ジョージ・モンビオ氏は、「The Age of Consent」、「A Manifesto for a New World Order and Captive State」、「The Corporate Takeover of Britain」、および調査旅行記「Poisoned Arrows」「Amazon Watershed」「No Man’s Land」など数多くのベストセラー執筆している。
コペンハーゲンでの、あの茶番劇のような気候変動会議をあたかも大成功だったかのように見せかける動きが順調に進んでいるようだ。10月には世界の生物多様性を守るための大きな国際会議が開催されるが、地球の大気を守ろうとした昨年の試み以上に大きな失敗になることは間違いない。
国連は、野生の動植物や地域を保護する2010年までの目標は達成できなかったとすでに結論付けている。しかも全面的に目標には程遠かった。
2002年、188カ国が「生物多様性2010年目標」と呼ばれる国際指針を採択した。今年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという目標だった。この計画によって、生物多様性の危機も終わりを迎えるだろうと大々的に報じられたものだ。しかし今年5月、生物多様性条約事務局 もこの目標が達成できなかったことを認めた。野生の動植物、地域の損失を食い止める効果は何もなかったようなのである。
生物多様性指標が足りないわけではない。加盟国のやる気を測る指標こそが必要なのだ。
あと数週間で、同じ国々が名古屋で再会し、似たように無意味な約束を交わすことになりそうだ。即座にこれまでの失敗を認めるどころか、彼らは2020年までの改定目標と2050年への「ヴィジョン」を採択することに集中するようだ。さらにより良い生物多様性指標が必要だなどと言い出してますます対応を遅らせるだろう。多くの場合、もうこれ以上のリサーチなど必要ない。生物多様性指標が足りないわけではない。加盟国のやる気を測る指標こそが必要なのだ。
先月、フランスのエコロジー担当大臣シャンタル・ジュアノ氏が非常に分かり易い例を示した。 ピレネー山脈のブラウンベアは現在の個体生存数が20頭未満だが、ジュアノ氏はこの数を回復するための大々的努力を打ち切ると宣言したのだ。詳しい科学研究によれば、20頭という数では今後の生存可能性はない。ヨーロッパの協定はフランスにこの数を持続させることを義務付けている。だが政府はクマの数を増やすことは、問題を放置しておくより政治的コストがかかると知っている。世界の自然の驚異を守るだけの金も手段もある国ですら、それよりも目先の特殊な利益を優遇するというわけだ。
これまでに交わされた国際協定は生物多様性の危機を食い止めることに見事に失敗している。生物多様性は気候変動と比べ、あいまいな国際条約では拘束力がさらに低いため、大体の数値目標があるだけでは十分ではない。この議論には詳細な数値が非常に大切だ。現実的な政策は国家レベルで実行されなければならない。クマの数を増やすのに全ての主要経済国から同意を得る必要はないはずだ。国際会議がしてきたのは、危機に対する責任を拡散することばかりだ。それによって加盟国は他国の失敗の陰に隠れることができる。あたかも行動を起こしている素振りを見せることができ、国民からのプレッシャーを防ぐこともできる。
私たちは、各国政府が新たな環境悲劇を進行するままに放置している現状、無関心さ、冷淡さを認めてはならない。
そこで私たちはガーディアン紙が主催する新たなキャンペーンを行う。優柔不断な各国政府に圧力をかけるのが狙いだ。政府が一般論のみに終始するのを許さず、読者の皆さんや世界のトップレベルのエコロジストの助けを得て、政府が世界の自然の驚異を守るため真剣に取り組む気があるかどうかを測る100項目の課題一覧を作るのである。それぞれの課題は個々の政府に向けられ、名古屋での会議の前に署名することが求められる。
私たちは各国政府に対し、現在の条約製作プロセスに現実性と明確さを加えるよう求めている。達成可能で、失敗した場合は責 任が発生するようなプロセスにしてほしい。このためのキャンペーンを「生物多様性100」と呼ぶ。
政府が世界の自然の驚異を守るため真剣に取り組む気があるかどうかを測る100項目の課題一覧を作るのである。
時間は限られている。私たちの目標は100の課題を1ヶ月で成し遂げることだ。私たちが呼びかけるのは主要20ヶ国・地域(G20)である。十分な富と権力を持つこれらの国々には義務を避ける言い訳などないはずだ。私たちは各国に特定の種や生態系保護に大きく貢献する行動を求める。これらの種や生態系の危機は学術誌で科学的証拠とともに強力に、広く支持されているものだ。ただし対策には政治的コストがかかるだろうし、特別利益団体からの反対にも遭うだろう。
国際会議で出されるあいまいな政治的声明とは対照的に、これらの行動は具体的で明確で妥当な時間枠で達成可能だ。内容は破壊的な産業プロジェクトの廃止、絶滅危惧種の生息地の保護、法の改正、あるいは新たな立法、動植物の数の増加などである。
もちろんこのキャンペーンによって世界の生物多様性の危機が解決できるふりをする気はないし、問題が収まったなどという印象を与えるつもりもない。ただ私たちは2つの有益なことができるよう願っている。1つは動植物の種や生息地を失われないよう守ること、もう1つは市民からの監視を避けがちな各国政府にプレッシャーを与えることだ。
私たちはG20に本記事のリンク先を送る予定だ。読者の皆さんには生物多様性を守るために重要な行動がどれかを選ぶ手伝いをしていただきたい。8月末までにガーディアンのフォームにあなたのアイディアを記入してほしい。100の課題の一覧が決定したら、今度は読者の皆さんから政府にプレッシャーをかけよう。まずは行動に同意するように、次に行動を実施するようにとプレッシャーをかけるのだ。
もちろんこのキャンペーンによって世界の生物多様性の危機が解決できるふりをする気はないし、問題が収まったなどという印象を与えるつもりもない。ただ私たちは2つの有益なことができるよう願っている。1つは動植物の種や生息地を失われないよう守ること、もう1つは市民からの監視を避けがちな各国政府にプレッシャーを与えることだ。
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この記事はguardian.co.uk.で発表されたもの。
翻訳:石原明子
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