なぜ新・水の10年が世界の開発ニーズを満たす鍵となるのか

2016年10月07日

最初の国際水の10年は、国連ミレニアム開発目標の達成状況をめぐって複雑な感情が交錯する中、まれに見る成功例であった。さまざまな意欲的・国際的ターゲットを掲げたミレニアム開発目標は、世界の最貧層の生活改善を目的とするものであったが、そのターゲットのすべてが2015年までに予定通り達成されたわけではない。しかし、水の利用に関するターゲットでは、すばらしい結果が得られた。

国際社会は「2015年までに、安全な飲料水を継続的に利用できない人々の割合を半減させる」どころか、2010年時点で早くもこれを達成したのである。

具体的にどのような成果が得られたかと言えば、1990年以降、26億人が改良された飲料水源を利用できるようになったということである。飲料水へのアクセスが改善されたことにより、全世界で健康が増進され、貧困が減少し、持続可能な開発が前進した。

この成功の背景には、2005~2015年を「命のための水」国際の10年として宣言するという決定があった。とりわけ数百万人を対象とする水の供給に10年間を充てたことが、このターゲットの達成を可能にした重要な要因であった。

国連総会はこの10年間に、国連総会は水と衛生へのアクセスが人権であることを認識し、さらに2015年には、ミレニアム開発目標を引き継ぐ17の新たな持続可能な開発目標の1つとして水の問題を単独で取り上げた。具体的には、「すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」ことを目指すというものである。

そう、確かに私たちは「水問題」に関して大きく前進してきた。それゆえ、水問題に専念した過去10年間の成果を考えると、タジキスタン政府から「『持続可能な開発のための水(Water for Sustainable Development)』国際行動の10年」の新たな制定に関する提案が発表されたことに驚きを覚えるかもしれない。しかし、水問題はまだ解決していないのである。

このタジキスタン政府の提案(各国政府、市民社会、国連機関の代表によって採択された行動要請の一部)は、2016年9月に行われる次の国連総会会合で取り上げられる予定である。(2016年8月時点)

しかし、なぜ新たな水の10年が必要なのか?その理由は、水の安全保障とインフラが、今なお私たちが直面している開発課題の大部分を依然として占めるものだからである。水は自然資源と社会問題に根本的に結びついているため、飢えと貧困を撲滅できるかどうかは、水に対する私たちの取り組みいかんによって大きく左右されることになる。

衛生問題

世界が直面している水関連の最も顕著な問題は、衛生サービス、すなわち、トイレから下水道、さらに固体廃棄物管理に至る人間の排泄物の安全な廃棄へのアクセスである。現在、24億人を超える人々が適切な設備を利用できない状況にある。衛生状態が劣悪であるために、世界では、チリのGDPをまるまる上回る年間2,600億米ドルもの損失が生じている。

たとえば、ケニアでは衛生問題を原因として年間3億2,400万米ドルの損失が生じている。その内訳は、下痢により若くして命が失われることによる損失が2億4,400万米ドル、医療費が5,100万米ドル、劣悪な衛生状態に起因する疾病により仕事や学校を病欠することで生じる生産性費用が270万米ドル、排泄する場所を探す間に失われる生産的な時間に由来する2,600万米ドルである。

不十分な供給

水不足はすでに世界各地で何百万人もの人々に悪影響を及ぼしている。人口増加、急速な都市化、水の集約消費パターンの拡大、そして気候変動が、既存の資源への負荷を増大させている。こうした需要の増加という負担の大部分を背負うことになるのが、アフリカおよびアジアの開発途上国である。

多くの人がすでに水ストレスや水不足によって深刻な苦難に陥っているにもかかわらず、これに対処するためのインフラや専門知識を保有していない。たとえば、エチオピアは現在、過去数十年間で最悪の干ばつに見舞われており、1,000万人以上の人々が食糧援助に頼らなければならない状況にある。

我々がこのままの道を歩み続けていけば、2030年には、世界で利用可能な水資源が40%不足する恐れがある。劣悪な衛生状態と水不足は、現在の地域的問題を悪化させること、そしてすべての人々のために持続可能な開発を推進するという世界的な取り組みを損なうことの原因となる以外の何物でもないのである。

端的に言えば、水は社会・経済開発のあらゆる側面において極めて重要な要素だということである。つまり、これをプラスに捉えた場合、水は多くの世界的課題に対処しうる非常に有益な手段なのである。

次なる水の10年

2016~2026年を「 持続可能な開発のための水」の10年と宣言することで、世界の水資源の危機的状況に関する啓発となり、いっそうの行動を喚起することになるだろう。これを目指すうえで、現在の提案には2つの主要な目的がある。

まず、水に関連する問題についてのさらなる国際協力の要請である。国連水と衛生に関する諮問委員会の報告による勧告に従い、資金調達および実施に向けた取り組みの効率を向上させるため、「水に関する新たな国際的構造」が求められる。

次に、情報の利用可能性とアクセス性の確保である。この分野で成果を上げるためには、いかに世界各地の水の状況に関する知識を強化し、効果的な水管理戦略を策定し、これらの知識について人々が求める情報を確実に入手できるようにするかが常にカギとなる。

不作為の代償

この行動要請は重要な取り組みである。しかし、持続可能な開発目標における資金調達方法の問題への対応はまだ十分ではない。

政府は水インフラへの投資を行うことで、河川流域と生態系を保全し、廃水を処理し、汚染を低減しなければならない。「命のための水」の10年の間、国連水の10年・能力育成プログラム(UNW-DPC)のディレクターとして、私はこうした問題に取り組んでいる世界各地の政府や地域パートナーとの連携に努めた。その結果、125以上の能力育成活動を実施することができた一方、資金不足により取り組むことのできなかった活動の数はこれをはるかに上回るものであった。

開発途上国では、新たな水管理施設・設備、総合的な水資源管理に関するよりよい知識、河川流域と生態系を保全するための能力を必要としている。こうしたニーズを満たすには、研修やパートナーシップを通じ、利用可能かつ持続可能な最良の慣行へのアクセスを確保しなければならない。そのために必要となる資金は、現在から2030年までの間に数兆ドルに達すると推定されるが、しかし、不作為の代償はこれをはるかにしのぐものである。

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本記事は当初、The Conversationに掲載された。元の記事はこちら

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