現在、世界中の重要な問題に関心を集めることを目的とした119の国際デーがあることをご存じだろうか。よく知られたものもあるが、あまり知られていない2つの国際デーがある。10月15日の世界手洗いの日と、11月19日の世界トイレの日だ。健康、水、公衆衛生という一考に値するテーマを掲げた国際デーである。
この記事を読んでいるあなたは、地理的な宝くじに当たった人といえるだろう。なぜなら、蛇口をひねれば清潔な水が手に入り、自宅には1つか2つのトイレがあるからだ。
あなたがトイレ休憩を取った時、周りの人に見られながら溝や野原で腰をかがめなければならない状況を想像していただきたい。あなたが女性なら、言葉による嫌がらせや性的虐待の危険にさらされる。安全な場所を見つけたとしても、用を足した後に手を洗う水もシンクもなかったとしたら?
世界トイレの日が教えてくれるのは、屋外での排便は世界各地の12億人にとって現実であり、排せつ物が最終的に飲み水に流れ込むことが多いという現状だ。当然のことながら、不衛生な環境は健康に悪影響を及ぼす。世界の病気のうち、ほぼ10%は不衛生な環境が原因である。
そのため世界手洗いの日は、腸チフスやコレラなど大便が関連する病気を予防する「自分でできる」効果的な対策として、石けんを使った手洗いを100カ国で促進することを目指す。
Waste to Wealth (廃棄物を資源に)
開発途上諸国における水質の悪さが病気の一因となることは分かっている。そのため、未処理のまま流されるしかなかった廃水の持続可能な管理方法を考案することは有意義である。
ウガンダでの最近の研究によると、廃水を利用した生産物から作った肥料やバイオガスを販売することで、原価回収が可能な衛生システムをカンパラ郊外のスラムに暮らす40万人に提供することが可能であることが分かった。
この研究から、グランド・チャレンジズ・カナダが資金提供したパイロット・プロジェクト「Waste to Wealth(廃棄物を資源に)」が誕生した。このプロジェクトはウガンダ政府と提携し、資源不足にありながらも、同国の産業廃水や家庭廃水の管理を委託されている。
このプロジェクトは、スラムの住民、農村部の漁村、民間の汚泥運搬会社、非政府組織(NGO)、地元の大学を結集し、排せつ物を利用してエネルギーや肥料を生産する方法を模索している。
自給的で耐久性のある技術施設
地元の大学はすでに学生や職員に安全な飲み水を供給している。廃水を利用した生産物の配給や加工の各段階をどのように行うかを示すパイロット・プロジェクトとして、この大学の廃水処理施設を拡張することが可能だ。このプロジェクトには、バイオガスと肥料を生産する発酵槽の設置が含まれる。
発酵槽とは、バクテリアに有機物を分解させる密封容器だ。分解後の有機物は病原菌を含まない無臭の液体で、植物が容易に吸収できる栄養分を豊富に含む肥料となる。
適切なバクテリアが介在すれば、上記の過程からメタンも生産でき、調理や照明のための燃料として利用可能だ。燃料として木を切り倒すのではなくバイオガスを利用すれば、森林破壊を低減でき、調理の煙を吸い込むことで生じる健康リスクを取り除くことができる。
「廃棄物を資源に」は、自給的で耐久性のある技術施設の開発支援と、そのような施設の建設や維持を地域住民に指導することを目指している。この取り組みは雇用を創出できるだけではなく、ウガンダの農村部と都市部の両地域、あるいはさらに広い地域で、健康を向上させることが可能である。
この活動が一部の地域で抵抗に遭遇することは間違いない。例えば、排せつ物を取り扱うことにまつわる社会的タブーなどだ。また、廃水の処理や回収のインフラストラクチャーがまだ整っていない地域では、強いビジネス事例になりにくい可能性もある。
しかし、この取り組みはパートナーシップの力を証明するユニークなプロジェクトだ。政府の支援を得て、既存の資源を活用し、対象となる地域社会の力を高めている。それ自体、トイレの発明と同じくらい画期的なのだ。
翻訳:髙﨑文子