国政府によって共同開催された。 ちなみにマルタ共和国は、地中海に浮かぶ島国で、面積はEU加盟国中で最小の316平方キロメートル、そこに41万人の人々が暮らしている。

島々のための再生可能エネルギー導入を推進するマルタコミュニケは、化石燃料への依存およびそこから生じる公害を大幅に削減、場合によってはゼロにしつつ、エネルギー保障、雇用、経済、社会福祉は向上させようというものだ。

この会合は、昨年1月、IRENAの運営審議会によって開始された、再生可能エネルギーと島に関するイニシアチブにおいて重要な意味を持つものである。また、5月にバルバドスで開催された「小島嶼開発途上国におけるすべての人のための持続可能エネルギーの達成(Achieving Sustainable Energy for All in Small Island Developing States)」閣僚会議、および6月のリオ+20会議のフォローアップとしても位置づけられる。

マルタコミュニケではIRENAに「再生可能エネルギーを推進する島のグローバルネットワーク」(GREIN)の設立を要請している。GREINは、革新的なソリューションを模索する中で学んだ知識、ベストプラクティス、課題、教訓を共有するためのプラットフォームである。

また、GREINは、国のポテンシャルの評価、能力の育成、再生可能エネルギー導入のビジネスケース構築も支援する。その中では、民間セクターや市民団体の関与も求め、利用可能な資金を明らかにしながら、革新的な資金調達メカニズムの新しいアイデアも探る。

さらに、GREINは、再生可能エネルギーを持続可能な観光、水資源管理、輸送などの産業やサービスに統合する方法論を編み出す。

IRENAの事務局長を務めるケニアのアドナン・アミン氏は120名の代表者に向かって次のように述べた。「すでに確認されていることですが、開発途上にある小さな島国、先進の島国、そしてエネルギー不足の沖合の島を領土に持つ沿岸国には、莫大な再生可能エネルギーのポテンシャルがあります。技術およびコスト効率における大きな前進を考え合わせると、野心的な政策目標でも達成できる可能性は急速に高まっています」

アミン氏は次のように続けた。「私たちは、大手エネルギー企業から革新的な中小企業、そして金融機関といった投資機関を議論に引き入れるためのビジネス評議会の基礎を作っているところです。実際的なソリューションの模索にあたっては、学術界やNGOも貢献することができます。先進の島国は、ほぼ同じような課題に直面している開発途上の小さな島国に自らの経験を伝えるという重要な役割を担うことができます」

この会議では、太平洋、カリブ海、アフリカの開発途上の島国および島を領土に持つ開発途上の沿岸国、合わせて26ヵ国の代表(閣僚15名を含む)がそれぞれの再生可能エネルギーの導入状況について報告したが、その内容には大きな開きがあった。100%再生可能エネルギーに移行するために、詳細な長期計画の下、着々と実施が進んでいる国がある一方で、ほとんど導入が進んでいない、あるいは確固たる目標も計画もないことを認める国もあった。

西アフリカのカーボヴェルデ共和国は、10の島から成る面積4,033平方キロメートルの群島国家で、人口は49万人である。同国は100%再生可能エネルギー、そしてさらには300%再生可能エネルギーを目指して動き始めている。

西アフリカのカーボヴェルデ共和国は10の島から成る面積4,033平方キロメートルの群島国家で、人口は49万人である。ジョゼ・マリア・ネーヴェス首相の上級顧問を務めるジョゼ・ブリトー氏によると、同国は100%再生可能エネルギー、そしてさらには300%再生可能エネルギーを目指して動き始めているという。ブリトー氏は、国内のニーズを満たしたうえで(海水淡水化も含めて)余剰分は備蓄あるいは輸出することができるだろうと語った。なお、カーボヴェルデはアフリカで、再生可能エネルギーに関するトレーニング機能の中枢を担うことも目標に掲げている。

カリブ海東部のドミニカ国(人口7万1,000人、面積754平方キロメートル)については、前国連大使で、現在は国連開発計画でカリブ問題を担当しているクリスパン・グレゴワール氏がやはり、実質的なエネルギー輸出国になれるだろうとIPSに語った。

グレゴワール氏は次のように述べた。「325本の河川と山地帯を持つ私たちには水力発電の莫大なポテンシャルがあります。さらに、広範な地熱資源の評価について、アイスランドとEUから協力が得られています。グアドループとマルティニークはいずれも60キロしか離れていませんが、それらに海底ケーブルを相互接続することによって、余剰電力を輸出することができます。余剰電力を活用するハイテク産業を誘致することも可能です」

カリブ全体の開発については、グレゴワール氏は、同地域では電力価格が欧米の数倍、キロワット時あたり35セントに達することがあるが、再生可能エネルギーを活用する機会は豊富にあると代表団に語った。

10ヵ国のSIDSが2009年に創設したSIDS DOCKは、持続可能エネルギープロジェクトの資金を調達し、グローバル規模の炭素市場から利益を得るために取り組みを開始している。バハマ、ベリーズ、ドミニカ共和国、グレナダ、ジャマイカにおいて7つのプロジェクトが検討されているが、資金は甚だしく不足している。

会議において、エクアドルのエネルギーおよびエネルギー効率省で顧問を務めるペドロ・カルバハル氏は、ガラパゴス諸島における化石燃料ゼロプログラムについて語った。この計画は、赤道下の101の島々から成り、世界でも有名なゾウガメの生息地であるガラパゴス諸島で、2020年までに100%再生可能エネルギーへの移行を達成しようというものだ。半分はジャトロファ(日本名:ナンヨウアブラギリ)オイルで調達し、オイルを作る種子は最大の島の40のコミュニティで240の農業世帯が生産する。その他は主に風力発電を活用し、残りは太陽光で賄う。

バヌアツ外務省の多国間デスクオフィサーのウィリアム・サンラン氏がIPSに語ったところによると、太平洋では、ツバル島、トケラウ島、クック島において、100%再生可能エネルギーへの移行が急速に進んでいる。だが対照的に、バヌアツ共和国(82の島々から成り、合計面積は1万2,190平方キロメートル)では、22万4,564人の住民のうち、67%にまだ電気が届いておらず、ポテンシャル開発の実質的な取り組みもまだ始まっていないとのことである。

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この記事は インタープレスサービス(IPS)のご厚意により転載を許可されたものです。IPSはグローバルな通信事業を柱とした国際通信機関であり、開発、グローバリゼーション、人権、環境にまつわる諸問題に関する南半球や市民社会からの意見を取り上げています。

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