結束のルーツ

グアテマラに降り立った我々の目の前には、ちょうど仲の良い友達が両手を広げて迎えてくれているような地形が広がっていた。「森の国」という由来の通り、森林の天蓋が続き、郡葉が途切れると平坦な農地が姿を現した。

曲がりくねった山道沿いを通りかかると、農夫たちが仕事の手を休め、我々を歓迎するように手を振ってくれた。

このようにして、著者を含むステットソン大学の学生5人は昨年の夏、世界見聞を広め、人々の生活に役立つ仕事をするためにアメリカの小さな町をあとにした。グアテマラの草の根NPO国際森林再生アライアンス (AIR)と、1か月間共に活動することになっており、この団体の創立者であるステットソン大学の政治学教授アン・ハルムも同行した。

我々がここを訪れた理由。それは、一見緑豊かに見える傾斜地のとうもろこし畑で、グアテマラの農民たちが食糧需要にこたえるために、環境を犠牲にしている現状にあった。彼らの大半は焼畑農業を営んでおり、森林を伐採し焼き払うことで農地を確保し、大量の灰を肥料として活用している。

森林の代わりに、とうもろこしやその他の作物が丁寧に植えられていて、遠くから見ると素晴らしい眺めだ。しかし、これらの畑は年々グアテマラ人の生活を厳しくしていった。というのも、焼畑農業は平地向きの農法であり、山の傾斜地では全く違う意味を持つからだ。傾斜地での焼畑農法は、わずか2-3年間で表土を流し去り、土砂崩れを引き起こしている。

AIRは、様々な共同体に適した独自の農法を指導している。各土地に適した作物や樹木を選択し植え育てる自然の混作・複合型(ポリカルチャー)農業は、表土の流失を防ぎ、土壌を豊かにしてくれる。この農法は水の浄化に役立ち、化学肥料を必要とせず、山の傾斜地ではほぼ不可能な「持続可能な農業」を可能にしている。

各地域のニーズに対応した手助け

我々が現地に到着したのは、雨期の6月。AIRが、共同体で松や桃をはじめとする何千株もの苗木の植林を始めてから数か月が経った頃だった。我々の日課は、ピックアップトラックに乗り込み、苗床へ行き、それから村人と一緒に農地や森林伐採された傾斜地、土砂崩れにあった傾斜地に出かける、というものだった。AIRスタッフと村の農民たちに指導してもらいながら、我々はモンスーン並の雨期が訪れる前に、できるだけ多くの樹木の植林に精を出した。

アメリカの都会に住む文系の学生である筆者は、植林技術を心得ておらず、唯一役立ったのは、作業にあたった「両手」とこの仕事への「情熱」だけだった。生物学者、環境科学者、オペラ歌手、ユダヤ教のラビになるべく宗教学を専攻している学生たちから成る我々の共通要素は、この「やる気」だった。我々も植え方を早く学んだが、AIRスタッフや農家の人々、農家の子どもたちと比べると、スピードは遅かった。

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実際、我々にできたのは、植林にもっとも人手が必要な雨期に、農家の人々を手伝うことだけだった。我々はAIRスタッフの補佐として働き、スタッフに案内され、片言のスペイン語を話す先住民族の村々で、農作物の周りに防風林を植え、カクチケルまたはキチェと呼ばれるマヤ人の農家とその家族と協力して作業を行った。

植林の他にも、我々は共同体の指導者のために、燃費効率の良い4台のかまどを設置し、野菜を植え、現地の生徒や教師たちと共にAIRと提携している学校の改修をした。代表的なものに、草花、樹木、コーヒー農園から成るエコロジカル・ガーデンにある火山の山腹に位置する青空教室がある。

AIRとの共同作業を通じてわかったことは、世界の森林再生を進めるためにはトップダウンや強制的な変化では効果がなく、むしろ個々人、家族、共同体の協力がなければならないということだ。AIRへの支援の大半は、慈悲深い篤志家から寄せられているが、実際のフィールドワークは、農家の人々、村々、学校とパートナーシップを組んで教育や植林にあたっている熱心なグアテマラ人のグループが担っている。

これは有効な共同体ベースの取り組みで、グアテマラの文化的遺産と地域別のニーズを重要視した「森林再生と共同体の発展」という目標を強化するものである。

例えば、薪から出る煙削減のために、住民にソーラーかまどの普及を図った団体もあるが、人々はそれを使わない。薪は昔から伝わるグアテマラ先住民族の伝統であり、文化や信条と深い関わりがあるからだ。

しかし、薪を燃やすかまどは家族に健康被害をもたらしていて、特に1日中煙にさらされている女性と子供への影響は大きい。この問題に取り組むためAIRスタッフは、薪の消費や人体への被害が少なく、かつ伝統的な調理方法を維持できる換気煙付きレンガのかまどを設置した。AIRのかまどは、世帯あたりの年間薪消費を半分に 抑えることができるほどの効率だ。

ボトムアップは困難だが有効

世の中の多くの物事がそうであるように、森林再生や共同体の発展には、簡単な解決法はない。人々の協力、コミュニケーション、忍耐、そして重労働が必要とされる。

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15年前に活動を始めて以来、AIRはグアテマラとニカラグアに300万本以上の樹木を植林し、さらには1,600世帯の家族に持続可能な有機農法を伝授してきた。

また、AIRは700台以上の燃料効率の良いかまどを設置し、国連先住民問題常設フォーラムも、グアテマラにレンガのかまどを普及するため8,200米ドルを助成している。

もしグアテマラ中の全所帯が、この燃料効率の良いかまどを使って薪の消費量を半分に削減できれば、気候変動への影響は減るだろうか?農民が休閑地の移動にかける時間を短縮できれば、余暇時間にどのようなビジネスが生まれるだろうか?もしグアテマラ人が化学肥料を使わずに耕作することができたら、健康、経済、水事情はどのように変わるだろうか?

我々が辛抱強く、また広い視野で考えれば、上記のアイデアは実現できないわけではない。AIRの成功は、この小規模な団体が何本の樹木を植林したかに限られるものではない。AIRの真の成功とは、共同体が「自活地域」と宣言されてからも、各家族、村、学校が森林再生や教育に力を入れ、努力し続けるかどうかにかかっている。そしてAIRのスタッフは、要請を受けてまた次の村へと向かうのである。

筆者はと言えば、これまで出会った中でもっとも礼儀正しく、働き者かつ精神的な人々に刺激を受けアメリカに帰国した。そして深い洞察と教育と良好な人間関係に基づいた粘り強いボトムアップ方式で、世界規模の大きな課題をいくつ解決できるだろうかと思いを巡らせている。

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著者

ステットソン大学・宗教学科を卒業。ワシントンDC在住。