低炭素社会を目指す日本

「日本は二酸化炭素削減革命の先頭を行くべきだ」福田首相は、2050年までに温暖化ガス排出量を60%から80%削減するという日本の計画を表明した。

福田首相は、洞爺湖サミット(2008年7月7日と8日)でも、温暖化ガス削減対策に対する国際合意を得たいとしている。政策演説の中で首相は、温暖化ガス削減のための国際基金へ12億ドルの拠出を表明し、政府としても大規模な排出権商取引の市場設立を支援すると述べた。

一方、日本の専門家たちは、削減目標の達成に向けて研究を進めており、産業、財界、運輸、一般家庭に向けて提案を行っている。これらの提案は斬新で、今後、原油高騰や気候変動が深刻さを増す中、非常に重要になってくるだろう。40年間かけて達成しようというこの変革は、現実的かつ意欲的である。

政府もかなり積極的だ。2008年2月福田内閣は、低炭素社会パネルを設置し、将来の繁栄を脅かさずして、どのように温暖化ガス削減を実現させるかを検討している。12人の知識人から成るこのパネルは、財界からはトヨタ自動車、東京電力、日本製鉄の計3社の代表が参加してしる。このパネルの討議内容は、洞爺湖サミットにも反映される予定だ。

コスト計算

国立環境研究所の専門家たちも、イギリスの研究者たちと協力し研究を進めている。低炭素社会の構築法について、両国ともに積極的に答えを模索している。

2007年2月、国立環境研究所は、日本はエネルギー需要の40-45%を削減すれば、低炭素社会の実現が可能だとする報告を発表した。過去60年間のエネルギー需要はずっと右肩上がりのため、大事業になることが予想され、現在のエネルギー消費傾向をどう食い止めるかが大きな課題となる。

国立環境研究所の報告によれば、二酸化炭素排出量を70%削減するために、年間6.7兆円から9.8兆円の費用がかかると試算している。これは2050年度の国内総生産の1%にあたるとされるが、この費用は新しい雇用を創出するための投資であることを念頭に置くべきだろう。

2つのシナリオ

国立環境研究所の専門家たちは2つのシナリオを検討している。1つは、都市地域で人口増加現象が進み、発展が加速するシナリオA。高度に発達した技術、生産のグローバル化が進み、経済活動全体ではサービス分野がシェアを伸ばすと予測される。

シナリオBは、成長と技術開発がともに緩やかで、環境規制や地産地消が拡大し、経済活動の焦点が、生産活動から社会活動へとシフトしていくだろうと想定している。

この最新モデルに基づき、研究者たちはエネルギー需要の削減は人口減に関連し、合理的エネルギー使用、省エネ、効率性の向上に付随すると予測している。

産業部門によって大きな違いがあることも予測される。例えば工業部門では、再編と省エネ技術の導入で、エネルギー需要を20%から40%削減できるとしている。旅客輸送分野では、有効な土地利用法を策定し、省エネ効率を向上させることで80%の削減効果が見込まれている。

貨物輸送分野では、より効率的なロジスティクス管理と車両のエネルギー効率を高めることで60%から70%の削減が期待されている。一般家庭分野でも、建て替え、より効率的な断熱や省エネ家電の導入により50%の削減が予測されている。

希望的観測?いつから着手できるのか?

削減目標達成まで残された時間はあと40年。上記に挙げた予測は、希望的観測に見える。変革に必要なタイムスパンを考えると、これらの課題はあまりに大きい。例えば平均して、我々が現在、購入するテレビやコンピュータは、12年後にも誰かが使っているだろう。同様に、今日購入する新車は、15年後にも使われているだろう。国外に輸出され、使われている可能性が高いのだ。

Toyota Prius Plug-in Hybrid - Photo Sean Wood

Toyota Prius Plug-in Hybrid – Photo Sean Wood

すなわち、我々は2020年に至るまで、今日購入した商品に囲まれて暮らすことを意味している。例えば、日本中の自動車をプラグインハイブリッド車に変えるまで、何年かかるのだろう?既存の自動車数を、毎年販売された台数で割れば、計算することができる。2007年には580万台が販売され、国内の総自動車数は7400万台に上った(アメリカに次ぐ)ことから、全車をプラグインハイブリッド車に買い換えるためには、計13年が必要だという計算になる。しかし、これも非常に楽観的な見方で、消費者の好みや価格によって車市場は進化しているのである。(エコカーの供給も!)

住宅ストックや商業分野のエネルギー効率を高めれば、今後、建築予定の家や勤務先の新しいオフィスビルは、30年から60年はもつと言われている。多額の投資を必要とする道路、鉄道、空港、建設予定の高速道路は、一度完成してしまえば、100年後も交通網として十分に機能する。

今後40年間で二酸化炭素排気量を70%削減するには、我々はできるだけ早い時期に、従来とは異なる対処法を講じなければならない。

今後の取り組み

福田首相が削減目標を表明したことからも、日本の気候変動政策の中心に低炭素社会の構築があるのは明らかである。環境省は、この新しい社会を構築するにあたり、中心的役割を担っている。このアプローチは数値目標に焦点を当てるよりも、むしろ大まかな方向性を示すものだ。

その点、日本は既存の枠組みを強化することが可能である。自動車保有率は高いが、公共交通の使用率は32%と高い。ドイツでは8%、イギリスは6%、アメリカは1%にすぎない。特に、鉄道網の利用率は世界でもトップレベルだ。また、日本の都市は総じてコンパクトである。これらの2つの要因が、公共交通の普及を支えているのである。

しかしながら、他の分野では今後さらに国民意識を高めていく必要がある。大きな課題の1つが消費者選択で、地元の農産物を購入するなど、農産物がスーパーの店頭に並ぶまでのカーボン・フットプリント(二酸化炭素排出量)を考慮することで意識を変えていくことが可能となるだろう。

買い物客も電化製品などを購入する際に、商品のライフサイクル評価結果を考慮し、製造、使用、排気にどれだけの二酸化炭素が排出されているか認識すべきである。そして欲を言えば、新しい製品を購入する代わりに、再利用へと消費者意識をシフトさせることも重要だ。

低炭素社会のビジョンはまだ不明瞭で、従来のアイデアを寄せ詰めた感も否めない。しかし、研究者、政策決定者、市民社会団体、財界が、低炭素社会のあり方について、真剣に検討し始めたことは非常に画期的だ。長い道のりの第一のステップ。そのステップを歩もうと望むことが、基本的に重要なのだ。

もっと詳しく学ぶ:

Japan Low Carbon Society Scenarios toward 2050

関連ポスト:

Nagoya’s Waste Revolution

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Based on a work at http://ourworld.unu.edu/en/japan-as-a-low-carbon-society/.

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著者

ブレンダン・バレットは1984年からイギリス原子力発電所の環境アセスメントに従事して以来、環境分野に従事してきました。環境スペシャリスト、都市設計者でもあり、コミュニケーションや教育をはじめ環境問題の研究のため、ITを駆使しています。

博士課程を終了後、1997年から国連大学に加わり、2002年に国連大学メディアスタジオを立ち上げました。

IUCN(国際自然保護連合)教育・コミュニケーション委員会のメンバーでもあり、オーストラリア環境研究ジャーナルやサービス・リサーチ・ジャーナルの国際編集顧問委員会のメンバーとして活躍。2002年から2005年には情報社会サミットで、国連大学の中心的役割を果たしました。

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