二酸化炭素は地球の未来を支える資源

二酸化炭素(CO2)を地球の気候に対する脅威と考えてはいけない。貴重な再生可能資源として考えるべきだ。これは今週、気候変動に関連する主要な問題を検討する2つの会議で科学者たちが発したメッセージである。

パリのピエール・マリー・キュリー大学の化学エンジニアであるジャック・アムルー氏によると、回収したCO2を再び役立てることが可能だ。燃料に転換すれば、エネルギー貯蔵の一形態として利用できる。プラスチックの製造にも利用できる。さらに地下に注入すれば、より多くの石油を回収したり、シェールガスを地表に押し出したりできる。

回収したCO2を利用する実験プロジェクトは、すでに実施されている。世界はますます多くの温室効果ガスを排出し続けるのを当分やめそうにないため、科学界と産業界は排ガスを何度も繰り返し利用する新たな方法を見つけるべきであると、アムルー教授はフランスのストラスブールで開催されたthe Fourth World Materials Summit(第4回世界材料工学サミット)に出席した若手研究者たちに話した。

彼の主張は、CO2は燃料サイクルの最終地点であるかもしれないが、同時にライフサイクルの始まりである、ということだ。生命体は非常に効率的にCO2からリグニン、セルロース、デンプン、糖を生み出す。それと同様に、余剰CO2から燃料あるいはその他の資源を再び作り出し、CO2を大気に排出させない産業的な触媒システムがある。

「私たちは炭素です。つまり生命体は炭素からしか生まれません」とアムルー氏は語った。「炭素は私たちに命を与え、食料を提供し、炭素貯留は私たちにエネルギーを与えてくれます。炭素は未来への鍵です。それは廃棄物ではありません。CO2は木を育て、糖を生み、私たちに穀物を与えてくれます。CO2がなければ、この地球上でどんな種類の食料も手に入れることができないのです」

このサミットは、持続可能なエネルギーと気候変動を含む世界の課題に取り組むために、欧州材料工学会が企画した。

壊滅的な結果

世界は気候変動を顧みないので化石燃料を燃やし続けるという従来のシナリオを、アムルー氏は提示していない。気候変動は、洪水、干ばつ、熱波、破壊的な暴風といった壊滅的な結果を伴う問題である

しかし彼は厳然と、エネルギーを渇望する開発途上諸国は石油やガスや石炭を燃やすことで開発を推し進めるだろうと主張する。化石燃料は今でも多くの人々にとって、最も身近で、最も入手可能な資源だ。2010年、再生可能エネルギーが世界のエネルギーの中で占める割合は20パーセント未満であり、残りの80パーセントは化石燃料が占めていた。

つまり問題は、先進諸国(国民1人当たりのエネルギー消費量は貧困諸国の7倍以上)が、エネルギー利用の効率性を高める新しい方法を見いだし、活用できるかどうか、また、大気への負荷を増やすことなく、回収されたCO2を活用するための経済的に魅力的な方法を見つけられるかどうかだ。

アムルー氏はまず、再生可能資源による発電のオフピーク時に生産されたエネルギーを貯蔵する方法に着目した。CO2と水をメタンに変えて、電力需要が低い時間帯に風力や波力や太陽エネルギーを貯蔵しておく電池として機能させるのだ。彼はまた、超臨界溶剤としての液体CO2に着目した。石油をほぼすべて抽出してしまった油田に残留した石油を回収するために活用すれば、ポリウレタンなど炭化水素系製品の原材料の基盤として利用できると考えている。

中国の2カ所の製鉄所では、CO2をエタノールに変えている。アイスランドでは、ある企業が排出CO2からメタノールを生産する事業に巨額の投資を行った。ドイツと日本では、再生可能エネルギーを利用して、エネルギー貯蔵方法として温室効果ガスをメタンに変える試みが行われている。アムルー氏は、新たな産業革命のチャンスだと語った。

豊富な資源

一方、ドイツのエッセンで今週、もう一つの会議が開催された。有益な資源とビジネスチャンスとしてのCO2の議論が行われ、CO2を化学産業のための供給原料やプラスチック製品の原材料として利用する最新技術が深く考察された。

欧州化学工業連盟(CEFIC)の研究革新部門の常任理事であるゲルノット・クロッツ博士は、私たちがCO2に対する考え方を変える必要性を強調した。彼は参加者たちに次のように語った。「例えば地下に埋めてしまうなど、CO2を捨てるべき廃棄物と見なす余裕は、ヨーロッパにはもうありません。私たちはCO2を、未来の再生可能資源として認識しなくてはならないのです」

そこで登場する新しい計画が、CO2の再利用だ。循環型経済における永続的な原材料かつ炭素源として、CO2をリサイクルするのだ。炭素回収および貯留(CCS)ではなく、こういった新しい技術は炭素回収および利用(CCU)と呼ばれる。

上記のような利用方法のほかに、CO2は人工的に光合成を起こすためにも利用可能だ。例えば発電所から生じる排ガスを利用して、油分が豊富な藻類を育てて、バイオ燃料に変えることができる。

持続可能な化学のための欧州技術プラットフォーム(SusChem)の役員会メンバーでもあるクロッツ博士は、CO2はヨーロッパが豊富に有する唯一の再生可能資源であり、ヨーロッパが競争力のある経済諸国として未来を築く上で重要な役割を担う可能性があると語った。

化石燃料が底をつき始めた時、CO2は重要な資源になると、科学者たちは考えている。

化学産業は生産サイクルに炭素原子を安定供給する必要がある。大気への流出を防ぐために回収されたCO2は、その必要性を満たすことができる。CO2が気候変動を引き起こすのを避けるためには、CO2を大気へ排出して「無駄にする」のではなく、何度もリサイクルしなければならない。

科学者たちによれば、地球上の生命体は30億年もの間、見事に繁栄し続けてきた。しかも、生命体は水と太陽エネルギーとCO2だけで生き延びてきたのだ。

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翻訳:髙﨑文子

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著者

ティム・ラドフォード氏は、フリーランスのジャーナリストであり、またボランティアのジャーナリストたちで構成された独立系 Climate News Network チームの一員でもある。ガーディアン紙にて通算32年間、レター、アート、文学、サイエンスでの編集を務めた。過去に4度のAssociation of British Science Writers award for science writer of the year受賞経験がある。