地域住民の管理が森林破壊を食い止める

国際林業研究センター(CIFOR)によると、イングランドとほぼ同じ面積に当たる1300万ヘクタール(3200万エーカー)以上の森林が、世界全体で毎年消失している。世界で管理されている森林のうち、地域住民が管理する森林は今では8パーセントを占めており、ラテンアメリカの森林では20パーセントにまで達している。

最近発表された研究によると、地元レベルで自主的に規則を制定する方が、よりよい森林管理と生活の向上につながるという。

『Forest Ecology and Management(森林生態学と管理)』誌で発表された新たな研究は、保護区とコミュニティー管理による森林の消失率を比較している。そして森林破壊の減少という点で、コミュニティー管理による森林は厳重な保護下にある森林と少なくとも同等か、時にはより優れていることが判明した。

国際林業研究センター(CIFOR)によるプレスリリースで、論文の共同執筆者でありCIFORの上級科学者であるマニュエル・ガリグアタ氏は次のように述べている。

「森林をフェンスで囲って『保護区』に制定しても、その林冠面積は地域住民が管理する森林と比べて必ずしも長期的に維持されるわけではなく、実際にはより多くの林冠が失われているということが、我々の研究結果によって示唆された」

「地域住民による森林管理が適切に行われれば、長期的にはメリットが期待でき、結果的に保全活動への参加の拡大、貧困の減少、経済生産性の向上、森林に生息する多くの種の保護につながる」とガリグアタ氏は語った。

Community managed forests and forest protected areas: An assessment of their conservation effectiveness across the tropics(コミュニティー管理による森林と森林保護区:熱帯における保全効果の評価)」と題された研究論文は、ラテンアメリカ(11カ国)、アフリカ(2カ国)、アジア(3カ国)の計16カ国における40の保護区と33のコミュニティー管理による森林を扱った査読済みの諸研究を比較している。

保護区では1年当たり平均1.47パーセントの森林が消失しているのに対し、コミュニティー管理による森林では1年当たりわずか0.24パーセントしか消失していなかった。

論文の中で筆者たちは、厳重な森林保護(「要塞型保全」モデル)に替わる選択肢に注目すべき理由として、次の3点を挙げている。

  1. 「厳重な森林保護区の制定によって地元住民は甚大な社会的および経済的コストを被ることが、経験的実証によって示唆されている」
  2. 「最近の調査によると、(統計学的に)交絡変数を統制した後では、厳重な森林保護が森林消失率を下げる効果は統制前の予測ほど高くないかもしれない」
  3. 「同じ地域にある、地元住民あるいは先住民が物品やサービスの生産のために管理している森林と、保護目的だけのため、あるいはより広範囲な森林ランドスケープとの関連で管理された森林を比較したところ、前者は森林面積の維持という点で(より効果的ではないまでも)同等の効果を持つことが証明されている」
  4. 同論文の目的は、森林面積の維持における効果を保護区とコミュニティー管理による森林で比較し、その2つの森林管理の違いを説明づける根本的な要因を評価することだった。筆者たちの仮説は「熱帯全域において、コミュニティー管理による森林の内部あるいはその周辺での森林消失率は、厳重に保護された森林と同等あるいは低いだろう」というものだった。調査の結果、彼らの仮説は支持された。

    興味深いのは森林破壊の根本的な要因だ。森林消失率の高い保護森林の70パーセントで人口増加による影響が認められたのだ。

    森林付近でのインフラストラクチャーの建設や経済活動(例えばコスタリカやジャマイカにおけるコーヒー生産)は、森林破壊に直面した保護区の55パーセントで問題となっている。2つの保護区(インドネシアおよびメキシコ)では、商業的な林業や木材市場が森林破壊の原因となっている。

    保護区のほぼ半数で、森林面積が維持されているか、拡大していた。そうした事例のほとんどは「インフラストラクチャーの建設、人口増加の影響、農地の拡大、牛の放牧、開発政策、市場といった条件がないことが特徴である」と論文の筆者たちは述べた。一方、コミュニティー管理による森林のうち60.6パーセントは、森林面積が維持されているか拡大していた。


    “たとえ森林破壊の要因が存在しても、コミュニティーが管理する森林では面積を維持することが可能だということをメキシコのエヒードは実証している。”

    筆者たちは、森林破壊の根本的原因は必ずしもすべての事例で森林破壊をもたらしているわけではないと記している。例えば次のような例がある。

    「(メキシコ)キンタナ・ロー州のコミュニティーが管理するエヒード(共有農地)では、インフラストラクチャーの建設、人口の増加、農地の拡大、開発プログラムといった森林破壊の要因は1年当たりの森林消失率の増加に必ずしも結びついていない。その主な理由は、コミュニティーには森林管理に関する作業規則があるからだ。たとえ森林破壊の要因が存在しても、コミュニティーが管理する森林では面積を維持することが可能だということをメキシコのエヒードは実証している」

    特にコミュニティー管理による森林の減少に関する調査結果は、過去のケーススタディーに限った結果であることを論文の筆者たちは認めている。査読済みのケーススタディーは数が少なく、アフリカの森林破壊に関するケーススタディーは特に少ない。また、「選択バイアス」が生じている可能性もある。すなわち、研究者がコミュニティー管理による森林の成功例を選んでケーススタディーに使用しているのかもしれない。もう1つ考えられるバイアスは、保護区に制定される場所はそもそも森林破壊の恐れが高い森林だという点だ。コミュニティー管理による森林の方が森林消失率が低かった理由は、森林破壊の恐れが保護区よりも深刻ではなかったからかもしれない。

    もう1つの問題は、コミュニティー管理による森林は脆弱である点だ。たとえ「紙で作った立体模型」程度にせよ、国の森林管理局は保護区を調査し記録している。森林が少しでも破壊されれば今後の調査で明らかになるだろう。

    一方、コミュニティー管理による森林の場合、その管理や領域について何らかの情報を持っているのは地域住民だけである可能性が高いため、パーム油の会社がブルドーザーを送り込んだ場合、森林とその管理システムはほとんど跡形もなく消えてしまう。

    それは地域住民や管理システムが悪いのではなく、それらを認識しない森林管理当局とパーム油会社の怠慢である。

    森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減(REDDプラス)の気候変動メカニズムに何十億ドルもの資金が投入され、発展途上国の森林保護活動に当てられている。論文は、森林破壊を低減し、森林の持続可能な利用を促進する上で、コミュニティーによる森林管理はコスト効率がより高く、効果的な方法である上に、地域住民の暮らしを向上させるという恩恵もあると示唆している。

    「保護区の拡大が進められてきた数十年間を経た現在、人権に関する配慮や公平性を森林管理の方針に取り入れる必要性は疑う余地もない。REDDプラスの枠組みは、森林破壊を減らすための地域住民の役割を認識する機会をもたらす可能性がある」と論文の共同執筆者であるガリグアタ氏は述べた。

    「可能性がある」という用心深い言葉遣いに注目していただきたい。森林管理における地元住民の役割は認識されなくてはならない。しかし森林破壊の根本的原因、例えばパーム油会社とブルドーザーの問題も私たちは解決しなければならないのだ。

    この記事はREDD Monitorに掲載され、クリエイティブ・コモンズのライセンスを付与されたクリス・ラング氏による記事の修正版です。

    翻訳:髙﨑文子

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地域住民の管理が森林破壊を食い止める by キャロル・スミス is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.
Based on a work at http://www.redd-monitor.org/2011/08/30/new-research-shows-community-managed-forests-have-lower-rates-of-deforestation-than-protected-areas/.

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著者

キャロル・スミスは環境保護に強い関心を寄せるジャーナリストで、グローバル規模の問題に公平かつ持続可能なソリューションを探るうえでより多くの人たちに参加してもらうには、入手しやすい方法で前向きに情報を示すことがカギになると考えている。カナダ、モントリオール出身のキャロルは東京在住中の2008年に国連大学メディアセンターの一員となり、現在はカナダのバンクーバーから引き続き同センターの業務に協力している。

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