私たちが望む未来、私たちが必要とする国連

75回目の開催となった国連総会を振り返り、75年前に戦争によって荒廃した世界で国連が創設されたことを祝福する中、人類はまたしても、新しい世界の基礎を築くことが求められている。

つまり1945年と同じく、世界的な大惨事から再生する世界を思い描くように求められている。それだけでなく、パンデミック(世界的流行)後の世界では人間の利益追求と地球の現実をすり合わせるという、部分的ではなく完全な変革も必要となるだろう。

そうした世界全体の変革によって、これまでよりもさらに健全で、公正かつ安全であり、寛容的で、精神的なつながりのある社会をつくり出すことができ、全員が恩恵を受けられるようになる。

国連の歴史学者であるポール・ケネディ氏が述べているように、歴史上最も悲惨な戦争の終盤に、新しい世界秩序が実現する、あるいはすでに実現していると考えた人々と同じような楽観主義と不屈の精神を、現在の私たちが取り戻すのは難しい。

もちろん、そのように予見をした人々はあまりに楽観的過ぎた。実際に待ち受けていたのは、ギリシャ神話の「シーシュポスの岩」のように、岩を山頂まで押し上げて運び終えた瞬間に岩が転がり落ちてしまうという苦行の繰り返しであった。

そこから私たちが得られる教訓と希望は、当時の人々が瓦礫の山と化した世界を見て、そこにすべての人のための変革の瞬間を見出したことである。当時の彼らにそうできたのなら、現在の私たちもきっとできるはずだ。

1945年に創設された国連は、その前身で国際協調の試みであった国際連盟と同じ課題に直面した。国際協調に取り組む機関の創設を支持する声が上がれば必ず、そこには国家主権の侵害への警戒も存在したのだ。この激しい論争は現在も続いている。

国連は今も、あらゆる国際機関が持つ根源的な矛盾を抱えている。つまり、国際機関がどのように機能するかは、その加盟国次第なのである。

リチャード・ホルブルック元米国国連大使の有名な言葉がある。「危機に関して国連を非難するのは、ニューヨーク・ニックスがひどいプレーをしたときに、マディソン・スクエア・ガーデンを非難するようなものです。みなさんは建物を非難しているのです」

また、国連憲章の規定により、安全保障理事会で拒否権を有している5カ国のうちの1カ国でも反対すれば、国際規範に従わない無法国家に対して行動を起こすことはできない。

国連の歴史を理解するためには、国連の創設時にこうした緊張関係がそのシステムに織り込まれたことを理解しなければならない。

それでも、こうした構造的な制限があるにもかかわらず、それぞれ個々の国だけでは適切に、または十分に対応できない領域において、国連は大きく前進してきた。

また、気候変動など、どんな大国であっても単独では対処できない世界的な問題が拡大している以上、国連が崩壊する可能性は低い。たびたび言われるように、多くの欠点があるものの、「もし国連が存在しなければ、私たちは国連を創設することになるだろう」

私たちが暮らしている現在の地球は、1945年の時とは違う。わずか75年という人の一生分の間に、地球の人口は4倍近く膨れ上がって2020年には80億人に迫り、世界の総生産は4兆ドルから140兆ドル以上に増加して、数々の悪影響ももたらしている。

しかし、現在の世界の状況が悪いばかりではないと認識するのも重要である。例えば、国際世論の高まりが人権侵害の表面化につながり、最も抑圧的で反抗的な姿勢をとる政権にさえ、自らの罪がもたらす影響について熟考するきっかけを作っている。そうした圧力を弱めてはならない。

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)がもたらした「大いなる停滞」が変革のきっかけになるのなら、変化のレベルは、私たちの心や良心から生まれるべきだ。

少なくともそうした変化は、より公正でより持続可能な世界を作るための国連の既存の枠組み、すなわち「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」を実行するというかたちで、行動となって表れるべきである。

国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成は困難に見える上に、現在はパンデミックに気を取られているが、このアジェンダによって人類が得られるものを見失うわけにはいかない。

持続可能な開発のための2030アジェンダは、今すぐ実行されるなら、いずれ国連が人類にもたらした最大の贈り物であると言われる時が来るだろう。

国連は、世界的な機関として75年間任務に従事する中で数々の問題と直面してきたが、それによって「戦争の惨害から将来の世代を救い」、「基本的人権に関する信念を改めて確認し」、「いっそう大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進」しようとする試みが妨げられたことはこれまでなく、これからもないだろう。

国連憲章の前文にあるこうした目的は、正しかったのだ。新たな変革の時である今、ようやくこれらの目的を実現できるのかどうかが問われているが、実現可能だと考える。

私たちが山頂を目指して押し上げている「岩」は、まだ道のりの途中にある。さらに前進し、私たちが望む未来と私たちが必要とする国連をつくり出すには、より多くの努力が必要である。

1945年同様、今はまさしく変革の時だ。国連にとってそうであるのは間違いないが、世界全体にとっても同じなのである。

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この記事は最初にInter Press Service Newsに掲載されました。

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