エチオピアのエコ・シューズが成功を導く

エチオピアの画期的なシューズメーカーが、公正な賃金を支払い、地元で調達した材料を使用することで、同国の経済見通しを明るいものにしつつある。ソールレベルズ社は、2004年にベツレヘム・ティラハン・アレム氏が創業した企業で、職人の手によるさまざまなタイプの履物を現在では55カ国で販売するアフリカ最大のシューズブランドに成長した。2011年、同社は売上高を200万USドルに伸ばし、2015年までに収益は1500~2000万USドルを超える予想だ。

アレム氏はアフリカで最も著名なビジネスウーマンの1人となった。彼女は2012年1月、『フォーブス』誌の表紙を飾り、2011年世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダーズ」の1人に選ばれた。2011年6月、『African Business(アフリカン・ビジネス)』誌が企画するAfrican Business Awards(アフリカン・ビジネス賞)で「最優秀ビジネスウーマン賞」を受賞した。

輸出に注目したサクセス・ストーリー

ソールレベルズでのアレム氏の成功は、エチオピアが対外援助への依存から、国内で育まれた技術や資源やビジネスチャンスを活用することによって経済的未来を切り開くことを可能にする方向へ転換を図る準備が整った証拠として、よく語られる。またソールレベルズ社は、特に輸出に注目したサクセス・ストーリーの実例として、エチオピアで新たに生まれつつある民間部門を刺激する存在として話題に上がっている。

“待ち望んでいた『よりよい暮らし』を創造しようと決心しました。私たちのコミュニティが持つすばらしい職人技術を活用し、その技術を持続可能で、世界を見据えた、公正な貿易によるフットウエア・ビジネスに生かすことにしました。”

アレム氏は、アディスアベバ郊外の小さな村でどのように起業したのかを説明した。「家族や近隣の人々が苦労するのを見て育ったので、私たち全員が待ち望んでいた『よりよい暮らし』を創造しようと決心しました。そのために、私たちのコミュニティが持つすばらしい職人技術を活用し、その技術を持続可能で、世界を見据えた、公正な貿易によるフットウエア・ビジネスに生かすことにしました」

彼女はさらに続けた。「私たちが靴を選んだ理由は、環境に配慮した伝統的なエチオピアの手工芸の遺産と職人技能を世界と共有し始めるには、靴が優れた土台になると考えたからです。靴作りに対する私たちのアプローチ(手作りで、環境に配慮した手法)なら、ほとんど全ての材料を地元で調達したり作ったりできるため、100パーセント地元の力だけで輸出製品を作り出せるのです」

古タイヤを靴底に使ったシューズ

ソールレベルズの商品は、サンダル、ビーチサンダル、靴などがあり、ソール(靴底)には古タイヤを再利用している。アレム氏によると、古タイヤを靴底に使った履物はエチオピアでは長年存在していたという。

「この靴の歴史は、元祖『ソールレベルズ』とも言うべき人々が侵攻勢力と戦い、エチオピアが植民地支配を免れたアフリカで唯一の国になった頃までさかのぼります!私たちは土地に根付いた、長い歴史を持つすばらしい再利用の伝統を、エチオピアの見事な職人技術や、モダンで優れたデザイン性と融合させて、世界に通用する特質と魅力を持った商品にしたのです」

“同社の製品は、手織りの布地や天然繊維といった再利用された持続可能な材料を可能な限り使用している。しかし、流行の「グリーンビジネス」という用語を使おうとはしない。”

彼女は生産プロセスに誇りを持っている。同社の全ての製品は、再利用された持続可能な材料を可能な限り取り入れている。手紡ぎや手織りのオーガニックコットンの布地や、アビシニアン・ヘンプやコバ(エチオピアで1万年以上前から栽培されている木の繊維)といった天然繊維を原材料として使用している。しかし、アレム氏は「グリーンビジネス」という用語を使おうとせず、その用語を流行の一種と考えていると言う。

「本当に持続可能で、伝統的に炭素排出ゼロの生産方法と材料を、私たちは大事にしています。それらはエチオピアの文化構造に欠かせない一部であり、私たちはその伝統の中で育ち、伝統を守ることに情熱を傾けているからです」

労働者の権利

ソールレベルズは、労働者の権利に関する基準も高く設定している。従業員とその家族には100パーセントの医療保険を提供し、医師による無料の健康診断も行っている。さらに、障害を持つ労働者には職場の送迎サービスを提供している。アレム氏は敬意を持って労働者を扱うことを重視している。同社の90人の従業員の収入は平均すると、法定最低賃金の4倍であり、同様の労働への業界平均賃金の3倍だと指摘する。

衣料品業界や製靴業界の多くの企業とは異なり、ソールレベルズはノルマ制を採用していない。アレム氏は次のように説明した。「労働のノルマ制はファッション業界でまん延していますが、私たちは常々、その制度を本当に屈辱的なものだと考えていました。それは、労働者にやる気を起こさせる自信のないシステムであり、対立的な労働環境を生み出します。ソールレベルズは全ての従業員に、双方の承認を得た会社全体の目標に準じて、交渉によって決定した賃金を支払っています。つまり、納期を守り、最高の品質を常に保つという目標に、全員が関与しているということです」

拡張

高まる需要を満たすために、同社は新しい生産施設を建設中だ。この施設が完成すれば、従業員数はおよそ300人に増える見込みだとアレム氏は推測している。「地元で調達できる、環境に配慮した建材で、100パーセント再生可能エネルギーを使用する自家発電を導入します。このようなタイプの初めての生産施設は、革新を引き起こす中心地として機能するでしょう。その結果、私たちはこの国の文化的豊かさを発展させると同時に、私たちの事業の生産性を高め、強化することができます」

アレム氏は、自身の会社は他社のお手本となり、人々を取り込んだ持続可能な開発をエチオピアで育む一助となり得ると信じている。彼女は次のように語った。「世界に通用する画期的な製品を作り出し、その製品を世界に販売することは、エチオピアのような開発途上国が共有的なさらなる繁栄を遂げる最良の道です。そのことをソールレベルズが証明しているのです」

アレム氏は他のアフリカ諸国にとっての教訓も見いだしている。

「現在、アフリカは世界貿易のわずか2パーセントしか占めていません。サハラ以南のアフリカが世界貿易で占める割合が、たった1パーセント増えただけでも、アフリカが受けている年間援助総額よりも多い額の輸出収益が得られるでしょう。私たちに必要なのは市場シェアを拡大するチャンスだけです。それは、強く優れたグローバル企業なら必ず追求する目標です」

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本稿は、世界的な産業開発問題に関する議論の促進を目指す季刊誌『Making It: Industry for Development』のご厚意で掲載されました。国連工業開発機関(UNIDO)が発行する雑誌です。

翻訳:髙﨑文子

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エチオピアのエコ・シューズが成功を導く by チャールズ・アーサー is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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