ブレンダン・バレット
ロイヤルメルボルン工科大学ブレンダン・バレットは、東京にある国連大学サステイナビリティ高等研究所の客員研究員であり、ロイヤルメルボルン工科大学 (RMIT) の特別研究員である。民間部門、大学・研究機関、国際機関での職歴がある。ウェブと情報テクノロジーを駆使し、環境と人間安全保障の問題に関する情報伝達や講義、また研究をおこなっている。RMITに加わる前は、国連機関である国連環境計画と国連大学で、約20年にわたり勤務した。
今月の「ニューサイエンティスト」誌によると、気候科学者があいまいな言葉を使うことから、彼らの見解に懐疑的になっている一般市民が多くいるそうだ。
確かに、「~のようだ」「~の可能性が高い」などという表現は、説得力に欠け、気候変動への懐疑心や人々の無関心を助長させるのかもしれない。
このような表現のせいで、科学者への信頼が薄らいでいることも事実だが、インターネットをうまく活用できないがために、自分たちのメッセージを伝えられず、人々の協力も得られないため苦戦している環境団体も数多くある。
気候変動を認識するのは難しいことだ。実際、人々は環境に関する情報を入手しようと努力しているだろうか?あるいは、それは面倒なことと思っているだろうか?
今日、ネット上には膨大な情報が掲載されている。皆さんはどんなサイトを見ているのだろうか?持続可能なライフスタイルについてのサイトに、共感しているだろうか?専門家が執筆した長い報告書に興味があるだろうか?それとも、それを誰かに要点をまとめてもらって、より明確で完結な方法で、状況を説明してもらいたいと思っているだろうか?
それとも、興味深いウェブサイトから様々なデータを入手して、時間をとってじっくり読みたいと思っているのだろうか?
「Our World2.0」をご覧いただいている皆様はすでにお気づきのように、本誌ではビデオレポートを織り交ぜて、専門家の記事をより読みやすい形で伝えようと努力してきた。
我々は、世界中のウェブサイトネットワークとリンクして、気候変動、石油、食糧安全などの課題に関する情報や見識を提供し続けたいと考えている。本記事では、それらのサイトのいくつかをご紹介するとともに、皆様のフィードバックやお勧めのサイトについての情報も受け付けている。
それではまず、ウェブマガジンとブログからみていこう。
ウェブ2.0を効率よく使用し、または新しいサービスやビデオ、フェイスブック、 トゥイッター、ディッグ 、スタンブルアポン(右上・緑色の「Share」アイコンをクリック)のようなソーシャルネットワーキング・ツールを用いて、読者を呼び込んでいるサイトはいくつかある。
ディスカバリーグループの一派であるツリーハガーからも話題豊富な情報を入手できる。環境に関するニュース、解決法、商品情報を提供することにより、「持続可能性」を主流に取り込むことを目的としている。ツリーハガーのオンラインマガジンは、フォーラム(メンバーは7000人以上)やトゥイッターを通じて相互交流を促している。
また、環境に関する記事を記載しているワイヤード・マガジンは、技術革新に重点を置いている。気候変動について学べる新ゲーム、フラワーもその一例だ。
その他には、レッド・グリーン・アンド・ブルー(グリーン・オプションズ・メディア・プロダクション)が様々な政界での立場に基づいた見解を紹介している。このサイトのニュースは、トゥイッター、または通常のニュース配信から読むことができる。
米国発のお勧めサイトは、エール森林環境学大学院のエール環境360と、クリントン政権でエネルギー顧問を務めたジョセフ・ロム氏が気候科学、政策、解決法について記した個人的ブログの気候プログレスだ。
また、気候とエネルギー問題に関して大変興味深い見解を示しているのが、ブレークスルー研究所で、「可能性の政策」に焦点を当てている。国連大学では、2008年7月にテッド・ノードハウス所長が東京を訪れた際にインタビューを行っている。
また、アレックス・エバンズ氏とデビッド・スティーブン氏にもインタビューを行った。彼らのブログ、グローバルダッシュボードは世界の環境問題とその解決法に重点を置くもので、今後も引き続き注目していきたい。
しかし、米国と英国のウェブマガジンやブログにだけに注目しているわけでない。日本でも、ジャパンフォーサステナビリティ(ブログを始めたのは最近)や、東京に本拠地を置く、環境に配慮した未来を目指すグリーンズ・ドット・ジェーピーが、日本国内の環境活動に関する最新ニュースを配信している。
バイオ燃料と石油に関する昨今の様々な変革を記したブログ、ガス2.0は、将来の交通手段となりうる新技術や物質について研究を続けている。このブログも、グリーンオプションズメディアプロダクションが手掛けているが、これはサンフランシスコを本拠地とし、現在拡大しつつある環境ブログのネットワークだ。
データに興味がある人は、エネルギーと将来について検討するオイルドラムを参考にすることをお勧めする。ブログを通じて、ピークオイルやエネルギー危機について議論することもできる。
他にも、世界中の石油とガス資源を定義・評価する科学者たちの非公式ネットワークである、ピークオイルとガス研究協会のサイトからエネルギー関連の情報を入手することができる。
上記のサイトとは対照的な見解を示しているのは、ケンブリッジ・エネルギー・リサーチ・アソシエイツ(CERA)で、世界中に200>人のスタッフを抱え、国際的エネルギー会社、政府、金融機関、技術者たちにアドバイスを提供する団体だ。CERAのサイトでは現在、読者との相互交流やフィードバックは行っていない。
インドをはじめとするアジアで何が起きているのか知りたい時は、エネルギーリサーチ研究所のサイトが参考になる。しかし現在、Web 2.0サービスは行っていない。
気候変動科学では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)。2500人の科学者が気候変動とその影響について執筆、評価をしている。IPCCのサイトから報告書をダウンロードすれば、地球温暖化に関する図表や数字入りの最新科学情報が入手できる。しかし、IPCCがニュース提供をしないのは残念なことである。
その他には国連機関の国連環境計画(UNEP)と国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)がある。後者は、温暖化防止を目指す国際交渉を支援する団体で、ウェブサイト上では、次回のコペンハーゲン会議開催日までのカウントダウンを行い、気候変動がもたらす様々な悪影響を防止するための新たな合意を目指している。
エネルギー問題の概要を把握するためには、国際エネルギー機関のウェブサイトが参考になるが、28カ国の加盟国のみに政策提言を行っている点に留意しなくてはならない。政治家や科学者の国際的ネットワークであり、ドイツのLudwig Blkow基金の支援を受けているエネルギーウォッチグループは、より再生可能エネルギー展望を発表している。
石油に関しては、石油輸出国機構(OPEC)が幅広いエネルギー課題を提示し、また米国エネルギー情報局も豊富なデータを所持している。
食糧問題に関しては、国連食糧農業機関や同機関の食糧安全プログラムが参考になる。
私自身、本記事を書いていて、とてもよい勉強になった。サイト主宰者を確かめることなく、ウェブ上で情報を得ることは容易だが、主宰者に関するページに注意を払い、主催者側の見解にもそれぞれ利害関係や動機があることを理解しておくべきだ。自らに都合のよい解釈、我々の改革意識を削ぐような見解、現状維持に固執する態度がみられないかを見極めなくてはならない。環境に配慮しているように装い誤魔化するグリーンウォシュかもしれないからだ。
また、人々が頻繁に訪れるサイトは、興味深い様々なサイトとリンクしている点に気づかされる。今日、様々な環境変化が起こっている中、「Our World2.0」では、今後もこのように参考となるリンクを紹介していきたい。
ウェブサイトで使用される言葉使いに関しては、公式サイトでは、保守的で言葉使いも慎重だが、ウェブマガジンやブログは分析や意見も取り入れている。しかし、我々の最大の課題は、ウェブを使ってどれだけ多くの人々に情報伝達ができるかという点だ。まだ試行錯誤の段階だが、とにかく初めの一歩を踏み出さねばならない。
「Our World2.0」では今後も、気候、エネルギー、食糧に関するブログやウェブマガジンを皆様に紹介し、特に英国、米国、日本以外の諸外国から発信されるサイトの紹介に力をいれたいと思っています。
また、本ウェブマガジンでは、第三者や従来の科学情報などのフィルターのない、温暖化に関する先住民の生の声を直接取材し、みなさまにお届けしています。また、今後は大学、シンクタンク、市民グループ、「グローバルサウス」のブログなどから直接情報を得たいとも考えています。
そのためにも、皆様のお気に入りのサイト(英語以外の言語でも構いません)があれば、次のコメントセクションにご記入いただければ幸いです。
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