最初のクールビズキャンペーンが2005年夏に実行されたとき、私にはなぜ日本のオフィスのエアコンを28℃に設定するのかがよく理解できなかった。そしてさらに「スイッチを切ってしまったほうがよっぽどいいのではないか」と思ったものだ。
それは私の故郷である熱帯マレーシアでは、みんなエアコンを18℃に設定するからだ。私は日本に越してきてからは、研究室の仲間が周囲にいないときを見計らって、エアコンを18℃に設定したりしていた。
皮肉にも、その数年後、私はオフィスで“ミスター28℃”と呼ばれるようになった。それは私が2008年の夏に、「クール国連大学」キャンペーンを始めようと提案したからだ。
当時環境大臣でクールビズの仕掛け人である小池百合子さんに会った時から、私は自分のカーボンフットプリントを減らすことを決意し、個人だけでなくまた仕事場でのフットプリントも減らそうと決めたのだ。2006年に行われたアジア・太平洋環境会議では、この会議に参加した様々の国からの環境相なども含むすべての出席者はスマートなスーツで出席しており、会議中に大汗をかくこととなった。
「ひどく汗をかかせすみません」と小池元環境大臣は演説の中で参加者に述べ、「しかし、環境会議で気候変動の問題について話し合うこの場で、私たちがリーダーショップを発揮し、私たち自身が良い例となる事が重要です」と加えた。
気候変動の影響をどう緩和し順応してゆくかを研究している国連大学本部こそ、この「見本を示す」戦略を真正面から取り組むべきだと、私は気が付いた。
この夏、国連大学 ISO14001ワーキンググループは第2の省エネキャンペーンを始動した。この“クール国連大学”キャンペーンでは、7月から9月までの間、オフィスのエアコンは省エネかつコスト削減に繋がる28℃に設定し、会議室のエアコンは26℃に設定するように呼びかけた。
国連大学でのエアコン設定温度は、日本のクールビズ規格に並ぶために、クール国連イニシアチブで推薦された25℃よりさらに高く設定された。
エネルギー消費が最も高い夏の数ヶ月は、私たちにとって大きなチャレンジとなった。それは、人々は生まれつき高温多湿の環境下では働きづらい体質にあるからだ。スタッフと国連大学を訪れるゲストは、薄いビジネススーツを着たり、スマートカジュアルの服を学内で着たり、水を沢山飲んだり、ハンドタオルを使ったり、うちわを使ったりという様々なシンプル且つ効果的なエコフレンドリーな方法を採るように勧められた。
暗い色が熱をさらに吸収することから、窓についているブラインドの暗い色の方を内側に向け(望ましくは午後12時までに)、太陽からの熱をそらすようにスタッフは推奨された。
またキャンペーンでは、外からの熱の進入を防ぎ効果的にエネルギーを活用する為に、ドアを開けた状態に保ち、エアコンの周りにある物を片付け(乱雑している物や部屋の仕切りなど)、部屋の中や各部屋の間での換気を改良する手段なども提案した。
秋になり今年の夏のデータが考査された。今年の結果を前年同期と比較すると、電力消費12%減少、ガス消費13%減少、また炭素放出量が12%減少した。この結果をコストに換算すると、キャンペーン中に約100万円 (US$11, 000)の光熱費を削減したことになる。(電力単価11.32円、ガ単価68.41円の見積りに基づき計算。月の調整は考慮せず)
省エネは夏が終わると同時に終わるわけでない。12月から2月までの間、私たちはウォーム国連大学キャンペーンを始める。このウォーム国連大学キャンペーンは、去年から始まったもので各自のオフィスと会議室の温度を20℃に設定するように呼びかけている。
スタッフとゲストは、適当な冬着を屋内でも着用し、厚い靴下やひざ掛けなどを使いそれぞれに暖かさを保つ方法を見つけるように奨励される。
昨年のウォーム国連大学キャンペーンの結果は、2007年から2008年にかけての私たちの電力消費を約5%削減、ガス消費を12%削減することができた。そしてそれは10,926kgの二酸化炭素排出削減と約642,000円(US$7,000)のコスト削減となった。
クール&ウォーム国連大学キャンペーンにとって温度モニターとスタッフの報告はとても重要な役割を担っている。ISO14001ワーキンググループが建物の各部屋に設置した温度計を使って、異なる季節や異なる時間にもスタッフが自発的に温度をモニターし調整することができる。
集められたデータは (学内イントラネットを使ってスタッフが報告した温度)、室内温度分散を理解し来年の最適な省エネレベルを決定するのに非常に役立つ。
そして、おそらく今年のクール国連大学キャンペーンの成功を可能にした最も重要な要素は、スタッフと行った定例会議だろう。その会議で、私たちの「エコアクション」をメッセージとして伝え、エネルギー効率を向上させる更なる方法についての彼らの視点と意見を聞くことができた。
数名の同僚は、クール・ウォーム国連大学キャンペーンの哲学と実用的なアイディアを家庭にもって帰り実践しているとも伝えてくれた。
極端なトップダウン方法で環境行動の変化を実施するのは多くに支持されない。省エネと快適な仕事環境の間にバランスを見出すような革新的な代替手段を促進するのが重要であることを私たちは学んだ。
クール・ウォーム国連大学キャンペーンに挑戦することによって、世界の人々が気候変動に関して同様の活動を取るように呼びかけている間にも、自分たち自身のカーボンフットプリントを減らすことができるのだという例を示せたのなら幸いである。
温度設定によって減らす 炭素排出量 by チュン・ニー・タン is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.