気候変動で武装集団の徴募活動が活発化

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、武装集団にとって朗報となった。パンデミック(世界的流行)を利用して敵に攻撃を仕掛けたり、兵員を補充したりできたからだ。そして今、武装集団の勢力拡大を助長する思いがけない味方が、もう一つ現れた。それが気候変動だ。

気候変動が脆弱性を高め、暮らしを根底から損なうことは、研究によって繰り返し明らかにされているが、新たなデータを見ると、これによって武装集団の成長につながる条件が作り出されていることが分かる。

多数の武装集団がすでに、気候関連の危機を利用しようとしているとの報道もある。例えば、イスラム国は水へのアクセスを遮断することで、攻撃をやりやすくしたり、人々を強制的に避難させたりしているほか、タリバンは、干ばつや飢饉で疲弊した土地を奪還している。気候変動に起因する苦難に乗じることが武装集団の利益となることは間違いないが、これによって武装集団に加わる者が増えているのかどうかを裏づけるエビデンスは、これまであまり見当たらなかった。

国連大学政策研究センター(UNU-CPR)が新たに発表した報告書は、気候変動と武装集団への参加の関係について初めて、実地レベルのデータをいくつか提供している。ナイジェリア北東部で進められている武力紛争からの出口管理プロジェクトの一環として、研究者のチームは最近、主としてボルノ州マイドゥグリとその周辺のコミュニティ指導者を対象とする広範な調査を実施した。

調査の結果、回答者の70%近くが雨季、乾季のほか、埃まじりの貿易風を特徴とするハルマッタンの季節にも変化が生じていることを指摘し、この地域で気候変動の影響が幅広く見られていることがうかがえる。それぞれのコミュニティで気候変動を実感している回答者のうち、このような変化によって生活や所得に悪影響を受けた人を知っているとした者も85%以上に上っている。

農民や牧畜民、漁民の間では、気温と降雨量の変動を特に大きな課題として捉えられ、実際に驚くべき影響も生じている。気候変動に起因する農業問題を認識しているコミュニティ指導者の40%は、これを理由にボコ・ハラムまたは同様の集団に加わった者を知っていると回答し、さらに60%以上の回答者は、一般市民合同タスクフォース(CJTF)やその他の自警団に加わった者を知っていると答えた。

武装集団がさまざまな状況で、気候変動と暮らしに対する影響を積極的に利用しようとする中で、こうした調査結果からは、恐ろしい全体像も浮かび上がる。残念なことに、気候変動に関連する苦境の中で、武装集団の主張の少なくともいくつかが説得力を持ってしまっていることを示すエビデンスも出てきた。

自給自足型を含む農業への高い依存度、気候変動の目に見える影響の広がり、武装集団の存在という、こうした危険な要素の重なりは、ナイジェリア北東部だけに見られる現象ではない。例えば同国の北西部でも、同じように急激な気候変動の影響により、伝統的な農業と牧畜業の慣行が混乱し、暮らしが脅かされることで、武装集団や犯罪集団による搾取が横行している。事実、ボコ・ハラムやその他の武装集団が、資源に関連する農民・牧畜民間の緊張を利用して、農村コミュニティから兵員を徴募し、北西部で勢力を確立しつつある様子も見られる。こうした動きは、この地域が北東部の反政府勢力をニジェール西部の武装集団要素と結びつける「陸橋」となり、すでに脆弱なサヘル地域に劇的な波及効果を及ぼすのではないかという懸念を生んでいる。

こうした懸念の中には、地域特有のものもあるが、気候変動がすでに脆弱な紛争被災者に影響を与えるリスクが高い場所は、他にも多くある。ある研究センターが作成した気候変動に対する物理的脆弱性指数によると、今日の紛争被災国の多くは、気候変動に対する脆弱性の増大という点でも上位にランクされている(スーダン、イラク、チャド、エリトリア、ソマリア、マリ、ニジェール、モルディブなど)。

気候変動と紛争の関連性に対する国際社会関心が高まる中で、気候変動が武装集団への加入の動きにも影響を与えことを示すエビデンスが出てきていることを認識することは重要だ。サヘルをはじめ、紛争が暴力的過激主義と急進化という単純すぎる言説で捉えられがちな地域では、これが特に当てはまる。

ボコ・ハラムのような集団をイデオロギー的な「例外」として取り扱えば、その他の武装集団と比較することを難しくかねない。イデオロギーの役割に重点を置きすぎることによって、暮らしや食料の不安、土地と水をめぐるコミュニティ間の紛争など、日常的な苦境や苛立ちが、テロリスト認定された集団への人々の関与を後押ししているという関係性が見えなくなるおそれもあるからだ。

気候変動が世界中の人々の生活や暮らしに影響を及ぼし続ける中で、私たちは武装集団がこれをどう利用しているかだけでなく、国際社会が紛争の予防と対応の取り組みを気候変動に配慮する形でいかに適応できるか(また逆に、紛争に配慮した気候変動対策をいかに採用できるか)も強く認識する必要がある。

特に、気候変動が弱い立場に置かれている人々の資源へのアクセス、生計手段、隣人との関係に影響を与える中、こうした人々が気候変動の影響に取り組み、対処できるよう支援しなければ、武力集団はナイジェリアやその他の地域で、気候変動に起因する衝撃の恩恵を受け続けることになろう。

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この記は事最初にThe Hillに掲載されました。

 

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著者

シボーン・オニールは、国連大学政策研究センター(UNU-CPR)の「武力紛争からの出口管理プロジェクト」のプロジェクト・ディレクターです。以前は、国連大学の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)プロジェクト・マネジャーを務めていました。

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