ガーナのロックダウンが脆弱な労働者を直撃:次にすべきこと

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のロックダウン(都市封鎖)によって、世界は停滞した。衛生とソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の確保に関する規制によって日常生活が変わり、学校や事業は閉鎖され、集会は禁止された。世界の労働力の約81パーセントに相当するおよそ27億人の労働者が、部分的または完全なロックダウン規制によって影響を受けている。

私たちは、ガーナのロックダウン戦略が同国の労働市場に与えた影響を考察した。その目的は、COVID-19パンデミックへのガーナの政策対応から学べる教訓を明らかにすることであり、またガーナだけでなく他のアフリカ諸国においても将来の政策設計に役立ちうる洞察を得ることであった。

今回の経験を通じてガーナでは、命を守ることと生計を守ることのバランスを取る難しさが実証されている。また、最も弱い立場に置かれている人々が取り残されないように、対象を絞った政策を設計するという困難な課題も浮き彫りにしている。

ガーナは、COVID-19の蔓延を遅らせるために最も厳しい政策を取った最初のアフリカ諸国の1つである。感染の「ホットスポット」となったアクラとクマシの都心部では、2020年3月30日から4月19日までロックダウンが実施された。

この部分的なロックダウンは、パンデミック曲線を平坦化させるほど長くは継続されなかった。しかし、私たちがワーキングペーパーで概説しているように、このロックダウンによって大きな経済的影響が生じ、失業と事業の閉鎖が誘発された。ガーナ国民の多くは、最も厳しい規制が緩和されて以降、仕事を再開することができている。それにもかかわらず、労働市場の回復は今なお部分的で一様ではなく、パンデミックによる経済的負担は最も弱い立場にある人々にのしかかったままである。

労働者への影響

私たちの研究では、ガーナ全土のさまざまな都市の労働者600人以上から聞き取りを行い、パンデミックによって生計がどのような影響を受けたかを評価した。それによって3つの結果が明らかになった。

1つ目は、左側のグラフが示すように、ロックダウンによって労働市場が即座に影響を受けたことである。

ロックダウンの影響を受けた地域の労働者は、パンデミックの初期段階で就労を中断する割合が2倍以上高かった。また、2020年4月を通して就労を続けていた労働者は、ロックダウン対象の地域では3人に1人のみであったが、ロックダウン対象外の地域では3人中2人であった。

どちらのケースでも大多数の人が、経済活動を中断した主な理由を政府の規制による職場と事業の閉鎖と回答している。

2つ目に、異なるロックダウン政策を受けた地域間の雇用水準の格差が、措置が緩和された4カ月後に縮小していることが明らかになった。右側のグラフが示すように、雇用が目覚ましい回復を見せたにもかかわらず、パンデミックは労働市場に永続的な影響を全国的にもたらした。2020年9月になっても、就業率は同年2月と比較して12パーセントポイント低かった。また、平均週間所得はCOVID-19発生以前の水準を大きく下回ったままであった。これは、労働力構成の差を考慮した後でも変わらなかった。

3つ目に、パンデミックが労働市場に与えた打撃は、すべての労働者に等しく影響したわけではなかったことが示された。もっと正確に言うと、それまでに存在していた脆弱性を露呈させ、悪化させた。

下のグラフは、そうした不均衡な影響を表している。

インフォーマル経済の事業主はほとんどの場合パンデミックの初期段階で事業を中断せざるを得なかったため、雇用と売り上げの両方に関して短期回復が相対的に遅かった。言い換えると、レストラン、観光事業、小規模小売店、露天販売など、人と多く接触する環境で働く人々が最も影響を受けたということである。

ほとんどが貯蓄が全くないか少ない低所得者で、生活のために日銭を稼ぐ必要があったため、対象を特定した支援がなければ困窮状態に陥るリスクが高かった。

ガーナでは、女性は弱い立場におかれがちな自営業者の過半数を占めており、私たちの調査から、女性は雇用と収入の両方に関して、パンデミックから過度に大きな影響を受け続けていることが判明している。

ガーナ政府は貧困層と弱い立場に置かれた人たちだけでなく、企業も支援する措置を展開した。COVID-19救済プログラムの下で適用されたこうした介入は、経済活動の中断の緩和、国民の困窮の軽減、中小零細企業の救済と再生を目指している。たとえば、COVID-19救済プログラム企業支援制度に基づき、国家小規模産業局は、農業関連産業、製造業、水と衛生設備、観光・ポスピタリティ、教育、飲食、科学技術、交通輸送、通商貿易、医療・製薬、繊維・衣料の分野に従事している中小零細企業に長期低利貸付を実施した。

誰も取り残されないようにする

世界中の政策立案者にとって、COVID-19パンデミックへの対応を進めるのは、公衆衛生の保護と経済の保護とのバランスを取る困難な作業である。COVID-19の次の波が押し寄せるとき、ガーナは健康リスクと経済的リスクの折り合いをどのようにつけるべきなのか。また、貧困削減の進捗の後退を防ぎ、不平等のさらなる悪化を緩和するには、どのようにすればよいのか。

私たちの研究から明らかになったように、今後封じ込め政策を実施する場合、最も弱い立場に置かれている労働者がこの危機で取り残されないようにする保護的措置と一体で行う必要があるだろう。

その場合、封じ込め政策は貧困層と弱い立場にある人たちへの適切な救済措置によって、迅速、安全、効果的に補完されなければならない。収入を回復し生計を維持するには、必要としている人々への直接現金給付による収入の補助が不可欠である。

多数のガーナ国民が就労を再開できていることから、回復の兆しは労働市場にいくつか存在すると考えられる。それらは、部分的ロックダウンの適時の解除、世帯と企業への迅速な支援など、ガーナ政府が採用した政策のおかげであるといえよう。

しかし、インフォーマル労働者、とりわけ女性へのパンデミックの影響を軽減するには、さらなる対策が必要である。各国は、インフォーマル労働者を支援する措置を開発することが重要である。他の開発途上国と比較して、ガーナはどちらかと言えば適切な対策を行っていると考えられる。こうした介入は世帯の困窮だけでなく、その経済活動の中断にも対処することを目的とすべきである。具体的には、インフォーマル労働者が仕事に復帰できるまで支援するために、政府はセーフティネットを開発するとよいだろう。

•••The Conversation

この記事は、クリエイティブ・コモンズのライセンスに基づき、The Conversationから改めて発表されたものです。元の記事はこちら

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