貧困削減で学業成績の向上を

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、間違いなく私たちの生活に大きな影響を与えた。その中には、学校教育も含まれる。学校が休校になったことで、学校外の要因が、生徒のニーズを満たし、学力を支援するという学校の機能に影響を与えることが浮き彫りになった。例えば小学校は、子どもの近くに大人か責任ある保護者がいるか、安定したインターネット接続がないかぎり、オンライン授業をまともに実施できない。

社会経済的背景が困難な学生を支援するための特定の政策や、世界的に最も効果的な教育システムに沿った政策の重要性を示す多くの研究結果がある。

こうした政策分野には、質の高い幼児教育への投資、小中学生を対象とする適切なメンタルヘルスと技術的支援、および、中等教育を修了した学生への資金援助が含まれる。これらの政策は、社会的保護政策と考えられる。国連児童基金(ユニセフ)によると、このような政策は「生涯続く貧困と排除の影響」を緩和する。

幼児教育

国家育児戦略については、しばらく前からカナダで熱く議論されている。しかし、賛否両論あるものの、フィンランドのように就学前のすべての子どもに幼児教育と保育の選択肢を提供している国は、学業成績と高等教育への進学率が高く、一貫して世界的にも常に高い評価を受けていることが分かっている

一般的に、有給の育児休暇や幼児教育の補助・無償化など、家族に優しい政策を実施している国は、教育水準の高い市民の育成を通じ、こうした初期投資を回収している。また、成績が最も良い学生と、最も悪い学生との間の学力格差も小さいか縮小傾向にあるが、これは公平性の促進に関心のある政策立案者にとってよい結果となっている。

メンタルヘルスと技術インフラ

COVID-19は、幼稚園から高校に至るまで、多くの学生が直面する課題を深刻化させた。リモート学習へ切り替わり、メンタルヘルスに関する支援の必要性が増大し、子どもと家族に影響を与えている。

さらに、 適切な技術や安定したインターネットへのアクセスがなかったり、自宅に勉強できる静かな場所がなかったりする子どもは、さらに未曽有の困難を抱えている。

社会経済的に恵まれない環境にいる学生にとって、当然このような問題はさらに深刻である。このような子どもたちの家族には、直接的な社会的保護政策による介入が必要だ。

カナダでは、社会政策の権限を連邦政府と州政府が分担しているが、市町村も貧困との闘いで重要な役割を果たしている。こうした地方自治体は、生徒とその家族に成功のチャンスを確保するインフラとして、社会住宅、緊急避難所、育児補助、交通パス、図書館と娯楽サービスなどを提供している。

一部の市町村は、貧困削減手ごろな価格の住宅とホームレスの問題、中小コミュニティのブロードバンド接続問題などを提起し、その結果、全国的に取り組むべき課題として掲げられるようになった。

高等教育

カナダは、世界で最も高い高等教育への進学率を誇っている国の一つである。実際に、25歳から64歳までの成人で専門学校または大学を卒業している者の割合は、2005年の46%から2017年には57%へと増加し、OECD諸国で最も高い割合に達した

こうした実績は称賛すべきだが、COVID-19と、2015年から2018年にかけて段階的に広がってきた子どもの貧困格差がもたらす目下の課題は、緊急の懸案事項である。こうした要因は、社会経済的背景が低い家庭出身の学生が大学に通える見通しを直接脅かすだろう。

パンデミック(世界的流行)以前から、カナダではこの10年間を通じ、大学や専門学校に対する政府の補助金が大幅に削減されたために、学費が高騰して学生のローンが増え、多くの生徒が高等教育への進学を断念せざるを得なくなった。対照的に、フィンランドやノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランドといった北欧諸国では、高等教育が無償または低額で受けられる。その結果、これらの国々はビジネスのやりやすい場所とみなされている。

税金が高等教育を受ける学生のために使われることを不満とする人も多いが、その経済的・社会的利益は明白である。特に、知識経済の中で人的資本に対する需要が高まっていることを考えれば、なおさらだ。

カナダでは、政府が高等教育機関に対する補助金を削減した悪影響が、しばらく前から広がっている。COVID-19で悪化した財政難が高等教育にどのような長期的影響を及ぼすのか、引き続き監視し対策を講じる必要がある。

弱い立場に置かれた学生が、幼稚園から高校まで、そして高等教育でも優秀な成績を上げる実質的なチャンスを得られるようにするためには、政府が学校教育をはるかに超えた効果的な政策をとることが不可欠である。

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この記事は、クリエイティブ・コモンズのライセンスに基づき、The Conversationから改めて発表されたものです。元の記事はこちら

 

 

著者

ルイ・ヴォランテ

ブロック大学

ルイ・ヴォラントは、ブロック大学教授であり、国連大学マーストリヒト技術革新・経済社会研究所(UNU-MERIT)プロフェッソリアル・フェローおよびカナダ教育学研究者協会会長も務めている。

ドン・A・クリンガー

ワイカト大学

ドン・クリンガーはニュージーランドのワイカト大学教授および同大学教育学部副学長代理を務めている。

メリッサ・シーゲル博士は、Maastricht Graduate School of Governance (マーストリヒト大学院ガバナンス研究科)の准教授兼移住研究プログラムマネージャーであり、UNU-MERITのシニアリサーチャー兼移住・開発研究テーマリーダーである。UNU-MERITでは、いくつかの移住研究プロジェクトの管理、ならびにMigration Studies Specialization(移住研究専攻)とMigration Management Diploma Programme(移住管理ディプロマプログラム)の調整を担当している。