ゴミのことで眠れない人のために

飛躍的な人口増加が多くの問題を引き起こすことは誰でも知っている。70億人の人々が地球を動き回る今日、今後増える人々とその子孫をどうやって食べさせていくのかを考えると、夜も眠れない環境保護論者もいる。しかし、70億人以上の人々が出すゴミについてはどうだろうか? 私たちのゴミは結局、どこに行きつくのか?

私の友達(仮にハイディとしておこう)は不眠症に悩まされている。すでに過剰な負担を強いられている地球上の生態系に押し寄せる、増え続ける廃棄物の量のことを考えるからだ。ハイディがゴミに神経を使うようになったのは、1980年代にサンフランシスコに引っ越してからだった。彼女はルール化されたリサイクル活動と出会い、消費や包装や廃棄物の深刻な問題があることに気づいた。

ところで、ハイディの祖父母は、1804年に彼女の家族が建てたニューイングランド地方の家で、長持ちするように作られた当時の家具に囲まれて暮らしている。当時の家具はゆりかごからゆりかごへという再循環の発想で作られたわけではなく、単に耐久性に優れているのだ。ハイディの祖母は毎年クリスマスになると、緑色をしたポリエステル製の同じパンツスーツを身につける。この習慣を45年間も続けているのだ! 「少ないことは豊かなこと」という彼女の家族の信念のおかげで、ハイディは自信を取り戻した。彼女は倹約を高潔なことと考えている。それはかつてのアメリカ人が資源の賢い使い方に対して示した考えと同じだ。すなわち、資源を賢く使うことは本当の意味での倹約であり、倹約をケチと結びつける今日のネガティブな連想とは異なる。

私たちが出すゴミの量についてハイディが取り乱すのも無理はない。1人のアメリカ人が1日に出す個人的なゴミの量は、平均4.5ポンド(2.04キロ)だ。年間にすると1人1642.5ポンド(745.02キロ)になる。そのゴミをどれほど圧縮したとしても、美しい光景とは言えない。一方、フランス人が出すゴミはアメリカ人の7分の1だが、フランスでさえ世界のゴミ排出国トップ10の最下位にランクインしている。

埋め立て地に廃棄されたゴミは圧縮されているため、微生物が分解活性や栄養循環を行うために必要な酸素や土壌がない。ゴミ研究者(そう、ゴミ研究学という学問が本当に存在するのだ)が埋め立て地を掘り返すと、文字を判読できる50年前の新聞や原形をとどめたままの20年前のホットドッグが出てくるそうだ。つまり、あなたが生物分解可能な製品を購入しても環境への影響はまったく問題がないと製造業者が請け合う場合、それはウソなのだ。

アメリカ人が1年間に使う使い捨ておむつをつなぎ合わせると、月と地球を7往復できる長さになる。

埋め立て地はいずれすてきな娯楽エリアに生まれ変わるという発想は、理想主義的な1970年代の作り話だ。私たちのゴミはそこに置かれたまま、浸出液(有毒な液体)に姿を変え、埋め立て地の土壌へ染み出ていき、場合によっては地下水を汚染する。埋め立て地はメタンと二酸化炭素を吐き出し、温室効果ガスを増やす。

私の手元にある環境生物学の教科書には、アメリカのゴミにまつわる習慣に関するさまざまな情報が掲載されている。例えば、アメリカ人が1年間に使う使い捨ておむつをつなぎ合わせると、月と地球を7往復できる長さになる。アメリカ人は返却不要の(ただしリサイクル可能な)プラスチック製ボトルを1時間に250万本、廃棄している。ビニール袋は1秒間に3200枚、捨てている。食料は1年間に2700万トン、廃棄している。

ゴミとの新しい関係

私たちの多くは熱心にリサイクルしている。しかし統計を見てみよう。アメリカ人は世界人口の5パーセントに満たないのに、世界のe-wasteの半分を排出し、固形廃棄物の33パーセントを排出しているのだ(ハイディがこれを読んでいなければいいのだが)。

スロベニアの哲学者であるスラヴォイ・ジジェク氏は、ゴミとの新たな関係を築くことを私たちに強く勧めている。ゴミは、資本主義的で消費主義的で過剰に資源を利用する現代文明が未来に残す最も耐久性のある遺物になるだろうと彼は主張する。ジジェク氏ならハイディに、映画「博士の異常な愛情」のように、心配するのをやめて水爆(彼女の場合はゴミ)を愛するようになれとアドバイスするだろう。

私が暮らすサンタモニカ(カリフォルニア州)は廃棄物ゼロ、つまり埋め立て地に廃棄されるゴミを2020年までにゼロにすることを目指している。人口わずか9万2000人の街だから、廃棄物ゼロは実現可能だ。環境上の恩恵は明らかだし、エネルギー面での利得は言うまでもない。私たちが廃棄する2700万トンの食料は分解し、メタンを放出する。メタンは活用されなければ、地球温暖化の一因となる強力な温室効果ガスとなる。

ハイペリオン廃水処理施設は、大都市ロサンゼルスから排出される下水のほとんど(1日4億5000万ガロン)を処理している。この施設は嫌気性消化処理という方法でメタンを回収することにより、必要なエネルギーの85パーセントを処理した廃水から得ている。サンタモニカで廃棄された食料はハイペリオンに送られ、メタンガスに変換される。つまり、あなたが自宅で栽培するおいしいトマトの堆肥に活用できなかった食べ物は、自宅の電球型蛍光ランプを照らす電力になる。ウィン・ウィンの状況だ。

アメリカ軍は環境に優しいゴミの廃棄方法を考案しなければならない。なぜなら、軍の有毒廃棄物を開放型の焼却炉で焼却すると兵士たちの具合が悪くなるからだ

特に毒性の強い廃棄物を再利用可能な物質に変換するには多くのエネルギーが必要である。しかしプラズマ・アーク・ガス化(PAG)という方法なら実現可能だ。この方法は、廃棄物を太陽の表面と同じ温度で焼却する。廃棄物の一部は分子レベルにまで分解され、合成ガス(シンガス)として知られる副産物を生む。シンガスは天然ガスよりもクリーンだ。

なぜなら究極的に言えば、リサイクルというのは必要な手法ではあるが、エネルギーを必要とする補助的な解決策でしかないからだ。

すばらしいのは、シンガスそのものが処理過程のエネルギー源になるという点だ。さらに、従来の焼却方法よりプラズマ・アーク・ガス化が優れている点は、ダイオキシン類(あらゆる物質の中で毒性が最も強い)を実質的にまったく放出しないことだ。ダイオキシン以外の物質の排出量も少ない。

アメリカ空軍の環境科学者であるデヴィッド・ロバウ氏は、都市ゴミの廃棄にも優れた方法としてPAGを勧めている。日本の歌志内市はPAGを使って、1日当たり150トンの廃棄物をエネルギーに変換している。ネバダ州リノでは、1日400トンのゴミを処理する世界最大のプラズマ・ガス化ゴミ処理施設が建設される予定であり、2014年までに操業される見通しだ。

環境保護論者の中にはプラズマ・ガス化に警戒を示す者もいる。この処理方法によって、どっちつかずの意見を持つ人々が過剰消費やずさんなリサイクル習慣を続けることが可能になってしまうと言うのだ。しかし、私はゴミをエネルギーに変えることは非常に賢明だと思う。なぜなら究極的に言えば、リサイクルというのは必要な手法ではあるが、エネルギーを必要とする補助的な解決策でしかないからだ。

一方で、私たちが簡単に取り入れられる強力な折衷案がある。まず、使用する物の数を減らし、それぞれをもっと長く使うようにすることだ。ハイディのおばあちゃんにとっての緑色のパンツスーツのように、あなたもワードローブの中からお気に入りを探してみよう。倹約を再びクールな習慣にするのだ。

なぜなら、本当のところ、資源を賢く使うローテクな戦略があれば、まずはゴミを減らせるのだ。その次に、嫌気性消化処理という中程度のテクノロジーを使って有機廃棄物を変換し、さらにハイテクなPAGを使って危険な有毒廃棄物を処理すればいい。こうしてできあがった閉じたループのエネルギーシステムを考えてみてほしい。ハイディは安眠できるようになるだろう。

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ゴミのことで眠れない人のために by ベリンダ・ウェイマウス is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

著者

ベリンダ・ウェイマウス氏は環境学の学位取得を目指す社会人学生である(合間にブログを書く時間も捻出しようとしている)。ニュージーランド生まれで、現在はカリフォルニア州サンタモニカ在住。ジャーナリズムとエンターテインメント業界に身を置いた経験があるが、今は、彼女自身にとっての持続可能なキャリアを築く道は、自分の娘、そしてすべての子どもたちのために、よりグリーンでクリーンな未来に向けて尽くすことしかないと考えている。