カンクン会議は次世代に何を提供するのか?

2010年12月22日

世界中の若者がメキシコのカンクンで開催された第16回気候変動枠組条約締約国会議(COP16)での交渉の行方に注目している。彼らは「気候ジェネレーション」、すなわち私たちの気候対策の遺産や言葉を濁しがちな傾向、もっと早く行動しなかった世界全体の失敗と共に生きていかなければならない人々だ。カンクン会議において、世界的に拘束力を持つ同意に向かって実質的な前進が見られることに期待が高まる。

この期待を抱いたのは、気候チャンピオン(日本、韓国、タイ、インドネシア、オーストラリア、ベトナム出身者)と呼ばれる30人の若者のグループだ。彼らは2010年11月22~26日、ベトナムで会合を開き、世界中のリーダーたちに気候変動に関する議論はやめて行動を起こすように要求した。

気候チャンピオンたちは、ブリティッシュ・カウンシルのClimate Generation Project(気候ジェネレーション・プロジェクトによる環境ビジネスや起業に関するワークショップに集まった。このワークショップの目的は、プロジェクト管理やリーダーシップ・スキルの研修、関連分野の専門家との交流を通じて、参加者たちが各自の環境プロジェクトを開発できるようになることだった。

気候ジェネレーションは何ができる?

まず言えるのは、従来のやり方は通用しないということだ。このプロジェクトに集まった若者たちは環境起業家たちであり、彼らは皆、自分たちのコミュニティーでの気候や持続可能性の問題に対処するために「クールな」プロジェクトを展開しようとしている。

このプロジェクトに集まった若者たちは環境起業家たちであり、彼らは皆、自分たちのコミュニティーでの気候や持続可能性の問題に対処するために「クールな」プロジェクトを展開しようとしている。

例えば、日本出身の石橋秀一氏は、自宅の電力消費状況をオンラインで監視できる、見事な電力リテラシーに関するプロジェクトを開発した。その他のプロジェクトには、リサイクル素材から家具を作るタイの工場、ジャワ島東部のトゥルンガグンのLake Buret(ブレ湖)近くで行なわれているコミュニティーをベースとした環境保全プロジェクト(インドネシア語のサイト)、韓国でのエコ・ファッションショー、スマート・グリッド・システムの開発を目的としたベトナムのプロジェクトなどがある。

若いリーダーたちが変化を起こす

インドネシア出身のブリティッシュ・カウンシル気候チャンピオン、シティ・ヌル・アリア氏は、気候変動の影響を逆転させ、コミュニティーを貧困から脱却させる方法を見つけ出すために、インドネシアの田園地方の中心部で起こる焼き畑の問題と取り組んでいる。コミュニティーで活動していたアリア氏は、ボルネオ島中央部にあるセコンイェール村の農民が農地を拡大させるために周囲の森をどれほど焼いても、貧しさから脱することができない状況を痛感していた。

「悲しいことに、どんなに多くの資源を乱用しても、今でも貧困線以下のコミュニティーのままなのです」と彼女は話した。

そこでアリア氏は、もっと環境に優しく、農作物の質と量を向上させるメリットもあるような農法を模索する決心をした。その結果、誕生したのがForest Farming project(森での農業プロジェクト)だ。セコンイェール村の人々と共に、農業の知識を深め、よりよい土地管理法を探すプロジェクトである。

アリア氏によると、このプロジェクトで大事なのは、地元の知恵を育み、コミュニティーの行動を促進し、村の持続的な関与を育成する点だという。アリア氏や彼女のチームと共に農法を変える活動に熱心に取り組んでくれる先住民族の人々の姿勢こそ、彼女たちが変化を生み出しつつあるリアルな兆候だ、と彼女は言う。

気候チャンピオンの福島宏希氏は、国内の教育機関に「Climate Campus Challenge(エコ大学ランキング報告書)」を発行している日本の学生によるネットワークに参加している。教育部門における温室効果ガスの排出を削減するため、学生たちは再生可能エネルギーの利用やキャンパス内の建物の改装、環境に配慮した製品の購入を大学に働きかけ、その成果に従って大学をランクづけするのだ。

「私たちは334の大学の環境対策を調査し、基準に従って評価しました。例えば学生1人当たりのエネルギー消費量、エネルギー消費量の減少、気候変動対策、学生への気候に関する教育、独自の対策などです」と宏希は話した。「そしてエコ大学ランキングを発表し、優れた環境対策や活動を行う大学に表彰状を送ると共に、大学での環境対策を促進するためにセミナーを開催しました」

宏希によると、1990年代以来、環境活動に参加する日本の学生数は増加し続けているが、気候変動に関するキャンパス内での取り組みに的を絞った活動は少ないという。この状況を改善するため、中心メンバーが海外のプロジェクトを調査し、活動例を日本で採用するにはどうしたらいいかを検討した。その後、様々な大学の学生たちに協力を仰ぎ、プロジェクトの実現に向けてネットワークを立ち上げた。

タイの気候チャンピオン、Panita Topathomwong(パニタ・トパトムウォン)氏はクール・バス・クール・スマイル・プロジェクト(Cool Bus Cool Smile project)を通じて、環境に関するメッセージを伝えようとしている。パニタは地域住民に、自家用車は車庫に置いて公共バスを利用することで温室効果ガスを削減するように働きかけている。都市部での二酸化炭素排出の大きな原因の1つは交通であり、自家用車の利用を控えれば、交通部門の環境への影響を抑えられるだけでなく、渋滞緩和というメリットもあると言う。

そこでパニタと彼女のチームは、バンコク大量輸送公社(BMTA)と運輸通信省の協力を得て、メッセージを広めるために市内を走るバス3台のデザイン・コンペを開催した。2009年4月、世間の注目を集める中、運輸通信省次官やBMTAのディレクター、在バンコク英国大使館の外交官、多くのメディア関係者が出車式に参列し、その後、飾りつけられたバスは3カ月間バンコクの街中を走った。

 

気候チャンピオンは、コミュニティーが抱える気候や持続可能性の問題に対処するための革新的なプロジェクトを開発する若い環境起業家たちだ。

「バスをすばらしいイメージに改装したことで、バンコクの多くの人々に気候変動に関するメッセージを伝えられたと信じています。バスはみんなに気候変動への関心を持ってもらう移動式の広告のようなものだったんです」とパニタは話した。

気候チャンピオンはクールだ

2008年以来、ブリティッシュ・カウンシルの気候ジェネレーション・プログラムは、気候変動の問題解決に関心を持つ世界中の12万人の若者と共に活動してきた。このプログラムを通じて、若者たちは気候変動の影響を何とか低減させるための草の根的なプロジェクトを立ち上げるチャンスを手にする。参加者たちは提案を実現し各自のコミュニティーで問題に対する関心を広めるために必要な研修や資金を与えられる。

気候ジェネレーション・プログラムは、気候変動の対策に関心を持つ若者たちがお互いにつながり、地元でできる対処法を見つけ出し、地域や国や海外の意志決定者たちに意見を伝えることを促進する。

このプログラムに参加する者は気候チャンピオンとして、コミュニティーで議論を活性化したり、人々が気候変動に適応したり、その影響を低減したりできるようなプロジェクトの立ち上げに必要な研修や情報を得ることができる。その結果として、熱意にあふれた若者たちが世界的なネットワークを形成した。彼らは気候変動に対処するための行動を起こし、人々の生活にポジティブな影響を及ぼすための知識や人脈、具体的な情報を持っているのだ。

気候チャンピオンのバックグラウンドは、政府、ビジネス、起業家、NGO、教育、メディアなど、実に様々だ。彼らはコミュニケーションや交渉に関する研修を通して、いかに計画を実行に移して、自分たちと同じ世代の人々の関心を呼び起せるかを学ぶ。

気候チャンピオンの行動の方がCOP16の結果よりも進んでいることは明らかだし、彼らは「みずから行動を起こしている」が、カンクン会議において本当の意味で前進できることを望んでいるのだ。

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本プログラムに関する詳細は、ヒュー・オリファントまでご連絡ください。

翻訳:髙﨑文子

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