水問題の解決策は自然の中にあるのだろうか

3月22日の「世界水の日」は、人類や地球にとって水は重要である、ということに関心を引きつける機会となった。今年は「水のための自然」がテーマとして設定され、第8回世界水フォーラム(ブラジル、ブラジリアで開催)で発表された「国連世界水発展報告書2018年版」にも反映された。その報告書では「今までどおりのやり方では、持続可能な水を安定的に確保することができない」と強調されている。自然に逆らうのではなく、自然と連携するために、水を管理する際は自然を基軸とした解決策の実施を拡大していく必要がある。

地球の水循環(大気から大地、河川などを経て海域に向かう水の循環)は多くの課題に直面している。気候変動によって水循環が活発化しているため、乾季の雨はますます少なく、雨季の雨はますます多くなっている。加えて、人口増加、経済成長、消費パターンの変化により、水需要は全体的に増している。アフリカ、アジア、ラテンアメリカでは大半の川で汚染が進んでおり、人口増大と経済成長もさることながら、排水管理システムの欠如もその要因の一つだ。このままでは2050年までに50億人以上が水不足の影響を受けかねない。地球と社会が多くの深刻な水管理課題を抱える中で、手ごろなコストかつ持続効果のある解決策が緊急に必要とされている。

自然から学ぶ

我々が常に、優れた、新しい解決策を考え出さなければいけないわけではないことは、良い知らせだ。我々を取り巻く自然界は、持続可能な農業や都市をはじめとする全分野にまたがっており、水の生態系を保全し復活させるための自然を基軸とした多種多様な解決策を提供してくれる。自然を基盤とした解決策(NBS: Nature-based solutions)は、自然から着想と支援を得ながら自然のプロセスを活用または真似して資源を管理する策であり、水管理の課題に対して多面的な支援を提供し、大きな便益をもたらすものだ。

未活用のローテクかつ費用対効果のあるNBSの一例として、汚染防止を目的とした湿地造成がある。湿地造りは、水の供給を確保することで農業資源の管理を改善する役割を担っており、土壌や植物、微生物の自然機能を用いて水量を保ち、水質を改善するように設計されたシステムである。そして、養分(窒素やリンなど)の再利用、生息地の提供、娯楽や教育、研究、また適切な景観への誘導に貢献するシステムだ。

国連大学の研究によると、排水の回収と処理が行われる地点の生態系に、戦略的に湿地造成を展開することで、500人からなるコミュニティが約1ヘクタールの農地に水を供給し、5ヘクタールから7ヘクタールへ肥料を施せるようになる。このような排水処理を目的とする湿地造成で採れた植物は、ある村落の調理用燃料ニーズの12%を賄えることもある。

湿地造成の別の事例として、フィリピン、バヤワンの再定住プロジェクトがある。ここでは、インフォーマルな居住地に暮らす人々が排水を直接海に垂れ流しており、下痢などの水系感染症の症例が多発していることを市の保険事務所は把握していた。そのため、この居住区は市の郊外に移され、新たな排水管理システムが建設された。このシステムは、細い下水管と各種の湿地造成を組み合わせている。新しいシステムにより、676世帯で暮らす人々が安全な衛生と排水処理の恩恵を受けられるようになった。そして、汚染から沿岸水域が守られるだけでなく、処理済みの排水は園芸・野菜栽培プロジェクトに再利用されている。

 

植え付けを終えたばかりのフィリピン、バヤワンの湿地造成。Photo: SuSanA Secretariat, Creative Commons BY 2.0

さらなる知識の共有が必要

このようなプロジェクトは世界に数多くあるが、あらゆるレベルで情報が不足しており、湿地造成についても知識基盤を改善する必要がある。現在、国連大学物質フラックス・資源統合管理研究所(UNU-FLORES)は湿地造成知識プラットフォームを開発中で、対話型マップ、全世界の湿地造成が処理している排水量を評価するデータベース、さらには科学者、実務者、政策決定者、そして市民社会によるこの技術の確立への取り組みに対する支援が含まれている。

湿地造成をはじめとする自然を基軸とした解決策は、地域社会と環境に多くの利益をもたらす。実際、全世界で湿地造成のプロジェクトが実施され、成果を収めている。それでも、現地の水の課題にどう取り組めるのか、というような自然を基軸とした解決策に関する情報は未だ不足している。UNU-FLORESのようなプロジェクトをさらに増やして知識基盤を充実させるとともに、これに対するアクセスの可能性も高めることで、自然に基礎を置いた解決策をより多く実施し、水の入手可能性と水質を高め、水関連の災害や気候変動に対するリスクを軽減する必要がある。

 

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本稿はSDGナレッジ・ハブ「全17の持続可能な開発目標(SDGs)をはじめとする国連持続可能な開発のための2030アジェンダ実施に関する報道・論説のためのオンライン・リソースセンター」に掲載されたもの。

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著者

タマーラ・アヴェランは、国連大学物質フラックス・資源統合管理研究所(UNU-FLORES)水資源管理ユニットのリサーチフェロー。生物学を専門とし、水質が水生生物に及ぼす生態学的影響や、過剰な養分の植物形態へのに影響について研究している。アヴェラン博士はUNU-FLORESで、資源の損失を減らすための水、土壌、廃棄物の関係性に焦点を絞っている。

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