中国が米国を抜きエネルギー最大消費国に

Zhao Xiuxia(ジャオ・シウシア)氏が最近受け取った愛の告白ほど熱のこもったものはないだろう。それはサッカー場よりも大きなLEDスクリーン上に映し出されたものだった。

「敬愛なる妻へ。君は家族のために一生懸命働いてくれるね。よりよい暮らしを目指して一緒に頑張っていこう」という巨大な文字列が、北京でも有数の派手さを誇る新しいショッピングセンターの天井に装備された電光スクリーンにスクロール表示された。

1ピクセルあたり5メートルに拡大されたこの携帯メールのテキストは、献身を表わすメッセージであると同時に、中国経済が消費する電力の劇的な増加を象徴するものでもある。

長さ250メートルの巨大なスクリーンは、The Place(世貿天階)と呼ばれるショッピングセンターにあり、ますます豊かさを増しエネルギーを大量に消費し続ける国の顕著なシンボルの一つだ。先週、中国は米国を抜いて世界最大のエネルギー消費国となったと報道された。

問題も2倍に

権威ある国際エネルギー機関によれば、中国の石炭、石油、風力などのエネルギー資源の使用量は過去10年間で2倍以上に増加。2009年には22億6000万トンの石油に相当する量に達し、米国の21億7000万トンを超えた。

この状況は大きなターニングポイントだ。エネルギー使用は二酸化炭素の排出や経済の拡大、世界の権力バランスと密接に関連している。記録が始まって以来、米国は世界最大のエネルギー消費国であり続けてきた。

中国が13億人もの国民に、米国やヨーロッパ諸国に匹敵するようなライフスタイルを享受させるようになるには、まだ相当な躍進が必要である。

中国政府はこの報告結果に異議を唱えたが、国の消費傾向は明白だ。昨年、多くの先進諸国が横ばい、あるいはマイナスの経済成長率に苦しみ、エネルギー消費も同様の傾向だったのに対し、中国の国内総生産(GDP)は8.7%の成長率を示し、間もなく日本を抜いて世界第2位の経済大国になる勢いだ。そして二酸化炭素の排出量は、産業諸国のほとんどで減少したのに対し、すでに世界最大の排出国である中国では9%の増加を記録した。

中国のエネルギー需要の大部分は産業とインフラによるものだが、個人需要も低い数字からのスタートとはいえ増加している。

中国が13億人もの国民に、米国やヨーロッパ諸国に匹敵するようなライフスタイルを享受させるようになるには、まだ相当な躍進が必要である。しかし国民が利用しているエアコン、電子レンジ、テレビ、コンピューターの台数は過去最大だ。さらに人々はより多くの自動車を運転している。昨年、中国の新車販売台数は米国を抜いて世界1位となった。

街の風景は姿を変えつつある。オリンピック開催のため、古代の都が超モダンで都会的なメトロポリスに生まれ変わった結果、北京の超高層ビルの中には30階建てや40階建ての建物の側面がLEDスクリーンになったものもある。

アジア最大の単一LEDスクリーンを誇る世貿天階は、最も注目を集め、エネルギー消費の激しい場所の一つだ。ラスベガスのより巨大なスクリーンをモデルにし、エミー賞受賞歴のあるハリウッドのデザイナー、ジェレミー・レイルトン氏が設計したスクリーンには、星や海中の生物、有名な風景と共に個人的なメッセージを載せたカスタムメードの動画がちりばめられる。テキストのみのメッセージならわずか1元で掲載でき、プロポーズ用の特注ビデオは2万元(1850ポンド)だ。(頭上のスクリーンにガールフレンドとの写真が映し出された状況下で、彼女の前にひざまずいてプロポーズした男性は1人だけではない)

電力消費の両極化

このような極端な電力消費は、中国では標準というより例外である。平均的な電力使用量は今でも米国の4分の1にすぎない。

夫から巨大な愛のメッセージを受け取った時、ジャオ・シウシア氏は近くのジュースバーでウエイトレスとして働いていた。彼女は2つの仕事を掛け持ちしており、労働時間は1日14時間、月に3000元(300ポンド)を稼ぐ。

夫の収入と合わせれば、コンピューターや冷凍庫、エアコン、オートバイのある生活ができる。この夫婦は最近、河北省の貧しい農村から上京してきたばかりで、彼らの両親はこういった物品は一切持っていない。

「私の村は今でもとても暗いのです。街灯を使うのは年に1、2回のお祭りの時だけです」とジャオ氏は言い、出身地と現在の職場を比較した。「世貿天階の巨大スクリーンを初めて見た時は驚きました。すごく大きくて、きれいでしたよ」

この人工的な美しさは環境への負担を伴う。管理会社によると、スクリーンは約1500キロワット、すなわち10ワットの省エネタイプの電球のおよそ15万倍もの電力を消費するそうだ。

このような極端な電力消費は、中国では標準というより例外である。平均的な電力使用量は今でも米国の4分の1にすぎない。

政府はこういった電力消費の影響やさらなる拡大を抑えるために、風力や太陽熱、地熱エネルギーといった再生可能エネルギーを促進している。

国営メディアは、今後10年間で約5兆元をクリーンエネルギーに投じ、2015年までに石炭への依存を70%から63%に低減すると先週発表した。また国内の科学者たちは、原子力発電所の新たな開発において大進歩があったと主張した。

「中国はエネルギー供給を増やすために、ありとあらゆることをやっています」とポール・フレンチ氏は語った。彼は石油輸送ルートへの中国の影響拡大に関する書籍の共同執筆者だ。「原子力発電所を建造し、想像もできないような太陽光発電パネルを製造し続けています。風力、水力、バイオマス発電についても同様です… つまり中国がより多くのエネルギーを消費する傾向は続くでしょう」

石油への依存

世界市場への影響もますます明らかになっている。昨年中国の石油の輸入依存度が初めて50%に達し、2030年には75%に上昇すると予測されている。さらに近年、中国はオーストラリアからの主要な石炭輸入国となり、国内の原子力発電所は空前のウラン価格高騰に一役買った。

「中国がくしゃみをすれば、全世界がパニックになります」とThe Climate Group(低炭素経済の実現を目指すNPO)の中国担当ディレクター、Wu Changhua(ウー・チャンホワ)氏は語った。「国際社会における中国の台頭に対し、人々は矛盾した態度を示しています。中国が世界経済の景気回復に一役買うことを期待する一方で、温室効果ガスの排出は抑えてほしいと願っているのです。中国の意志決定者たちには、現在の危険な開発モデルから離れて、新たな道を切り開きたいという明確な考えがあります。しかし膨大な数の国民と相対的には少ない国土や資源を抱える一国が現在のような問題を解決するのは、人類史上初めての試みなのです」

昨年中国の石油の輸入依存度が初めて50%に達し、2030年には75%に上昇すると予測されている。

低炭素経済への移行はまだ発展途上の段階である。世貿天階から道を隔てた所に、よりグリーンな価値観への移行を目指す新しいショッピングモールが建設中だ。Parkview Green(侨福芳草地)と呼ばれる、スチールとガラスでできた三角形の建造物には三重窓が取り付けられ、北京におけるエネルギー効率性の新たな模範を示す施設になるだろうと言われている。

このプロジェクトのスポークスマンによると、最先端の技術や資材、デザインによって冷暖房費が大幅に抑えられるという。

「この建物は実際に呼吸できるのです」と侨福芳草地の常務取締役であるLeo Hwang(レオ・ホワン)氏は語った。「私たちは環境からどんな恩恵を受け、環境に何を戻さなくてはならないのか理解する必要があります。そのバランスを見つけなくてはなりません。大量のエネルギーと資源を消費する建物がありますが、侨福芳草地では資源のより効率的な利用を目指します」

この新しいショッピングモールが、すぐ近くにある世貿天階よりも環境に優しくエネルギー効率のよい存在として、その価値を促進できるかどうか、現時点ではまだ分からない。

*Cui Zheng(ツゥイ・ジュヨン)氏による追加報告

この記事は201083日火曜日、英国標準時1234分にguardian.co.ukに掲載されたものです。

翻訳:髙﨑文子

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