小型風力タービンに大きな期待

再生可能なエネルギーが次々と発表される中、世界各地に巨大な風力発電施設の建設が進んでいる。30年ほど前には、標準の風力タービンは1基につき10~100キロワット/時(kWh)程度の発電量だったが、現在ではヨーロッパ、中国、アメリカの典型的なもので5000kWhだ。

そして、タービンの形の大型化も進む。EUの支援を受けたUpWindプロジェクトは、1万5千~2万世帯分の電力をまかなえる2万kWhの風力タービンの製造を目指している。こういった超大型タービンの多くは、地元に負担がかからないよう海上の風力発電所用に開発されている。

そういった建設は、海で行われる場合は特に、極めて高度な技術を要する。そこで、持続可能なエネルギー利用を可能にするために、逆転の発想をするエンジニアも現れてきた。小さくするという発想である。

新興市場

小型発電の利点は、様々な場所に設置が可能で、場合によっては都市部で最も安価なエネルギーとなりうる点だ。10~100KWの小型風力タービンは住宅、学校、産業施設、そして船にも設置することが可能で、これまでは途上国で広く定着してきた。

「小型風力発電のシェアに関しては今のところ中国が群を抜いてトップです」 世界風力エネルギー協会事務局長ステファン・サンガー氏はドイチェ・ヴェレに語った。

小型風力タービンの製造と設置においては、中国が世界を牽引している。現在175万人が風力発電から電力を得ているのだ。中国の風力発電協会のスポークスパーソンChen Dechang氏によると、中国では800万人が電気のない生活をしているが、風力発電市場がそれを補おうと開発を急いでいる。昨年、中国では13万基の小型風力タービンが建設されたという。中央の発電所から遠く離れた風の強い地域では、小型風力タービンが最も安価な電力を供給する。

このテクノロジーにより、温室効果ガス排出を増加させることなく貧困が削減できるのではないかと期待されている。電気のない生活をする人の数は世界で15億人に上り、その地域の多くでは、国の送電網から電力を引くには莫大な費用がかかる。

現在、中国は生産コストの安さと、地元へのエネルギー供給を目指す地方の需要家のシェアが大きいという2つの要因から、この分野での優位を保っている。

欧米でも高まる関心

だが、このテクノロジーに注目しているのは中国だけではない。先進国では送電網が充実しているため、小型タービンは大型タービンに比べて競争力が低く、もちろん化石燃料とは比較にならない。それでもエネルギー価格の上昇とエネルギーの自給への動きが加速する中、この産業も伸びを示している。

アメリカには現在、小型タービンの世界最大の企業群があり、それらのメーカーは製品の輸出も、国内販売も行う。アメリカ風力エネルギー協会(AWEA)によると、マイクロ風力タービンの設置数は過去3年で倍増したという。協会は2015年までにはこの数が4倍になることを期待しており、そのエネルギー出力は原子力発電所1基分となる。

特に顕著なドイツをはじめ、ヨーロッパの数ヶ国でもクリーンエネルギーを普及させるための固定価格買い取り制度を率先して進めているが、「大型風力」に比べ「小型風力」は不利な立場にあり、安定した個別の価格を設定することができていない。

しかし、それも変わりつつある。イギリスは昨年、固定価格買い取り制度を採用し小型風力タービンのエネルギーを促進する最初の先進国となった。それ以降、イギリスでは認可施設であれば、小型風力で発電された電気が電力網に送られると、1kWhにつき17~38ユーロセントの補助金が支払われている。ヨーロッパの風の強い地域では大きな利益が見込めるだろう。他の地域でも、様相は変わりつつある。デンマークでは住宅所有者が小型風力タービンに投資すれば、1kWhにつき28セント稼ぐことができる。

そんな中、スペイン、ポルトガル、アイルランド、ドイツの風力協会は、政府に対し同程度の固定価格買い取りレートを求めるロビー活動を行っている。また、ドイツ風力エネルギー協会は1kWhにつき15~22セントを目指している。

ブームの条件

専門家によれば、小型風力発電の買い取り制度が儲かるものになれば、再生可能エネルギーの新たなブームを起こす最適な条件が整うと言う。

しかし、当然課題も残る。この分野は大規模のものと比べ、まだ規模が小さく、統一されていない。世界には数百のメーカーがあるが、そのほとんどは産業化の規模に見合う大量生産の能力を持っていない。

規格もほとんど定められていないため、十分な整理統合が行われなければ再生可能エネルギーの一翼を担うものと認識されることはないだろう。

もう1つの問題は、風の状況の正確な計測だ。小型タービン購入者は、一般的に風の状況を測るための専門家を何人も抱えているわけではないため、地域の風の状況を過剰に見積もった挙句、失望するというケースも多くある。この問題は、国内・国際風力協会による品質管理の向上と国民への充実した情報開示によって変わることが望まれている。

*本論はドイチェ・ヴェレ・ワールド(Deutsche Welle World)とOW2.0が提携するドイチェ・ヴェレグローバル・アイディアズ(Global Ideas)のご厚意で掲載しました。

翻訳:石原明子

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著者

ゲロ・ロイター氏は2002年以降ドイチェ・ヴェレのラジオ/オンラインエディターを務めている。ここでヨーロッパの環境問題の専門誌を創刊した。それ以前はスペイン語のテレビ雑誌「Europe Semanal」のエディター/ライターであり、また「Plus-Minus」、「Market」といった雑誌に関するテレビ調査報道を行った。2000年にはGerman Business Film Prize(ドイツビジネスフィルム賞)を受賞している。