国際協同組合デーを自己陶酔的な単なる「世界デー」の一種として一蹴したい誘惑に駆られる読者がいるかもしれない。しかし協同組合は最近、さまざまな場所で誕生している。昔から協同組合がある国とそうではない国があるが、2012年には世界の組合員数は10億人に達した。このような人気の高まりは、資源や環境、社会および経済の不平等の問題への世界的な気づきと大いに関係している。さらに、こうした状況と強い関連を示すように、今年の国連テーマは「協同組合がすべての人のための持続可能な発展を実現する」である。
協同組合(コープ)の概念が少し分かりにくいという読者のために、ここでおさらいしておこう。コープの組織やイデオロギーの根源は極めて多様だが、コープは本質的に「共通の社会的、経済的、文化的利益のために自発的に協力する人々の自治的な団体」 と定義される。地域社会の非営利組織もコープであり、また次のような形態もコープに含まれる。
ハイブリッド型のコープも存在する。例えば労働者協同組合が消費者協同組合や信用組合を兼ねるタイプや、地域社会のニーズに応えるために市民社会と地域の関係者を結びつける複数のステークホルダーによる協同組合、また、他の協同組合を組合員とする2層や3層の形態の協同組合だ。
協同組合の歴史や多様性はとても興味深い。詳細に関心を持たれた方にはOur Worldに掲載された他の記事をぜひ読んでいただきたい。ここでは、協同組合に関連した世界各地の最近のニュースをご紹介する。
南アフリカの北西州は、州内の国有農園を地域協同組合と青年協同組合に分配することを先週誓約した。州議会に対する金曜日のスピーチで、スプラ・マフマペロ州知事は次のように語った。「政府が種子と用具を提供し、州立病院は必要な全ての物資を協同組合から入手します」この計画が軌道に乗るまでには長い時間が掛かりそうだが、注目に値する興味深い計画である。
優先事項の再検討を行ったもう1つのアフリカの事例がナイジェリアだ。先週、ラゴス州政府は州内の3000を越える登録済み協同組合を再認可し、未登録の協同組合には登録を促した。農業と協同組合を担当する行政長官は次のように語った。「現行の行政機関は継続的に協同組合を活用し、開発計画を実施してきました。例えば農業へのマイクロクレジット制度、改良された苗木の分配、キャッサバ、コメ、ココナツの栽培農家や漁業従事者への支援です……」
一方ヨーロッパでは、持続可能な発展というテーマにとって極めて適切な分野で動きがあった。先週ブリュッセルで開催された欧州連合(EU)持続可能なエネルギー週間の会合で、欧州委員会とエネルギー分野の専門家らが討議した。ヨーロッパ最大の天然ガス供給国であるロシアとの紛争がウクライナ情勢をめぐって引き続き緊迫した様子を見せている中、エネルギー依存性はEUの最優先議題となった。同会合で政府関係者らはEUに参考となる事例としてベルギーの再生可能エネルギー協同組合に注目したと、EurActiveは報告している。Ecopower(エコパワー)は、EUが一部資金を提供している協同組合で、再生可能エネルギーへの市民の投資を促進しており、誰でも株を購入してプロジェクトのメンバーになれる。およそ3万7000人の組合員を有し、11基の風力発電タービン、3基の水力発電装置、1基のバイオマス装置、270基のソーラーパネル設備を所有している。エコパワーは、Renewable Energy Sources Cooperative(再生可能エネルギー源協同組合、REScoop)と呼ばれる、ヨーロッパ中に点在する2700以上の再生可能エネルギー協同組合の1つである。
ヨーロッパから大西洋を渡ったアメリカでは、「People before Profit(利益よりも人を優先しよう)」運動が活発になりつつあり、労働者が所有する協同組合が定着し始めている。目立った事例では、雇用創出、蓄財と持続可能性、地域の人々の活用(アメリカで大きな割合を占める失業者であることが多い)に関連した革新的なモデルを実験的に実施している。Our Worldでは、作家であり政治経済学者(さらにデモクラシー・コラボラティブの共同創立者)のガー・アルペロビッツ氏の活動を取り上げたことがある。彼は、アメリカ経済を完全に変容させるような、資本主義に代わる実行可能な選択肢を協同組合なら提供できると考えている。このトピックに関心のある読者には、彼の著作をぜひともお勧めしたい。そして、彼の主張は事例によって実証され始めている。例えば、ミシガン州で600人強の従業員を抱える人気の食品会社、Zingerman’s(ジンガーマンズ社)は現在、伝統的なビジネスのヒエラルキーを廃する代わりに集団的な意志決定に重点を置いて、運営されている。また同社は今後数年以内に労働者協同組合に転向する予定だ。同社の型破りな戦略は成功しており、報道では今年度は5000万ドルの利益を計上する見通しである。
最後に紹介した事例は、ワールドウォッチ研究所の研究結果を裏付けている。それは協同組合に馴染みがない人々の多くが信じていることとは真逆かもしれないため、ぜひ周囲の人々に広めていただきたい。つまり、より一般的な事業とは違って、多くの協同組合は民主的ガバナンスを重視するため、財政的な困難に陥っていないという点だ。ワールドウォッチ研究所の報告書は、2008年、世界の大手協同組合300団体の総収益は1兆6000億USドルを超えたことを明らかにした。
翻訳:髙﨑文子
協同組合のある幸せな日 by キャロル・スミス is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 4.0 International License.