望んだのは 肉とソーダだけ なのに

食料価格の高騰が世界中で再びニュースになっている。ごく少数の幸運な人々は、まだ物価上昇の影響を感じずに暮らせているかもしれない。しかし、そのような幸運に恵まれなかった人々も大勢いる。

ウガンダ人ジャーナリストのマクリン・ビルンギ氏よる以下の報告書は、クリスマスの準備をするウガンダ国民が直面した経済問題を取り上げている。ソーダや肉、野菜の価格が高騰し、自国通貨であるシリングが下落し続ける中、多くのウガンダ人が普段よりも質素なクリスマスを強いられた。この報告書は、社会から取り残された人々の議論への参加を推進するパノス・ロンドン(Panos London)に寄せられたものである。

祝祭日の苦難

一般的に見て、ソーダを飲むことを贅沢とは呼ばないだろう。しかし、多くのウガンダ人、とりわけ農村部に暮らす人々にとって、ソーダはクリスマスなどの特別な日にだけ飲む最高の贅沢品なのだ。ウガンダ農村地域の住民は、新しい洋服とソーダでクリスマスを迎える(多くの場合、洋服は年に一度しか新調しない)

農村部の人々の多くは現金をほとんど持っておらず、生活は自分たちの育てた農作物で成り立っている。そんな彼らにとって、一本のソーダはシャンパンやコニャックにも等しいのだ。

しかし、昨年のクリスマスは、農村部を中心とした多くのウガンダ人家庭が食料難に苦しんだ。食料価格が上昇する一方で、アメリカドルに対するウガンダシリングの価値が大幅に下落したのだ。

1年前、1本500シリングだったファンタは、現在ウガンダの首都カンパラの商店では800シリングで売られている。これにクリスマスシーズン特有の値上げが加わる。商売人たちは、クリスマスにみんながソーダを飲むことを知っているのだ。

センチュリー・ボトラーズ・プロモーションズの経営者であるケネディ・ムテーニョ氏は、ここ3年間のウガンダ通貨下落により炭酸飲料の原材料費が上がり、飲料メーカーは商品の値上げを余儀なくされていると指摘する。ソーダ飲料1ダースの価格は、昨年同時期の15,000シリングから17,000シリングまで上昇した。大した値上がりには見えないかもしれないが、多くの国民の収入が横這い、もしくは減少している現状では、年に1度の贅沢を躊躇する家庭も多い。

ムテーニョ氏は、継続的なドル高が清涼飲料水メーカーを苦しめていると言う。なぜなら、ソーダ飲料に使われる原材料の98パーセントが輸入されているからだ。

ウガンダ通貨の価値下落と干ばつの影響で、ウガンダ経済は疲弊している。輸入業者はシリング安とドル、ポンド、ユーロを含む外国通貨の高騰に苦しみ、その結果、輸入が縮小する。現在の為替レートは1ポンド3,600シリング、1ドル2,280シリングだ。1年前、1ドルは2,073シリングで取引されていた。

スタンビック銀行総裁のイヴォンヌ・マンゴ氏は、シリング下落は、金融恐慌によって世界中の金融市場で不安が高まった2008年に遡ると指摘する。投資家はウガンダのようなリスクの高い新興成長市場への短期投資を引き揚げ、金や米国債への投資に切り替えている。

EU諸国向けの輸出需要の急落により、ウガンダの輸出収入は落ち込んだ。海外からの投資や財政援助の後退に加え、NGOから支援や送金の減少もウガンダ経済や通貨に打撃を与え続けた。

地元のマーケットで売られている生活必需品の価格も、全国的に20パーセント近く上昇している。さらに、ウガンダのクリスマスには欠かせないごちそう、ロースト肉の価格も上がっている。

クリスマスのごちそう

家畜を持たない農村部の家庭では、12月24日がやって来ると自転車にマトケ(グリーンバナナ)の束を積み込んだ家長がマーケットに向かう。マトケを売ったお金でお肉やその他必要な物を買うためだ。あるいは、仕事を持っている家族のメンバーが少しずつお金を出しあってクリスマス用の肉を手に入れる。

たとえ沢山の肉が売られていても、高価なために少量しか買えない。もっとひどい場合には、肉料理なしで我慢しなければならない場合もある。好景気の頃には、複数の家族が集まって牛を解体し、その肉をクリスマスの食卓に並べた。しかし、5人の子供の母親であるマーガレット・キラーボ氏は、村に牛は沢山いるが、彼女の家のクリスマスディナーには1キロの肉もないかもしれないと語った。

農家は、高い気温と殺虫剤価格の上昇が、食料価格の高騰を引き起こしていると主張する。高温で作物の収穫量が減り、ウガンダの各地で食料不足が起こっている。クリスマスに食べるトマトやパプリカ、キュウリ、キャベツ、ジャガイモ、ニンジンなどの量も減ってしまったようだ。

ウガンダ東部に位置するジンジャの農家によると、農作物の生産量は減少し、クリスマスを楽しもうという人々の気持ちも薄れているという。ブタガヤという地域に住む他の農家も、ここ3ヶ月の不作による損失を取り戻すためには、作物の価格引き上げもやむを得なかったと話した。

マサカで小売店を経営するアンドリュー・セキンピ氏は、最も魅力的なクリスマス商品のほとんどは輸入品なので、買い物が難しいと述べた。彼は洋服代を節約し、少しだけ余ったお金を食べ物のために貯金するつもりだと言った。

クリスマスシーズンが終わると、ウガンダの人々が何を食べ、何を飲むかは、ポケットのお金の量ではなく、通貨の価値によって決められることになるだろう。

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パノス・ロンドンは、社会から取り残された貧しい人々が、メディアやコミュニケーションプロジェクトを通じて国内および国際的な開発議論に参加することを目的に活動している。同団体は、開発途上国の人々が生活改善に必要な情報を確実に入手できることを目指すパノスネットワークの構成団体であり、包括的な討論と複数共存、民主主義の強化を目標としている。

翻訳:森泉綾美

著者

マクリン・ビルンギ氏はウガンダラジオネットワークの副編集長である。メディアトレーナーとしても活躍し、ウガンダ初のジャーナリズムの学位取得に貢献した。2005年からインターワールドラジオに寄稿しており、主に人権、健康、HIV/AIDS、情報通信技術、ジェンダー問題に焦点を取り上げている。1997年にはウガンダ北部の戦争を取材し、情報省の年間最優秀リポーター賞を受賞した。2005年、ウガンダのラジオアワード経済開発部門の最優秀賞をアメリカ大使館にて受賞した。