気候変動サミットに変化の兆し

「世界の化石燃料の確認埋蔵量のうち、3分の2を使用すれば必ず危険なレベルの気候変動が起きる」と、国際エネルギー機関(IAE)が先週警告した。その3分の2の消費を防ぐのが今月末に再開される国連気候変動会議の主要な課題である。

14日、アメリカのバラク・オバマ大統領は、気候変動対策は大統領2期目における個人的使命であると述べ多くの人々を驚かせた。

「オバマ大統領の再選は2005年の炭素排出量を2020年までに17%削減するというアメリカの約束が今後も続くことを意味します」とクリスティアナ・フィゲレス国連気候変動枠組条約事務局長(UNFCCC)が話した。

「アメリカは、気候緩和(ガス排出削減)と途上国の適応の援助への意欲を高める必要があることをしっかり認識しています」フィゲレス氏はインタープレスサービス(IPS)に語った。

アメリカの温室効果ガス削減目標は1990年レベルと比べて約3%の削減である。これはほとんどの国が採用する基本ラインだ。しかし気候科学者によれば、気温の上昇を2℃未満に抑えるには、世界のガス排出量を2020年までに1990年代と比べて25%〜40%削減しなければならない。

対照的に、イギリスはすでに1990年と比べ18%低く、2020年には34%減を目標にしている。

ワシントンにあるNGO世界資源研究所のアンドリュー・ステア所長は2010年メキシコのカンクンの気候変動会議において、気温上昇を2℃未満に抑えるという合意に至ったと話す。

「しかし、全く見込みはありません。状況は緊迫しています。気候変動は明日の問題ではなく、今日の問題なのです。大型ハリケーン『サンディ』はアメリカ国民への警鐘となりました」とステア氏は会見で述べた。

地球の気温が2度上昇すると「安全ではない」とされているが、それ以上は「危険な」気候変動となる。2度に抑える確率が半々であるよう保つには、IEAの計算によると、世界中の燃料資源の埋蔵量のうち、石炭のほぼ全て、石油の22%、天然ガスの15%は地中に埋まったままにする必要がある。

12日に発表されたIEAの年刊重要出版物「World Energy Outlook(世界エネルギー展望)」によると、地理的にはこれら埋蔵量の3分の2は北米、中東、中国、ロシアにある。

世界の気温は既に0.8度上昇した。アメリカは今年が記録上最も暑い1年であり、今も続くかんばつは数十億ドルの経済的打撃を与えている。さらに大型ハリケーン「サンディ」は500~700億ドルの損害をもたらした。

世界規模で見ると気候変動のコストは年間1.2兆ドルと見積もられている。 ステア氏は、その影響を一番受けやすいのは貧しい国々と貧しい人々だと言う。

「気候変動と真剣に取り組まない大統領を、歴史は厳しく裁くことになるでしょう」と氏は続けた。

カタールのドーハで11月26日から再開されているCOP18で、18年にもわたる国連気候交渉が一気に解決するとは誰も期待していない。

ステア氏によれば、ドーハの気候交渉は「リセットボタンを押す機会」であり、今世界が緊急に必要としているリーダーシップをアメリカが担う機会を与える機会でもある。

まさにそうなるかもしれない。オバマ大統領は再選後初めてのホワイトハウスでの記者会見で、気候変動が大統領2期目の個人的使命だと述べ周囲を驚かせた。

オバマ大統領はまた、今後数週間は「短期的な進歩を目指すため更に何ができるかを探る」ことに費やすとも述べた。

雇用と経済成長が優先課題であるのは変わらないものの、大統領は「雇用を創出し、成長を促進し、しかも気候変動を大きく抑え、そして国際的リーダーになれるのであれば、アメリカ国民は支持してくれるだろう」と語っている。

世界の化石燃料の確認埋蔵量の3分の2を地中にとどめておくには、化石資源部門への政府の補助金を打ち切るしかないと世界資源研究所のシニア・アソシエイトであるクリフ・ポリカープ氏は話す。
「世界は高炭素エネルギーから低炭素エネルギーへの投資の転換を必要としているのです」。ポリカープ氏はIPSに語った。

ハーバード大学の研究「“Oil: The New Revolution(石油:新たな革命)」によると、2012年には世界で6000億ドルが石油とガスの探査と生産に使われる。アメリカのNGO、オイル・チェンジ・インターナショナルによると、その研究では化石燃料生産の急成長は、世界の気温を8度上昇させる可能性があり、そうなれば壊滅的なレベルだ。

「現実は、石油産業はガソリンを消費者に売ることではなく掘削によって収入のほとんどを得ています」オイル・チェンジ・インターナショナルの事務局長スティーブ・クレッツマン氏がIPSに語っている。

化石燃料産業とその金融支援者の資本を低炭素エネルギーに移行するには、政府が再生可能エネルギーへのインセンティブや炭素価格を上げるなどの対策を行って仲介することが必要だとポリカープ氏は指摘する。

政府に対して、化石燃料産業への補助金を打ち切り炭素税や料金を課すよう求める企業の数は増えてきている、とかつて世界銀行で働いていたステア氏は言う。

ステア氏は続けてこう語った。「変化の兆しは既に見えており、できるだけ早いうちに変化を起こす必要があります」

この記事はインタープレスサービス(Inter Press Service News Agency)のご厚意により掲載しました。

翻訳:石原明子

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著者

スティーブン・リーヒー氏は、カナダ人のフリーランスジャーナリストとして、インタープレス・サービス(IPS)通信社での記者として寄稿した5年間を含め、通算12年にわたり活動してきた。リーヒー氏は、科学、環境、農業分野を専門としていて、数カ国で主要な雑誌・新聞で執筆している。カナダのトロント均衡のブルックリンに拠点を置き、Society of Environmental Journalistsのプロフェッショナルメンバーでもある。