低所得環境下の幼児の発達成果の改善

低所得国に暮らす数百万人の子どもが、極度の貧困と必需品の欠乏によって、潜在的な発達能力を発揮できないリスクにさらされている。こうした子どもたちは、幼いころから発達の遅れを蓄積し、それが世代を超えて受け継がれ、持続的な貧困の罠を生みだしている。幼い子どもたちの認知的および非認知的な発達を改善する乳幼児期の子どもの発達(ECD)への介入策は、これらの貧困の罠の打破に資する可能性がある(Heckman 2006, Gertler et al.)

近年、このような貧困の罠に対処する子育てプログラムが人気を集めている。しかしながら、ECDへの介入がもたらす影響に関するエビデンスの多くは、経済先進国と中所得国でのものであり、これらのプログラムを組み込むことが可能な福祉制度が十分に機能し、その実施やターゲットの絞り込みを支援する極めて効果的な官僚組織を持つ(Attanasio et al. 2020, Doyle 2020, Sylvia et al. 2021)。こうした介入策は、その必要性が最も高い低所得国では、低価格で持続可能、かつ規模の拡大も容易ではないおそれがある。また低所得国の政府は、予算および制度面で無数の制約に直面しており、必要な人たちを対象とした方法で複雑なECDプログラムを効果的に実施を妨げている可能性がある。さらに、低所得の親たちは、家族が確実に生き延びられるよう努める上で数多くの困難に直面するため、このようなプログラムに参加するために必要な時間や資源、知識を持っていない可能性がある。

これらの制約に対処するために、セーブ・ザ・チルドレンは低コストで低負荷かつ短期のユニークなECDプログラム、ファーストステップ(インテラザムベレとも呼ばれる)を策定した。このプログラムの策定には、ルワンダ政府および同国のNGO、ウムフザが協力した。このプログラムの評価(Justino et al. 2023)は、世界で最も脆弱ないくつかのコミュニティーにおいて、子育てに関する知識を強化するための適度な介入とその知識に基づいた実践がいかに子どもの福祉と親子の関わりを向上させるかを示している。ファーストステップの子どもの養育者1人当たりのコストは、1セッションにつき1.94ドルから2.11ドルの間であるため、世界の他の場所で行われているECD介入プログラムより大幅に低く、より複雑な介入策に匹敵する短期的ならびに中期的効果を生み出している。

ファーストステップは、ルワンダ西部州のンゴロレロ地区(農村部)にある辺鄙なコミュニティーに暮らす、生後6カ月から24カ月までの子どもを持つ親たちを対象に週17回の集会で実施される集団を基盤とした子育て介入プログラムである。ンゴロレロの人口の半数近くは国の貧困ラインを下回る生活を送り、人口の5分の1超が極貧層に分類される(ルワンダ国家統計局、2016)。5歳未満の子どもの発育阻害率は全国平均の38%に対して約56%である(DHS, 2015)。

ファーストステップは、このようなコミュニティー固有のニーズに対応すべくいくつかの方法で策定された。1つ目に、識字率と教育の制約に取り組むことを目的として、ファーストステップのチームは読本を利用した標準的な子育て手法に頼るのではなく、グループ集会中に使用する革新的なラジオドラマを制作し放送した。それぞれのドラマのエピソードは重要な子育て行動に重点を置いており、それぞれの村から募集して訓練を受けた進行役とのグループディスカッションがドラマの前後に行われる。2つ目に、子育て介入策で幅広く用いられる家庭訪問より、アイデアと情報の普及を促進し、仲間同士での学習を強化し、グループディスカッションや共同保育、コミュニティーの世話役の研修といったコミュニティーレベルの活動にファーストステップは焦点を絞り、コストを削減するよう努めている。コミュニティーの世話役を利用することは、家族とコミュニティー、そしてプログラムの間の信頼関係を向上する目的も持っていた。3つ目として、低所得の家族が直面する時間と予算上の制約にプログラムが与える影響を最小化するため、プログラムの活動は日々の家族の日課を中心に行われ(例えば、親たちが料理中や野外での作業中に子どもと話したり、遊んだりするよう奨励する)、家庭にある一般的な資源を学習ツールとして利用した。

ファーストステップの評価は、2つの処置群と1つの対照群を用いたクラスター無作為化対照試験に基づいて行われた。1つ目の処置群の親たちは(ラジオドラマを聞くことを含む)17回の毎週のグループ集会に出席した。2つ目の処置群では、グループ集会に加え、親たちは2人目の監督役と家庭訪問1回、子ども向けの本を追加で提供された。プログラムは2015年11月に始まり、2016年4月に終了した。ベースラインとエンドラインおよびフォローアップ調査のデータはそれぞれ、2015年8月、2016年9月、2018年5月(プログラム開始から約3年後)に収集された。私たちの調査は、ルワンダ政府や他の低所得国の政府がこのプログラムを国家レベルに拡大するための方法に対して重要な出発点を提供する、3つの中核となる結果を強調している。

図2:実験計画

最初に、2つの処置はともにファーストステップが子どものいくつかの発達能力(コミュニケーション能力、粗大運動技能と微細運動技能、問題解決、社会的交流)に対して12カ月後と33カ月後にそれぞれ与えた大きなプラスの実質的な影響を示している。介入策から12カ月後の時点での子どもの発達成果の平均指数は1つ目の処置群で標準偏差(SD)が0.3、2つ目の処置群では0.4増加していた。33カ月後でも2番目の処置群は0.2SDの増加を示している。これほどの規模の効果は、より所得の高い環境で行われた他の有名な子育てプログラムに匹敵する。

2つ目に、私たちは両方の処置群において、親の子育ての時間への投資に対する短期的および中期的な大きな影響を発見した。これは、プログラムが実施された低所得で識字率が低く、辺鄙な場所という背景を考慮すると、重要な成果である。ファーストステップの顕著なプラスの効果は母親として認識した効力感、性別役割分担への態度、統制の所在、向上心にも見られるが、これらはより長期にわたるさらに前向きな人的資本開発を間違いなく支えることができる主要な規範的変化である。

図3:短期的影響(12カ月)および中期的影響(33カ月)


3つ目として私たちは、プログラムが子どもの発達成果にもたらす大きな影響は、2つの重要な要素の改善に起因することを示した。1つ目は、母親の時間投資の改善であり、ファーストステップの短期的および中期的影響のそれぞれ20%から35%に相当する。2つ目の要素は物質的投資の向上であり、介入による中期的影響の約20%を占めている。その他のより貢献度が低い仕組み(とは言え、子どもの発達向上の約10%を占めるほど重要である)としては母親の姿勢、統制の所在、子どもへの強い願望の改善があった。

図4:子どもの発達成果に対する影響の動因

これらの結果を総合すると、親の子育てや行動に有意義な変化をもたらすことで、再現と拡大が容易な低度介入を通じて極めて貧しいコミュニティーにおける子どもの発達指数の大幅な改善を達成することができるかを示している。私たちは、財政および制度面での能力が制約されながら生涯にわたる人的資本の負の蓄積を原因とした貧困の罠に対処する、差し迫ったニーズを持つ他の低所得国において、現行の大規模な国家福祉プログラムに統合する必要ことなく、類似の介入を行うための実施可能な出発点をこの調査が提供することを期待している。

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この記事は最初にVoxDevのウェブサイトに掲載されたものです。VoxDevウェブサイトに掲載された記事はこちらからご覧ください。

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