米国の次期国連大使は、平和維持活動をどうするか

米上院外交委員会は先週、次期国連大使にケリー・ナイト・クラフト氏の任命を可決した。クラフト氏は現在、米国の駐カナダ大使を務めている。先の外交委員会の審問では、人間の行動が気候変動を助長しているというクラフト氏のコメントと、任地のオタワを離れることが多いことにつき、同氏が受けている厳しい批判に質問が集中した。
残念ながら、クラフト氏が国連大使として起用された場合直面することになる平和維持に関する根本的な問題について、審問で取り上げられることは全くなかった。上院は同氏の任命を承認する前に、これらについて質問しなければならない。
大統領が同氏の任命を発表したのは2月のことだが、この重要な外交ポストは、ニッキー・ヘイリー氏の辞任後、すでに6カ月も空席となっている。米政権はヘイリー氏の後任を早急に任命するとしていたが、Fox Newsの元キャスターで当時は国務省報道官を務めていたヘザー・ナウアート氏の起用を発表するのに2カ月を要した。そのさらに2カ月後の2月、ナウアート氏は突如として立候補を取り下げる

安全保障理事会の亀裂が深まり、湾岸地域で緊張が高まる中、米国連大使の役割はグローバルな安全保障と国際協力にとって極めて重要な意味を持つ。

その間も、米国では多くの高官がここ数か月で国連代表団を離れており、トランプ大統領はジョナサン・コーエン国連大使代理を駐エジプト大使に任命している。クラフト大使の承認が円滑に進めば、米国連代表部にとって久しぶりの実質的な人員補強となる。
安全保障理事会の亀裂が深まり、湾岸地域で緊張が高まる中、米国連大使の役割は北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核不拡散からコンゴ民主共和国の平和維持に至るまで、幅広い問題に関するグローバルな安全保障と国際協力にとって極めて重要な意味を持つ。それは、世界の平和と安全保障の分野について、安全保障理事会で討議される案件ほど重要な問題はないからだ。
そこで、外交委員会がまだクラフト氏に問い質していない大きな問題が3つある。

1. 米国は平和維持活動の資金拠出を削減するのか。

ヘイリー大使の任期中、平和維持活動予算は10億米ドル以上も削減され、ダルフールの平和維持活動がこのまま打ち切られれば、予算はさらに削減されることになる。
しかし、米国議会は国連平和維持活動に対する拠出予算を増額しようとしている。クラフト氏の承認審問で、リッシュ上院外交委員長は米国の国連に対する拠出金が高すぎると主張したが、それに関する質問は行わなかった。議会は、今後4年間で国連平和維持活動の予算につき、どのような変化が予測されるか、また、政権が大幅な削減を求めている中での国連平和維持活動に対する拠出増額を求める議会について、どのように考えるのかを新任大使に質すべきだ。

2. クラフト氏とボルトン氏の関係はどうなるのか。

ジョン・ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官は、国連における米国の立ち位置について戦略的な役割を果たし続ける公算が高い。かつて、国連事務局の建物から10階のフロアをなくしても、何も変わらないだろうと発言した人物だ。議会はクラフト氏に対し、世界の平和と安全保障という問題について、この見解に賛同するのか、もし賛同しないのなら、政権内で自分の意見に反対する人物にどう対処しようと考えているのかを問うべきだ。

3. 米国は引き続き、気候安全保障上のリスクを認識してゆくのか。

クラフト氏の家族が大手炭鉱会社と密接な関係にあることは、厳しい批判にさらされている。一方、米国を含む安全保障理事会は、気候変動がチャドやサヘルでの情勢不安を悪化させ、この地域で大きな安全保障上の脅威を生み出しているという認識を持っている。こうした安全保障上のリスクは、国連が大規模な平和維持活動(PKO)を展開するマリなどを含め、地域全体に波及するおそれもある。新任大使は、気候変動が世界の平和と安全保障にどのように影響すると考えているのか。クラフト氏は石炭に関する会議への出席を控えるとしているが、このような問題が世界の平和と安全保障に影響を及ぼす場合、自らの代理にどのような指示を出すのか。
クラフト氏が国連と多国間主義を支持していることは、温かく受け入れるべきであり、新鮮な主張に聞こえる。米国にはしっかりとした国連大使が必要だ。このポストで政治的な空白が続いたことで、最近は中国をはじめとする他の国が、この空白を埋める格好になっている。米国大使のポストは世界各地で空席のままとなっているが、政権は国連に全権大使がいないことで、米国に利益よりも害が多く及ぶことに気づいたようだ。
しかし、このポストの候補者が誰であれ、平和と安全保障については具体的な質問を投げかける必要がある。新任大使がワシントンやその他いくつかの方面から大きな圧力を受けることになることを考えれば、 こうした問題に対するクラフト氏の立ち位置は特に重要だ。ヘイリー氏の任期中にも明らかになったとおり、こうした関係者との外交上の問題をどのように処理するかによって、米国の国連に対する政策は著しく変わってくる可能性がある。今後数カ月のうちに、クラフト氏が国連で、平和と安全保障に関する重要問題について米国の立場を明言する機会は多く訪れるだろう。こうした重大な問題について、今のうちに見解をはっきりさせておくことも同じく重要だ。

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この記事は最初にThe Hillに掲載されました。

著者

アダム・デイは、国連大学政策研究センター(UNU-CPR)のシニア・ポリシー・アドバイザーである。国連大学で職務に従事する以前は、10年間にわたり国連にて、平和活動、紛争問題への政治関与、仲介、民間人の保護などを中心に活動した。国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(コンゴ共和国)、国連レバノン特別調整官事務所、そして国連南スーダンミッション(UNMIS、ハルツーム)と国連アフリカ連合ダフール合同ミッション(UNAMID、ダフール)の各本部において政治アドバイザーを務め、また国連本部(ニューヨーク)の政治局および平和維持活動局において政務官を歴任した。

それ以前は、カンボジアでオープン・ソサエティー・ジャスティス・イニシアティブによるヒューマン・ライツ・ウォッチのジャスティス・プログラムに従事し、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判(ICTY)を支援した経歴も持つ。また、弁護士であり元ニューヨーク弁護士会メンバーでもあるデイ氏は、ニューヨークにおいて原告として国際訴訟に携わる傍ら、Center for Constitutional Rights(憲法上の権利保護センター)からの依頼で、グアンタナモ収容所収容者が拷問されたとして収容所元職員に対して起こした訴訟の原告側弁護をプロボノとして(無料で)担当した。

カリフォルニア大学バークレー校法科大学院で法科博士号、フレッチャー法律外交大学院で法律外交の修士号、ブラウン大学で比較文学の修士号を取得している。国際犯罪法、国際犯罪に対する国家元首の免責特権、紛争後の法による支配に関する著書を複数刊行している。既婚で2人の子どもの父親。