持続可能な開発のカギは教育

私たちは持続可能な開発の分野において、重大な局面を迎えている。10月末、世界の人口は70億人に達した。だが、その数字自体は大きな意味を持たないとも言える。本当に懸念されるのは、世界的な人口増加の速度が急激であることだ。

私が生まれた頃と比べると、世界の人口は倍以上に増えている。歴史上、これほど若い世代の人口が多かったことはない。人が増えれば、使う資源も増えるが、そうした資源は急速に枯渇しつつある。国連食糧農業機関の予測によると、2025年までに、絶対的な水不足の問題を抱えた国や地域に住む人の数は18億人に達する。食料、鉱物、その他の自然資源に目を向けても、問題は同じだ。

脅しのように聞こえるかもしれないが、必ずしもそうではない。実際には、地球はさらに数十億人もの生活を支えることができる。ただしこれは、人々が資源の生産と消費について健全な選択をすることが条件だ。さて、ここで問題の核心に移ろう。私たちはどうすれば、正しい選択をするように個人や組織、政府を説得して、私たち全員にとっての持続可能な未来にたどり着けるのだろうか?

カギは教育だ。教育には変革をもたらす力がある。適切な情報と教育を提供すれば、人々の価値観と行動は変わり、より持続可能なライフスタイルが取り入れられるようになる。写真:Sachiko Yasuda – UNU-IAS

カギは教育だ。教育には変革をもたらす力がある。適切な情報と教育を提供すれば、人々の価値観と行動は変わり、より持続可能なライフスタイルが取り入れられるようになる。写真:Sachiko Yasuda – UNU-IAS

私は環境にかかわる仕事を始めた当初から、この問題を解くカギはきわめて単純だと思っていた。持続可能な未来を確実にするには、年齢も地位も問わず、すべての人々が私たちの環境に対してもっと責任感を持って考え、行動し始める必要がある。しかし、万人にこれを求めるには、その前に確実にしなければならないことがある。それは、人々が正しい選択と誤っている選択を区別できるようになること、そして、どのような選択をしようとも、それを成し遂げるのに必要な情報とスキルを持っていることだ。

カギは教育だ。教育には変革をもたらす力がある。適切な情報と教育を提供すれば、人々の価値観と行動は変わり、より持続可能なライフスタイルが取り入れられるようになる。教育はまた、世界で非常に多くの人たちが苦しんでいる貧困・栄養不良・病気という悪循環を断ち切ることもできる。

持続可能な開発における教育の力は、国連総会が2005年から2014年を、国連持続可能な開発のための教育の10年として宣言した時、その中核に据えられていたものである。この10年の成果として、教育は持続可能な開発を実現するのに不可欠な要素であるという事実に注意が向けられるようになった。そして、この10年が終わりに近づくにつれて、関係者である私たちの多くは今後のことを考えている。

11月、私はオランダで、持続可能な開発のための教育に関わる専門家が集う国際会議に出席した。 参加していた専門家は、持続可能な開発のための教育に関する地域の拠点(Regional Center of Expertise: RCE)を正式名称とする世界的ネットワークの代表だ。89ヵ国に広がるRCEネットワークは、力を合わせて持続可能な開発のために革新的なアプローチを策定しようとしている。これらのアプローチが実行に移されれば、次の段階として、持続不可能な開発活動に実行可能な代案を示せるようになる。なお、この会議には、UNDPおよびUNESCOの代表者、ヨーロッパ、アジア、米国の地方自治体首長、オランダ前首相のヤン・ペーター・バルケネンデ氏なども参加していた。

この会議が特別な意義を持つのは、さまざまなステークホルダーが参加して一堂に会する、数少ない機会の1つだからだ。地方自治体、コミュニティ、産業界、学術界などを代表するステークホルダーはいずれも、持続可能な開発を実現するうえでボトムアップのアプローチを重視している。目標を達成するには、そのような草の根のアプローチが欠かせない。というのは、私たちが人々に何をすべきだと言ったところで、その行動を変えることはできないからだ。彼らにとって何が重要か、それぞれのコミュニティにおいてどんなことが共感を持たれるのかを知る必要がある。そして、今年度の会議の成果が、RCEネットワークと持続可能な開発にかかわるすべてのパートナーが共有するビジョンと戦略の策定の一助になれば良い。これができれば、この10年の区切り、そしてその先に向けて、さらなる協調が確実になるだろう。

その一方で、私は皆さん一人一人に協力を求めたい。持続可能な開発のイニシアチブに教育は不可欠な要素であるという認識を高めるために、それぞれの役割を果たしていただきたいのである。持続可能な開発のための教育の実施は、分野を超えて取り組むべきものであり、教育や学習をあらゆる種類やレベル、状況において実現するには、高いレベルの政府の支援や政治的な意思が必要になる。ただちに行動を変えることが、将来の世代の権利、健康、福利につながる。それを確実に実現する責任を、私たちは共同で担っているのだ。

この記事は Huffington Postで公表されたものです。

翻訳:ユニカルインターナショナル

All Rights Reserved

ディスカッションに参加しよう

著者

竹本和彦氏は国連大学高等研究所のプログラム・ディレクターおよびシニア・フェローであり、日本の環境省参与も務めている。現在、持続可能な開発のための教育の10年の国連機関間委員会を率いる。これまでに、環境省地球環境審議官(次官級)、環境省環境管理局長、生物多様性条約第10回締約国会議議長代行、OECD環境政策委員会副議長などを歴任している。

ディスカッションに参加しよう