国連安全保障理事会の 改革

本稿は国連安全保障理事会について理解を深めることを目的としたシリーズの第3弾です。第1弾で、国連大学のピーター・ナディン氏は国際政治における最上の討議の場である国連の起源、権限、手段や活動についての概要を紹介し、第2弾では国連安全保障理事会に関する誤解をお伝えしました。今回は安全保障理事会の改革に向けたアイデアをお届けします。本ページの最後には、本稿と関連した記事リストがございます。

国連安全保障理事会を批判する多くの人々の主張は、安全保障理事会が効果的ではないという点、および根本的な改革が必要であるという点だ。改革を求める声の中で最も目立つのは、新たに多くの常任理事国を迎えることが有効性の欠如への答えだと信じる人々の声だ。その一方で、新しい常任理事国を加えることが有意義な改革に結びつくと考えるのは愚かだと主張する人々もいる。

冷戦の終結以来、こうした改革議論は政治によってゆがめられ、結論への見通しもないまま、際限なく続いている。安全保障理事会の公平な構成およびその理事国数増大の問題、ならびに安全保障理事会関連のその他事項に関する開放型作業部会(国連委員会で最も長い名称)の創設によって、この議論は正式に承認され、それに続いて改革案が急増した。(表1をご覧ください)

表1:改革案

説明
G4 (日本、ドイツ、インド、ブラジル) G4案は、総計25カ国で構成される理事会を想定している。6カ国(ブラジル、日本、ドイツ、インド、アフリカ2カ国)を新たな常任理事国とし、3カ国を非常任理事国として追加する。
コンセンサス連合案 (UfC) コンセンサス連合案は、25カ国で構成される理事会を求めている。その実現のために「常任理事国数は変えないが、地域ごとに新たな常任理事席を創設し、その座に就く国と任期の決定は各地域グループの加盟諸国に任せる」というもの。
エズルウィニ・コンセンサス エズルウィニ・コンセンサスはアフリカ諸国を代表する案で、アフリカ諸国から常任理事国2カ国と新たな非常任理事国2カ国の追加を提案している。この提案は、常任理事国に「拒否権を含む、常任理事国のあらゆる特権と権利」を付与する。

改革とは何か?

一般的に改革の目的は、パフォーマンスを向上し、何かをよりよく変えることである。つまり、パフォーマンスあるいは有効性をより優れた状態にするために、欠陥を修正し限界を克服することと関係している。安全保障理事会に欠陥があるという前提から出発するならば、改革は欠陥を修正すべきであり、そうすることで理事会の有効性を向上させるべきである。

簡単に言えば、理事会の拡大と新しい常任理事国の導入による改革を求める主張は次のようなものである。

現在の世界が置かれた地政学的現実をより反映した理事会 = より効果的な理事会
より地域を代表した理事会 = より効果的な理事会
より民主的な理事会(包摂的意志決定と参加型意志決定を統合) = より効果的な理事会
各地域の強国を含む理事会は、能力をより発揮する = より効果的な理事会

より現実を反映し、地域を代表し、正当な理事会

恐らく、拡大した理事会(最大6カ国の新たな常任理事国を含む)に関して最もよく語られる主張は、理事会は現在の国力に関する現実を反映していないため、いわゆる21世紀の新たな現実を反映するべく改革されるべきだ、というものだ。

前提として主張されるのは、代表制と権力の希薄化によって正当性を確保するという包括的言説である。ところが、イアン・ハード氏が示唆したように、理事会に新たな常任理事国を加えることが自動的に正当性を強化するという証拠は、ほとんど存在しない。

常任理事国入りを望む国々は、常任理事国であることの価値を理解しており、どの国も選出されることに関心を抱き、代表制のレトリックを利用して持論を支持することは明らかである。インド、ブラジル、ドイツ、日本、南アフリカ、ナイジェリア(表2をご覧ください)を常任理事国に加入させることは、代表制の行使でも、権力分散の行為でもない。常任理事制度は、5カ国、あるいは改革後の理事会では5カ国プラス6カ国の手に権力を集中させることである。理事会に強国を含めることが代表制であると考える場合、それは歴史上のある特定の時期に決められた世界の権力の配分を理事会が代表するという意味に限る。

表2:常任理事国入りを希望する国々

軍事貢献 分担金の割合 GDP(位) 理事国の任期    人口
現在の常任理事国
米国 118 22.000% (1st) 1st 318 million (3rd)
イギリス 281 5.179% (5th) 6th 64 million (22nd)
中国 1,645 5.148% (6th) 2nd 1.361 Billion (1st)
フランス 950 5.593% (4th) 5th 66 million (21st)
ロシア 102 2.438% (11th) 8th 144 million (9th)
常任理事国入りを希望する国々
ブラジル 1,724 2.934% (10th) 7th 20 years 201 million (5th)
ドイツ 235 7.141% (3rd) 4th 10 years 81 million (16th)
インド 7,868 0.666% 10th 14 years 1.241 billion (2nd)
日本 269 10.833% (2nd) 3rd 20 years 127 million (10th)
ナイジェリア 4,738 0.090% 37th 8 years 1754 million (7th)
南アフリカ 1,675 0.372% 4 years 53 million (25th)
将来的に常任理事国入りを希望する国々
韓国 616 1.994% (13th) 15th 3 years 50 million (26th)
メキシコ 1.842% (14th) 14th 7 years 118 million (11th)
トルコ 497 1.328 (15th) 17th 7 years 77 million (18th)
インドネシア 1,826 0.346% 16th 6 years 250 million (4th)

地域を代表するその他の形態に関する主張として、常任理事国入りを希望するBRICS諸国の多く(つまりブラジル、南アフリカ、インド)は地域あるいはグローバルサウスを代表しているという論拠がある。この主張の弱点は、最終的に国は国自体の代表だという点だ。すなわち、新しい常任理事国の議席の前に置かれる名札に「グローバルサウス」や「ラテンアメリカ」や「南アジア」と書かれることはないのだ。この指摘は、ばかげたものかもしれないが、否定できない事実を浮き彫りにしている。

より有能で民主的な理事会

最近の改革議論において、インドの代表者は、拡大した理事会が「効果的な多国間主義、すなわち民主的に導き出された世界のコンセンサスに基づいた多国間主義を妨げる民主主義的欠陥」を解決すると訴えた。この民主化のアイデアに早速、注目が集まっているが、常任理事国を増やすことが民主化の行為であるのかどうか、現時点では不明である。確かに、グローバルサウスからより多くの理事国を迎えることは正当な提案だが、それらの国に常任権を与えることは、極めて反民主主義的な含みを持つ。

一方で、不平等性に関する主張とは別に、地域の中での強国、いわゆる「ヘビー・リフター(貢献度の高い国)」(経済、人口、軍事力の点で最大の国々)を理事会に迎えれば、理事会が導き出す結果は改善されるという考えに基づく主張がある。これはもともと、拒否権を行使できる5常任理事国に付与された制度的特権の根拠だった。常任理事国に期待されていたのは、国際平和と安全保障の維持により多く貢献することだった。

では、創造性に関する主張はどうか? 理事会では、状況を繊細に捉えた決議を巧みに作り上げるために、一種の創造性が求められる。ここで、次のような反論が提示される。すなわち、いわゆるヘビー・リフターを理事会に迎えた場合、それらの国は、創造的で建設的な行動を取るというよりは、欲望に任せて影響力を乱用するだろう、という反論だ。

過去には、小国の多くが実際的な改革を成し遂げてきた。なぜなら(1)それらの国は自国の限界を理解しており、(2)世界を牛耳ろうとはせず、(3)理事会の議題において適所を開拓する傾向があり、(4)より優れた主張の力を使ってしばしば貢献するためだ。アリア・フォーミュラ(ベネズエラのディエゴ・アリア氏による会合)、専門家パネルの改良(カナダのロバート・ファウラー氏)、さらに平和維持活動の概念(カナダのレスター・B・ピアソン氏)さえも、全て小国による提案だった。インド、ブラジル、日本、ドイツはいずれも世界的な経済大国であるが、理事会がより効果的に機能するために必要としている創造的な大国であるとは必ずしも言えない。

「ゾウが愛を交わすにせよ、戦争を起こすにせよ、いずれにしても草は踏み荒らされる」という古い格言がある。この表現は多くの小国が抱える懸念にも当てはまる。小国が恐れているのは、新たに6カ国が常任理事の座に就けば、小国は意志決定過程から切り離され、小国の創造性が理事会に埋もれてしまうということだ。

常任は長期間だ

国際政治における権力は一定不変ではない。歴史を通して見られる帝国の盛衰が、その事実を裏付けている。かつての強国はもはや強国ではなく、かつての弱小国は今や強国となる。改革された理事会は歴史の終わりを表すものにはならない。今から20年、30年、40年を経た時に、インドネシア、メキシコ、韓国、トルコといった新興国は次の疑問を投げ掛けるだろう。「なぜ我々は常任理事国ではないのか?」 そして、再び改革議論が始まるだろう。
では、どのような選択肢があるか?

2005年に国連事務総長が提案したB案は、既存の理事国には不人気だが、より効果的な理事会の運営方法を整えやすい。任期4年で再選可能な準常任理事国は、より多くの説明責任を負う。つまり、より多くの国連加盟国が、選出された各理事国のパフォーマンスを有利にも不利にも評価する機会を得るのだ。

改革のためのもう1つの選択肢は、理事会のプロセスと会議の形態、つまり作業方法として知られる形態の改革を行うことだ。しかし、見落とされることが多いのだが、作業方法の改革は国連加盟諸国の組織内では支持されておらず、加盟諸国は説明責任、一貫性、透明性(ACT)というスローガンの下で現在、組織化されている。本シリーズの次回の記事では、一連の新しい作業方法に基づいて、安全保障理事会の新たな展望を分かりやすく示す予定だ。

翻訳:髙﨑文子

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著者

ピーター・ナディン氏は、国連大学のプロジェクト・アシスタントであり、オーストラリアのウェスタンシドニー大学で博士号取得予定である。ナディン氏は国連大学 サステイナビリティと平和研究所 (UNU-ISP) の平和と安全保障部門および、国連の平和維持活動 (PKO) 安全保障部門改革部署でのインターンを経験している。彼の研究対象には、複雑な紛争の背景への理解(国連安全保障理事会での駆け引きや、国連平和維持および平和構築)などがある。出身ならびに学位取得はオーストラリアで、ウェスタンシドニー大学で、社会科学士および文学士の優等卒業学位を取得している。

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