環境行動都市-横浜

世界中の大都市は環境問題の解決に向け、リーダーシップを発揮しなければならない。その理由は至って簡単だ。地表の僅か2%を占める大都市が、地球資源の実に75%を消費しているのだ。

食料生産や消費、天然資源枯渇、経済や金融など(サブプライム問題や貸し渋りなど)様々な面において世界各国が相互依存を深める今、大都市が担う責任は非常に重大である。同様に我々は、気候変動、水不足、生態系破壊などの環境危機にも直面している。

これらの複雑に絡み合った相互関係を理解するためには、まず、我々の日常生活が地球環境に与える影響を真剣に認識することが必要だ。さらに、それにも増して重要なのは、率先して的確な行動をとることであろう。

日本はこれまで大量生産、大量消費、大量廃棄の社会経済システムから、物質的な豊かさを享受し続けてきた。同時にこのシステムは、廃棄物による環境への負荷を増大させるとともに、資源やエネルギーの枯渇といった問題を引き起こしてきた。このような状況から、天然資源の消費抑制、環境負荷の軽減が図られる循環型社会を実現するため、近年、政府によるリサイクル関連法令の整備が進んでいる。

2008年7月22日、政府は環境行動モデル都市の整備を発表し、二酸化炭素量削減を図る計画を発表した。横浜市は、全国82市町村から選ばれた6つの環境行動モデル都市の1つだ。

364万の人口を抱える横浜市は、自らの環境保護責任を認識しており、2003年にはG30プランを策定し、ゴミ量の30%削減を目指してきた。2005年、この目標が予定より5年も早く達成されると、さらなる目標を策定し、2つの焼却場を廃止した。

地球温暖化への取り組み

次に、横浜市が取り組むべき環境行動は、地球温暖化対策だ。2008年1月、脱温暖化行動方針CO-DO30を策定し、2025年までに市民一人当たりの温暖化ガス排出量を30%以上削減するとの目標を掲げた。

国や他の自治体に先駆けて導入したこの今までに例をみないイニシアチブは、公共施設の省エネそして、市民や企業に温室効果ガスの排出を減らすライフスタイルや実際の行動を促進する事を通して、二酸化炭素の排出量を減らす事を目標としている。

また、横浜市は自然エネルギーの積極的な導入による化石燃料からの転換にも力を入れている。主要な取り組みとしては、風力発電所(愛称ハマウィング)を建設し、2007年4月から稼働している。ハマウィングは、年間約300万kWhの発電量を見込んでおり、これは一般家庭の年間消費電力の約860世帯分に相当する。通常の電力を使用した場合と比較して、二酸化炭素を約1,100トン削減できる計算だ。

ハマウィングは自然エネルギーの利用促進はもちろん、環境行動都市を目指して、市民一人ひとりが具体的行動を起こす契機となることを目的としている。このため、建設に当たっては税金を投入せず、住民参加型市場公募債を発行して資金調達をした。すると350名の市民が購入、僅か3日間で完売したのだ。

また、ハマウィングの維持管理費や市民公募債の償還財源に充てるため、Y(ヨコハマ)-グリーンパートナーとして市内の複数企業から協賛金を得た。

首都圏の取り組み

横浜市が属する首都圏は、日本の政治経済の中心であり、全国の人口のおよそ4分の1(約3,400万人)を擁している。首都圏における活発な経済、社会活動は大量の二酸化炭素を排出しており、率先して温室効果ガスの削減に取り組む必要がある。

2008年4月、首都圏の知事や市長8人と地域の経済界代表が、横浜に一堂に会して「地球温暖化問題への対応」をテーマに意見交換を行った。

その結果、共同宣言を採択し、エネルギー利用のあり方、意識啓発・環境教育、国際協力・途上国支援の3つの分野で、連帯を強化し取り組んでいくことで合意が得られた。

教育の重要性

気候変動に取り組み、健全な地域・地球環境を次世代に残していくためには、抜本的な変革が必要だ。

「大量消費」の都市型ライフスタイルを転換することは容易ではないが、横浜市はあえてそれに挑戦してきた。市民の協力のおかげで、G30プラン目標を達成し、成果となって表れている。

環境意識を横浜の文化に定着されるため、市では教育キャンペーンを展開している。2004年には子供省エネ大作戦が導入され、市内の小学生たちが夏休み期間中に家庭での省エネ行動に取り組んでいる。そして子供たちの省エネ行動の成果によって企業がWFP(国連世界食糧計画)に寄付を行う仕組みになっている。

この取り組みは年々拡大を続け、現在では23,000人の小学生が参加し、75社の市内企業の支援を受けている。その寄付金は、アフリカのギニアビサウ共和国での植林事業に活用されている。

地球の中で横浜を考える年

横浜市は2008年度を「地球の中で横浜を考える年」と位置付け、今後、世界中で都市化が進む中、将来の都市のあり方の範例となることを目指している。

環境問題の提起、また自主的な環境への取り組みを通じて、横浜市はこれからも、持続可能な社会の実現を目指し、地域からの具体的な環境行動を進めていきたい。

この記事は日本語の原文を国連大学が英語に翻訳,編集した物を日本語に翻訳し直した物です。

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環境行動都市-横浜 by 中田 宏 is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

著者

中田宏は2002寝4月8日に横浜市長に選出され、全国主要都市では最年少市長となる。2006年4月に、2期目に当選する。

世界経済フォーラムより、2003年にGlobal Leader of Tomorrow (GLT)、2005年にYoung Global Leader (YGL) に候補として指名される。

横浜市長に就任前は、衆議院議員を3期務めた。