インドネシアが干ばつに襲われると、ケニアで洪水が起きる。この2つの自然災害にはどんな相互関係があるのだろうか?
その鍵を握るのは、1999年に発見されたダイポールモード現象だ。
通常、インド洋の海水温は東部で高く、西部で低い。しかし、この現象が起きると海水温が逆転するのだ。
インド洋東部の海水温が低くなると、上昇気流の発生頻度が減少し、降水量も少なくなる。その結果、夏と秋にインドネシア西部で長期間に渡る干ばつが起こる。
一方、インド洋の西部では海水温が上昇するにつれ、雲が形成される。降水量も増え、アフリカ東部で深刻な洪水を引き起こすのだ。このダイポールモード現象がインド洋熱帯域で気象変動を起こすだけでなく、ヨーロッパや東アジアの気候にも影響を与えていることが、近年の研究結果から明らかになっている。
ダイポールモード現象と太平洋のエルニーニョ現象が同時に起こると、深刻な自然災害を引き起こす。1997年インドネシアとマレーシアで起きた大規模な干ばつと山火事も、これら2つの現象の同時発生が原因だ。
山火事の煙害は3200キロ以上広がり、アジア6カ国で深刻な健康被害が相次いだ。またダイポールモード現象による大規模な赤潮被害は、スマトラ島西部沿岸400キロに渡り海洋生態系を破壊した。
2006年、再びダイポールモード現象とエルニーニョ現象が起こると、アフリカ最東北端(ソマリア、ジブチ、エチオピア)は50年に1度の大洪水に見舞われ、180万人が被害を被った。さらに大洪水の後にはコレラ、マラリア、リフトバレー熱が発生した。
ダイポールモード現象についての研究はまだ始まったばかりだ。専門家たちはそのメカニズム、影響、その他の現象との関連性などを調査中だ。2006年には、日本人科学者が2006年と2007年にこの大気海洋現象の予測に成功。研究の飛躍的進歩により、異常気象予測と被害を最小限に食い止めるための対策を講じることができた。
2008年5月、前述の日本人科学者と他の気象専門家グループは、2008年にもダイポールモード現象が再び起こることを予測し当てた。
「今日我々が知る限り、この100年間で、ダイポールモード現象が連続して3回も起きたのは初めてだ。地球温暖化による10年毎の海水温変化が、ダイポールモード現象を頻発化させている要因。数千年前にも起きていたであろう“継続的ダイポールモード現象”と類似している。」東京に拠点を置く地球フロンティアの山形俊男博士とスワジン・ベへラ博士は
ヒンズービジネスラインにこのように述べ、「被害地域に住む人々が事前に災害に備えることができれば」と語った。
2008年、ジャワ島南部の海水温は通常より早く低下し、6月中旬にインド気象庁は、100年以上ぶりにモンスーン時期が早まったと発表した。現在、インド洋の海水温は、ダイポールモード現象を誘発する条件がそろっており、現象がすでに起き始めていると指摘する科学者もいる。
ダイポールモード現象に伴う異常気象と自然災害は、インド洋熱帯域に暮らす人々や政府にとって、健康、社会、経済、そして食糧安全保障を揺るがしかねない深刻な問題となっている。
今後、気候変動の早期予測と防災準備が、災害地域の命運を握ることになるだろう。各国の関係機関が最新予測結果のモニタリングや実観測を行い、賢明な決断を下さねばならない。
その他の気候関係の予測リンク
Australian Government, Bureau of Meteorology
European Centre for Medium-Range Weather Forecasts
International Research Institute for Climate and Society
National Oceanic and Atmosphere Administration
ダイポールモード現象の最新のニュースと情報Marufish BLoG.
インドネシアの干ばつ、ケニアの洪水 by チュン・ニー タン is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 3.0 Unported License.