成功への奮闘:皆が合意する成功とは?

2000年に、国際開発の成果を測る世界的なベンチマークが定められた。この年、世界の指導者たちが国連に集結し、現代の最も緊急性の高い開発課題に立ち向かうためのひな型となる8つの目標と測定可能で期限の定められた21のターゲットについて合意した。これがミレニアム開発目標(MDGs)であり、2015年に期限切れとなる。

MDGsの実現に向けた国際的な取り組みの達成度について世界中で評価が行われるなか、進捗状況を評価するための報告書が数多く作成されている。毎年作成されるミレニアム開発目標報告書 やポスト2015開発アジェンダに関するハイレベルパネル報告書をはじめとする公式の報告書によると、極度の貧困の削減、健康の改善、男子と女子ならびに男性と女性の間の格差の是正、および死亡率の削減に関しては「かつてないほどの進展」が見られた。すべてのターゲットを達成できたわけではないものの、2015年の期限よりもかなり前倒しで達成できたものもある。進展が遅れている分野の取り組みが強化されるなか、国連は、過去15年間の総体的な成果を足掛かりとして可能な限りこれを拡大する一連の新しい目標、すなわち持続可能な開発目標(SDGs)の作成準備を進めている。

私たちは成功に向かっているのか?

MDGsが人々の生活に根本的な変化をもたらしたという国連事務総長の主張に対して異議を唱えるのは難しいが、まだ仕事は終わっていないということ、対処するべき喫緊の課題があるということもまた明らかである。プラス面としては、MDGsは、世界全体における極度の貧困の大幅な削減や、開発途上地域における保健・教育サービスへのアクセスの劇的な拡大に貢献した。また、MDGsは、全世界を鼓舞する旗じるしとしての役割を果たした(ハイレベルパネル報告書をご覧ください)。事実、MDGsは、緊急性の高い地球規模の諸問題に取り組むために多くの資金を調達するうえで、有益な動員手段となった。また、進展を遂げるのに不可欠な新しいパートナーシップの構築にもつながった。さらにMDGsは、貧困や人的被害についての認識方法やそれらへの対処方法に影響を及ぼすことにより、人々の考え方にも変化をもたらした。国連のゼイド・ラアド・アル・フセイン人権高等弁務官が2014年9月8日の国連人権理事会における声明のなかで述べたように、「開発とは単に自由市場や経済成長を意味するものではないという力強いメッセージを、MDGsは普及させた。開発とは、人々がどれだけ健康で、どのような教育を受け、食料や健全な環境のなかでの生活を手に入れられるかということを意味するものである」。要するに、MDGsによって、貧困を多次元的な視点でとらえられるようになったのである。

しかし、一部の分野では成果がみられたものの、MDGsを不完全なものとみなす人は多い。まずMDGsでは、最貧層に対する取り組みが不十分だった。その最たる証拠として、あまりにも多くの人々、とくにサハラ以南のアフリカに暮らす人々が取り残されている。国連の報告によると、現在の傾向がこのまま続けば、サハラ以南のアフリカ全域は、8つの目標のうちの7つを達成することができない。また憂慮すべきことに、政府開発援助(ODA)は2013年に過去最高水準(1,348億米ドル)に達したものの、最貧国(ほとんどがサハラ以南のアフリカ諸国)向けのODAは減少傾向にある。事実、アフリカへの純援助額は、2013年に5.6パーセント減少した。SDGsを成功させるためには、こうした傾向を変え、最も弱い立場にある人々のニーズに応える必要がある。

MDGsのもう1つの認知された欠点は、紛争や暴力が開発に与える影響に対処していないという点である。このため多くの人々が、司法へのアクセス、個人の安全保障、言論の自由、および政府の開放性と説明責任を新たに策定されるSDGsに含めるよう提唱している。過去数年間にわたって中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、イラク、南スーダン、シリアなど(これらはほんの一部に過ぎない)で発生した深刻な人権侵害や人道に対する犯罪を考慮すると、その緊急性は明らかである。また、強制難民の数が2010年から3倍に増えて5,100万人に達したという事実により、この問題の緊急性はさらに高まっている。そのうちの3,300万人は、暴力や迫害によって住む場所を追われた人々である(UNHCRの報告書をご覧ください)。MDGsが及ばなかった分野でSDGsが成果を上げるためには、暴力と紛争に関する目標を組み込む必要がある。

最後に、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに関するMDGsの実績はかなり残念なものだった。実際のところ、世界のどの地域も国会議員の男女比の平等に関するターゲットを達成できる状況になく、有給雇用に占める女性の割合に関するターゲットについても、達成の見込みがあるのは9地域中わずか3地域にとどまっている(2014年MDGs進捗状況をご覧ください)。男女平等の推進に基づいてMDGsの進捗状況を判断するならば、成功の論拠はよりいっそう薄くなる。

しかし、信頼できるデータが不足しているために、達成内容を正確に把握しきれていないことも事実である。2000年以来、国レベルや国際レベルにおいて開発の進捗状況を定量的・定性的に測定する能力には大幅な進歩がみられたが、信頼できるデータの収集能力には依然として大きな不備がある。紛争や暴力の影響を被るような状況についてはとくにそうである。アフガニスタン、リビア、ミャンマー、パプアニューギニア、ソマリア、スーダン、南スーダン、イエメン、ジンバブエなどの国々は、世界の開発状況を示す表において、体系的に「データなし」のカテゴリーに分類される(OPHISEDAC世界銀行の世界貧困データマップをご覧ください)。これはつまり、これらの国々に暮らす人々が直面している課題の大きさを正確に把握することができないということ、また成否の判定の根拠となる明確な証拠もないということを意味している。ポスト2015ハイレベルパネル報告書もこの点を認め、「私たちの行動を間違いなく最貧層や最弱者層の助けとなるものにするためには、成果を測定する新たな方法が必要である」としている。

SDGsにとって意味するもの

今日の世界は、とくに気候変動都市化に関連して、かつて例を見ないような地球規模の課題に直面している。こうした現実は、世界的な経済危機の長引く余波、人道的大惨事の影響、感染症の流行、および暴力紛争の破壊的被害によってさらに複雑なものとなっている。私たちを待ち受けているのは困難な仕事である。成功の見込みは決して高くない。そのうえ、人類が直面している脅威は多元的で、しばしば複雑に絡み合い、予測不可能である。暴力や紛争に取り組むことをせず、最貧層のニーズにも応えず、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに不可逆的な影響を及ぼすこともない範囲の狭い目標設定では、成功とはみなされないであろう。SDGsは、大胆で順応性があり、そして何よりも最も弱い立場にある人々の助けになることに重点を置いたものでなければならない。

世界中でMDGsの進捗状況を評価するための準備が進められ、SDGs策定の機運が高まるなか、世界の指導者たちは、戦争と国際政治の偉大な権威であるローレンス・フリードマン氏の助言に耳を傾けるべきである。フリードマン氏は、彼の著書である『Strategy(戦略)』および、先日、国連大学で行われた講演のなかで、私たちを取り巻く環境に内在する予測不可能性を考慮しなければ、戦略の世界は失望とフラストレーションに満ちたものになり得るということを示した。フリードマン氏によれば、成功する戦略に必要な要素は、謙虚さを出発点とし、危機管理計画を組み込み、計画の過度の先走りを避け、達成の見込みが低い奇跡を約束しないことである。

国際開発の世界における全面的成功は、世界から困窮や恐怖をなくすことであるが、奇跡を約束して自ら失敗のお膳立てをするようなことは避けなければならない。謙虚さを忘れず、MDGsによって築き上げられた強固な基盤を足掛かりとして、上述したような欠点を補完し、一貫して人間の尊厳、平等、公平を推進する具体的かつ現実的な目標を定めなければならない。もしそうすることができたなら、全面的成功には手が届かなくても、その目標に向けて大きくかつ持続可能な進展を遂げることは可能だということに、誰もが同意するだろう。

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この記事は、Global Development Think Tank Watch(グローバル・ディベロップメント・シンクタンク・ウォッチ)に最初に掲載されたものであり、許可を得てここに再掲した。グローバル・ディベロップメント・シンクタンク・ウォッチは、シンクタンク、大学、政策研究所、国際開発機関から、政策研究に関する最新かつ注目度の高い寄稿を集めることを目的として、マギル大学国際開発研究所が作成したオンラインツールである。

著作権Global Development Think Tank Watch。無断転載禁ず。

翻訳:日本コンベンションサービス

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著者

ジョン・デボア氏は、国連大学政策研究センター(UNU-CPR)のシニア・ポリシー・アドバイザーである。専門は、紛争や暴力といった状況下における開発・人道・安全保障問題。UNU-CPRでは、都市の脆弱性の多元的側面を特定し、これに対応するための研究を主導しており、都市における暴力、都市災害、組織犯罪といった特定の課題への対処が含まれる。

UNU-CPR着任前は、カナダの国際開発研究センターでガバナンス・安全保障・司法部門のプログラムリーダーを務めた。また、カナダ国際開発庁のアフガニスタン・パキスタン・タスクフォース(Afghanistan and Pakistan Task Force)および民主的ガバナンス局(Office for Democratic Governance)でも活躍した。デボア氏は、英字誌『The Asia-Pacific Journal: Japan Focus(アジア太平洋ジャーナル:ジャパン・フォーカス)』のリサーチ・アソシエイトであるとともに、サンフランシスコ大学環太平洋研究センターの外交問題フェローである。また、過去にスタンフォード大学の博士研究員を務め、カリフォルニア大学バークレー校で教鞭を執った経験もある。デボア氏は、東京大学で地域文化研究学の博士号を取得している。

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