「Our World 2.0」 は国連大学が発信するウェブマガジン兼ドキュメンタリーシリーズだ。近年、深刻化する気候、原油、食糧、生物多様性をはじめとする地球規模の問題に焦点を当てて取り組んでいる。
これらの諸問題が引き起こす事態に、世界中の人々がかつてないほどの影響を受けることは明らかだ。誰も「自分には関係ない」などと言ってはいられない。グローバル化され相互につながり合うこの世界で、隔離された自由な生活を送ることはほぼ不可能である。
従来のやり方はもはや選択肢ではない。そのやり方で、我々の環境はこんなにも破壊されてしまったのだ。幸いなことに、現在そして来るべき世界的課題を解決すべく、さまざまな分野の専門家たちによる共同作業が始まっている。
我々が取るべきは、従来とは異なる新しい方法だ。我々は日々「我らの世界」を作り変えているが、今こそ、その方法を見直す素晴らしい機会であり、より良い世界を作るチャンスは心から歓迎すべきことである。
「Our World 2.0」は地球にとっての第二のチャンス。新たな物語であり、新たなストーリーだ。テクノロジーは偉大だが、すべての問いに答えてくれる訳ではない。むしろ課題は我々の意識にある。環境、経済、そしてテクノロジーについての考え方を、我々は根本から変える必要があるのだ。これについては長年議論されてきたが、一向に変わらなかった。今こそ、変革の時なのだ。
「Our World 2.0」 は「ウェブ2.0」の考え方からヒントを得ている。「ウェブ 2.0」を知らない方々のために、簡単に説明しよう。ワールドワイドウェブが生み出された当初、ウェブサイトのほとんどは、基本的に「自分たちについて」のみを掲載していた。初版のウェブは、インターネットユーザーに情報を押し付けていたとされている。ユーザーが何を探しているか、またユーザー側の意見には、ほとんど配慮がされていなかった。実のところ、それは情報を過保護に与えつづける実世界の、単なる反射像でしかなかったのだ。
「ウェブ2.0」は、共有と共同創造に基づく新たなバージョンのウェブで、その実例は多数ある。例えば、ブログを通して意見交換をするブロガーたち。ウィキペディアに執筆、編集、管理する人々。ユーチューブに動画を掲載する人々。フリッカーで写真を共有する写真家たち。目にするもの、興味をそそられるもの、気に入ったもの、気に入らなかったもののすべてを論評する人々が、何百万といる。
今や、すべてが接続可能で、より多くの事をより簡単にできるのだ。ビデオはここから、写真はあちらから、ニュース画像は別のサイトからと、ウェブのさまざまな情報源から、コンテンツを取得することが可能だ。自分のサイトをセットアップさえできれば、大勢の人々があなたのウェブサイトを訪れ、コンテンツを取得する。それはまさに巨大な、相互に連結し合う生きたウェブなのだ。
「ウェブ 2.0」は、我々の物事の進め方にも、多大な影響を及ぼしている。音楽からヒトゲノムまで、さまざまな分野でたくさんの人々が互いに協調し合い、コンテンツや知識の共同創造に取り組んでいる。これはほんの始まりにすぎない。
知識の共有と共同創造というこの驚くべき変革が、気候、原油、食糧、生物多様性の問題解決に役立つとしたらどうだろう?しかし、これはマウスボタンをクリックして解決できる魔法などではない。我々が望むような幅広い変化をもたらす、効果的な生かし方を見つけるには時間がかかるだろう。
国連大学はウェブマガジンやドキュメンタリーシリーズを通じて、今後求められる様々な変化や、今「我らの世界」を再構築している真只中で起きている変化の意味を明らかにし、みなさんと共に理解を深めていきたいと考えている。
私たちは、リサーチと確かな証拠、親しみやすく分かりやすいに言葉遣いに根ざしたジャーナリズ的スタイルを導入した。この新たな試みを通じ、みなさんとの対話を深めたい所存だ。
アイデアや経験を共有したい人なら誰でも、「Our World 2.0」に投稿することができる。
京都議定書の二酸化炭素排出削減目標を達成するまで、およそ4年が残されている。これらの削減目標に到達するためには、極めて劇的な変化が必要と言えよう。たとえ目標を達成できなかったとしても、私たちはその変化を追跡し、そこから学びたいのだ。
原油価格は先ごろ1バレル140ドルの大台に達し、その後も高騰を続けており、近い将来200ドルに達するとも言われている。これは、過度に原油依存する経済に、多大な影響を及ぼしている。
多くの国々は、安価な輸入食糧品に頼っている。しかし、これは持続可能なのだろうか?カーボンフットプリントとは何なのか?高騰する原油価格は、食糧輸送に影響を及ぼすのだろうか?気候変動の影響は?農地をバイオ燃料生産地へ移行させるとどうなってしまうのだろう?
また、既に気候変動の脅威にさらされているバイオ燃料および単一栽培による農産業は、地球の生物多様性に対し負の影響を与えている。
発展途上国では、事態は極めて不安定だ。個人世帯の可処分所得は非常に低く、食糧価格のわずかな変動が、深刻かつ急速な影響を及ぼすことがある。
これらの事実から分かるように、気候、原油、食糧安全保障、生物多様性の諸問題は、今後何十年にも渡り、一段と我々の懸念を深めていくことだろう。
そして将来、みなさんと共に、最適なグローバル・ライフスタイルを目指す、未来版「Our World2.0」を設計してみたいというのが私たちの願いである。
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