新技術が再生可能エネルギーを促進する

フィンランドの科学者たちは、枯れ木から高品質のバイオ燃料を1リットル当たり1ユーロ未満で生産する方法を発見した。彼らは原木のエネルギー(専門用語で言うならば、リグノセルロース系バイオマス)の半分以上を、タクシーやトラクターや戦車の燃料に変換できると考えている。

バイオ燃料は、化石燃料に代わる選択肢としてかなり前に提案された。厳密には炭素ゼロではないが、植物によって自然な形で回収された炭素を利用するため、コンポスト、落ち葉、食料廃棄物、薪などから大気へ還元される二酸化炭素は、どのみち植物に戻るはずだった。

ヨーロッパやアメリカで余剰農産物が発生していた時代には、農家の人々はバイオ燃料を別の収入源として喜んで受け入れた。環境保護論者たちは、木々や低木や草が生えた広い土地が土地の浸食を防ぐ上に、少なくとも鳥や昆虫の健全な生息地を確保しているとして歓迎した。経済学者たちは、不動産は何らかの収入の形として利用されているとして称賛した。

農園で栽培されるバイオマスの新たな候補がニセアカシア(Robinia pseudoacacia)である。アメリカ州中西部で急速に生長する木で、ニセアカシアの次に優良とされる種の3倍の勢いで生長する。現在、イリノイ大学がバイオ燃料用の作物として試験的に栽培している。

高いエネルギー効率

しかし反対論者たちは、飢餓がますます深刻化する世界の需要を満たす作物を栽培すべき農地が無駄に利用されていると主張しており、代案として、わら、トウモロコシの殻、木片、マメの茎、食料廃棄物など残り物からバイオ燃料を作るという発想を促進している。

フィンランド流の解決策(フィンランドVTT技術研究センターによれば商用規模での生産準備が整っている)は、同国にとって優れた妥協策である。フィンランドは廃棄物を大量に排出する材木産業が盛んな国で、非常に広い森林内陸地があり、冬は非常に寒い。また、政府は2020年までに輸送燃料の20パーセントを再生可能エネルギーから調達するという目標を掲げて、低炭素経済を支援している。

VVTの科学者や技術者は、加圧流動床ガス化技術を利用して、商用規模の量のメタノール、ジメチルエーテル、合成ガソリン、さらにフィッシャー・トロプシュ液体燃料として知られる低硫黄炭化水素の数種を調達できると考えている。

彼らはフィンランドとアメリカの試験工場で製造工程をテストした。事例研究に基づき、樹皮や廃木材を処理するバイオ精製所から50~67パーセントのエネルギー効率を引き出すことが可能になると推測している。さらに、工程から出た余剰熱を回収し地域の暖房などに利用すれば、全体の効率は74~80パーセント上昇すると考えている。300メガワット(MW)の容量を持つバイオ精製所なら、15万台の自動車の燃料を、1メガワット時(MWh)当たり58~78ユーロ、または1リットル当たり50~70セントで供給できる。

低炭素経済だけではなくゼロ炭素経済も待ち望む人々にとっても、心強いニュースがある。ウィスコンシン大学マディソン校の科学者たちは、水から水素を取り出せる、より安価な触媒を新たに開発した。

重要な利点

水素は酸素と共に燃焼すると、高レベルのエネルギーを発すると同時に、廃棄物として完全に水だけが残る。

反応を確実に起こすために(アポロ号の月面着陸やその後の宇宙探検用に開発された燃料電池内では当然のことながら確実に反応を起こさなければならなかった)、その反応過程はプラチナで触媒された。難点は、プラチナが希少で非常に高価な金属であることだった。

触媒自体は化学反応で消耗せず、反応を促進するだけである。そうであっても、燃料電池がプラチナに頼る限り、恐らく燃料電池は高価な玩具であり続けるか、コストも需要も高い技術向けのエネルギー源であり続ける。

しかし、マーク・ルカウスキー氏と同僚らが『アメリカ化学会誌』に発表した報告によると、ナノテクノロジーを使ってグラファイトに二硫化モリブデンの層を施して半導体を作り、そこにリチウムを塗布したところ、触媒として予想外の特性を持つ金属素材が生まれた。使用された物質は全て、比較的手に入りやすい。

この新しい混合的触媒には将来性がありそうだが、現段階ではまだプラチナほど効率のよい触媒ではないとルカウスキー氏らは言う。しかし、彼らは研究を続けている。「水素経済にたどり着くまでには多くのハードルがあります」とルカウスキー氏は語る。「しかし効率性や汚染削減における利点は非常に大きいため、私たちは前進し続けなくてはなりません」

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翻訳:髙﨑文子

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著者

ティム・ラドフォード氏は、フリーランスのジャーナリストであり、またボランティアのジャーナリストたちで構成された独立系 Climate News Network チームの一員でもある。ガーディアン紙にて通算32年間、レター、アート、文学、サイエンスでの編集を務めた。過去に4度のAssociation of British Science Writers award for science writer of the year受賞経験がある。