オーストラリア北東部の熱帯地方に位置するシップトンズ湿地帯で、ククニュングカル族のマリリンは夫とともに暮らしている。
彼らはここで、現代生活のサービスや利便性を享受することなく、伝統的暮らしを送っている。
先祖の慣習に習い、マリリンは「ニュングカルの土地」を歩いて、周囲の魂を感じ、会話をすることを日課としている。
彼女が挨拶するのは、水源である小川の精霊、彼女が生まれる前からこの土地を守ってきた両親と祖父母の魂、岩と化した先祖の霊、木陰となり、日々の糧となってくれる木々や動物の霊だ。
気候の変化
マリリンは、気温の変化を肌で感じているという。気温上昇は、ニュングカルの自然摂理に変化を及ぼしている。動物たちは高地へと移動し、流れある河川は停滞し、淀みつつある。
「この土地は変化しつつあり、食糧も減ってきている。動物たちが高地に移動してしまったら、いつか空に消えてしまうかもしれない。」とマリリンは懸念している。
彼女が感じている「変化」。それはすなわち、科学者が言うところの「地球温暖化」で、20世紀半ば以降の大気や海水の平均温度の増加を指す。
2005年までの過去100年間で、地表が0.74 ア 0.18℃上昇し、生物気候学者は2070年までに1.1~4℃の上昇を予測している。
どういう意味か?
地球温暖化は、海面上昇、洪水や干ばつを引き起こす降水量の変化、異常気象の発生頻度の増加、生物多様性への脅威などの、大規模な変化を及ぼすと予測されている。
シップトン湿地帯のようなオーストラリアの湿潤熱帯地帯では、気温が4.5℃上昇すると、固有脊椎動物の約65%が消失すると言われている。(熱帯湿潤地帯管理委員会の熱帯湿潤地帯レポート2007-2008を参照)
マリリンも「気温が暑くなってきているので、このままでは動植物がいなくなってしまう」と懸念している。このまま気温上昇が続ければ、自然の調和が乱れ、精霊が消えてしまうだろう。
地球温暖化はシップトン湿地帯を脅かすだけではない。近年、マリリンの家の近くに、鉱山が開発され、ダムも建設された。人口湖周辺の木々は枯れ始め、マリリンは動物や鳥たちが「汚水」を飲まないようにと日々奮闘している。
私たちにできること
この後、人口湖を後にしたマリリンは、この土地が破壊されることに対する、深い悲しみの胸の内を語ってくれた。
「私たちは万物の世話をする責任があり、すべての人々が結束しなければならない。いま私たちが協力して声を上げなければ、私たちの土地はすべてを失ってしまうだろう。我々の土地、我々の民、我々の精零は、病にかかってしまうだろう。」
我々人類が抱き続けてきた「進歩、開発、改善」への探求心は、自然との協調を図りづらくしてきた。
21世紀における環境変化の課題。 それは、アボリジニ文化のように、自然の移り変わり、色や音色に耳を傾け敬意を払えるよう、我々の認識を明確に変えていくことだろう。
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本ビデオと記事は、「先住民の気候変動アセスメント」を補完するものであり、国連大学伝統的知識イニシアチブの一環である。このイニシアチブを支えるクリステンセン基金の支援に感謝する。
リンク:
TKI – 先住民の気候変動アセスメント
気候変動に関する先住民のグローバルサミット