崩壊への道のりに 気づいた時に すべきこと

あなたが環境関連のニュースに関心を寄せてきた人なら、人間が地球を拳でたたきのめしていることを知っているだろう。人口と消費が増え続ける中、私たちの経済の仕組みのせいで、私たちは気候を不安定にし、表土を激減させ、帯水層から水を引き出し、海洋を酸性化し、種を絶滅に追いやっている。地球の生態系を疲弊させているにもかかわらず、何十億もの人々が、まともな夕食を取るための十分な食料を見つけようと日常的に苦しんでいる。環境や社会への不安が世界的に存在するこの時代に、何か力になりたいと思うのは当然のことだ。また、どうしたら現状を変えられるだろうと考えるのも当然のことである。こうした困難の時代は私たち一人一人に、単純だが極めて重要な疑問を投げ掛ける。それは「私は何をすべきか?」という疑問だ。

何をすべきか、という疑問に取り組む前に、障害物を取り除いておこう。つまり、何をすべきではないかという問題だ。

では、中心となる疑問「私は何をすべきか」に戻ろう。ハゲワシの群れのごとく、問題は私たちの頭上を不吉な様子で旋回している。一方、解決策は小鳥のようなものだ。枝や低木の陰に隠れているけれども、確かに存在する。解決策は私たちの周りのあちこちに存在しているが、適切な解決策を見つけ出すことは、やはり難しい。ハゲワシを追い払うための単純で唯一の方法があれば、心底ホッとできるのだが、そういう方法は存在しない。解決策には、ある程度の複雑性がつきものである(例:それぞれが関連し合う部分的な解決策を組み合わせること)。そこで、「私は何をすべきか」という疑問への答えの全貌を明らかにするために、次の3つのカテゴリーに行動を分類してみることが有益だ。すなわち、(1)何かを学ぶこと、(2)何かを言うこと、(3)何かをすることだ。

何かを学ぶこと

あなたと同じように問題を認識している仲間、特に創造的な解決策に取り組んでいる人々を探してみよう。私自身、持続可能で公正な経済の築き方についてもっと学ぼうとしているうちに、人生を豊かにしてくれる素晴らしい仲間に出会った。システム思考の方法や、生態学的見地から世界を見る方法を私に教えてくれた学者や指導者を列挙することは、浅はかな行為のように思える。なぜなら、私はきっと誰かを挙げ忘れてしまうし、自分が有名人を知っていることをひけらかすタイプの人間のように思えてしまうからだ。しかし、私が何かを学ぼうとする探求の旅路で出会った人々のことを考えると、私は幸運だと感じるのだ(ここで、英雄的な「ビルたち」の短いリストを示そう。ビル・マッキベン、ビル・リース、ビル・ライアソン、ビル・ツイストである)。私は仲間全員に感謝している。名前がビルではない人たちにも!

結論:ほこりっぽい図書館の片隅で退屈な学術書を苦労しながら読み進める必要はない。むしろ、地球上で最も思いやりがあり、洞察力に優れた人々と関わればいい。唯一の条件は、何とか力になりたいという彼らの願望をあなたも持ち、何かを学ぶことに熱中することだ。

何かを言うこと

『アドバスターズ』誌のライターやアーティストが効果的に証明しているように、「なぜ?」という疑問を声に出して問いかける機会は常に存在する。

何かを言うこと(少なくとも何か知的なことを言うこと)は、特に私のように内向的な人にとっては、何かを学ぶことよりもハードルが高い。私自身が何かを言う方法は、主に執筆である。私は1冊の本を共同執筆した。私は記事も書いた(例えば『USAトゥデイ』紙に掲載された、この記事)。さらにDaly News(デイリー・ニュース)でエッセーを書いた。私にとっては、自分の声帯を使うよりもペンやキーボードを使って何か明確なことを言う方が簡単なのだ(とはいえ、私はたまに勇気を振り絞って聴衆の前に立ち、自分が学んだことを伝えることもある)。

あなたが自分の目と耳と心を開いていれば、何かを言う機会は見つかるだろう。そして必ずしも大舞台に立つ必要もない。あなたが学生ならば、担当教授やクラスメートに、次のような鋭い質問をしてみよう。

なぜ経済は成長し続けなくてはならないのか? ひとりの人間、ひとつの地域社会、あるいはひとつの社会にとって、どの程度の消費が十分なのか? 私たちの経済の究極的な目標は何か?

報道記事を読んだら、コメントを寄せたり、編集者に手紙を送ったりしてみよう。主流メディアの第一面には、継続的な経済成長を褒めたたえる記事が行進のごとく綿々とつづられており、それに反応する機会をたっぷりと提供している。

あなたが読書クラブに参加しているなら、『Enough Is Enough(もうたくさん〈イナフ〉だ:限りある資源の世界で持続可能な経済を築く)』や、同類の書籍を読んでみよう。共著者であるダン・オニール氏が住むイギリスのリーズでは、熱心な活動家グループが、この本に描かれた種類の経済を構築する戦略を練っている。同じようなことが、私が暮らすオレゴン州コーバリスでも起きている。また、バミューダやウィスコンシンでも別のグループが立ち上がっているそうだ。変化は、アイデアを話し合ったり共有したりする単純な行為から始まる。私たちは家族や友達を巻き込むこともできる。会話からどんな有益な出来事が生まれるか、誰にも分からないのだ。

何かをすること

何かをすることは、目標に近づく次の第一歩だ。何をするかを選ぶ上で最も重要な点は、あなたの行動があなたの知識と価値観に一致していることだ。例えば、あなたは消費、特に化石燃料を減らすことができる。抗議活動に参加することができる。あなたにとって大切な信条を支持する団体に時間やお金を提供することができる。私は高い目標を掲げるエコビレッジに家族と共に暮らすことを選んだ。私たちは地域経済を支えて、持続不可能で費用を外部化するグローバル経済との関係を絶つために最善を尽くしている。私たちは自転車に乗る。そして音楽を作る。それは、必要な変化を生み出すことに時間を費やし、そうすることを楽しむためだ。

私が次なるキャリアの冒険に踏み出すのは、そういう志があるからだ。デイリー・ニュースの編集者として、私はひとまず十分に発言してきた。私の選択の裏にある動機を理解するには、バックミンスター・フラーの次の発言を考えてみてほしい。
「すでにある現実と戦っても物事は変えられない。何かを変えるには、既存のモデルが時代後れになるような新しいモデルを構築することだ」

私はFarmland LP(ファームランドLP)がよりよい農業モデルを構築する手助けができることを喜んでいる。オーガニックで生態学的に健全な農法は、私たちを縛り付けてきた旧式のモデルよりも優れているということを、私たちは証明しようとしている。19世紀や20世紀の工業生産の発想に基づいた旧式のモデルに未来はない。新しいモデルでは、農地は資源を抽出し枯渇させる鉱山としてではなく、生態系として管理される。ファームランドLPは、ジェイソン・ブラッドフォード氏とクレイグ・ウィックナー氏によって創立され、シンプルで節度ある素晴らしい活動を行っている。この企業は、資金を集め、従来型の農地を買い取り、有機農地に転換する。その目的は、地域の食料システムを支え、環境の状態を改善し、有意義な雇用を創出し、投資家によき投資先を提供することだ。ある意味で、私たちは合気道の動きを実践している。つまり、現在の金融やビジネスのシステムの勢いを利用して、ランドスケープを管理し、暮らしを支えるよりよい方法を創造しているのだ。それに一役買えることを私は誇りに思う。

私はデイリー・ニュースでの活動にも誇りを持っている。対話を前進させるために私は全力を尽くした。この対話の場をCenter for the Advancement of the Steady State Economy(定常型経済振興センター 、CASSE)が引き続き推進していく中で、私はさらに学ぶことを楽しみにしている。私は何かを学び、何かを言い、何かをするという一生続く旅に携わっている。読者の皆さんもそうであってほしいし、あなたの友達を旅の道連れにしてほしいと願う。それは簡単なことではない。しかし、必要があることをして後悔することは決してない。前進しよう!

翻訳:髙﨑文子

Creative Commons License
崩壊への道のりに 気づいた時に すべきこと by ロブ・ディーツ is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International License.
Permissions beyond the scope of this license may be available at The Daly News.

著者

ロブ・ディーツ氏は人と地球を救う、より良い経済の構築を目指す作家、研究者、活動家である。エコロジー経済学の第一人者ハーマン・デイリー氏にちなんで名づけられた人気のオンライン出版Daly Newsの編集者を務める。またCenter for the Advancement of the Steady State Economy(定常型経済振興センター )の初代事務局長でもある。この組織は当初、資金のない新規事業組織だったが今では国際的な尊敬を集める新しい経済思考のリーダー的存在へと成長した。ディーツ氏は経済学と環境科学双方の教育と経験から導き出した考えについて定期的に記事を書き、公のプレゼンテーションも行っている。既婚。娘が1人。オレゴン州コーバリス在住。