国連女性機関(UN Women)によると、女性と少女の約3人に1人が、「近親者による身体的・性的暴力、近親者以外による性的暴力、またはその両方を人生で少なくとも一度は受けたことがある」と考えられている。しかし、この問題への対処に充てられている政府援助はわずか5%に過ぎない。
2023年11月25日の女性に対する暴力撤廃の国際デーを記念して、国連大学のジュリエッタ・マロッタ助教兼公共政策および人間開発に関する理学修士号プログラム・ディレクター代理が、この分野における長年の研究により磨かれた政策立案のレンズを通してこの問題について語ってくれた。
この日が私たち全員にとって重要なのは、女性に対する暴力撤廃のための努力を継続する必要があることを想起させてくれるからです。私たちは、加害者があらゆる手を尽くして被害者を支配しようとすることを知っています。スペイン語では、彼らは「アリの仕事」をしていると言いますが、被害者が自信を取り戻すためにも「アリの仕事」が必要なのです。これは社会でも同じです。社会はジェンダーと女性をないがしろにする数々の固定観念で構築されてきました。
これをどうにかしない限り、こうした差別は根強く残ります。女性に対する暴力や差別をなくすため、社会はさまざまな前進を遂げてきました。しかし、こうした女性に対する暴力や差別は社会に組み込まれているため、根絶には多大な労力が必要です。このことについて考え、私たちがどのような立場を取りたいのかを振り返る事こそが、この日を記念する重要な理由なのです。
女性が暴力のない生活を送る権利は、1979年の「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女性差別撤廃条約)」で大きく前進しました。同条約は、女性が差別や暴力のない生活を送る権利に近づくための世界的な政策です。現在では、暴力撤廃に向けて、各国が国内において政策を講じ、国内法を制定しています。法律は重要なツールです。必要なのは法律であり、基準であり、加害者を処罰するための執行メカニズムであり、被害者の回復を支援するツールなのです。
また、被害者が自らの権利について認識する機会も必要です。これには3本の柱があります。1つ目は、暴力に包括的に対処する法律を制定することです。というのも、暴力は罰を与えるだけでなく、女性が加害者から再び自立できるようにすることにも関わるからです。だからこそ、争いに対する学際的なアプローチによる包括的な法律の制定を目指すことが。非常に重要なのです。2つ目は、暴力の複雑さを理解して包括的なレベルで暴力に対処できる、訓練を受けた支援提供者を持つことです。私たちは、暴力が周期的であること、被害者が加害者のもとに戻ってしまうことが多いことを知っています。支援提供者には、被害者を何度でも受け入れ、被害者が助けを求めてくるたびに支援する忍耐強さが必要です。
そして3つ目は、政府内のさまざまな機関間の協力です。司法が法律を執行し、議会は法律を制定することができることができますよね。しかし、実務家が常に強調するのは、行政機関が重要な役割を果たすということです。なぜなら、暴力は判決が下されても、罰が下されても終わる事はありません。暴力は続いていきます。暴力が止まるのは、行政機関が被害者と加害者の状況を考慮して彼ら自身の能力を高め、暴力のない生き方を学ぶのを助けるときと、教育制度を通じて子どもたちに平和的で差別のない方法でコミュニケーションを取ることを教えるときだけである。そして、あらゆる部門を巻き込んだ包括的な政策を立案し、実施するには時間と資源も必要です。
第一の要素は個人の態度です。政策立案者は暴力を非難する必要があります。暴力を容認するかしないかという、白黒をはっきりさせる要素が必要です。そして政策立案者は、暴力を受け入れないこと、自ら暴力を振るわないことを強く主張する必要があります。先ほど述べたように、社会は固定観念に組み込まれていて差別的になってしまうため、これは極めて難しいことです。語彙は本質的に差別的であり、主として女性よりも男性向けに作られてきました。一掃すべきものは数多くあるが、政策立案者がこのことを認識し、固定観念を繰り返さないよう努力し、社会に組み込まれたこうした差別を意識することが非常に重要です。政策立案者は、サードセクターが何十年もそうしてきたように、この問題の擁護者となる必要があります。
第二の要素は、現在抱えている問題と闘うためにさまざまな政策を講じ続けることです。過去数年間に実施された政策は多数あります。こうした政策を評価して、政策がどの程度機能するのかと、その方向で取り組み続けるためにする必要があることを確認していく必要があるでしょう。私たちの仕事はまだ終わっていません。すべきことは山積みです。差別は依然として残っているのです。権力のある地位に就いているのは、男性の方が依然として多く、給与格差もまだ残っています。
この点に関する最後の要素は、政府機関が社会のさまざまなグループを代表するように民主化することだと考えます。私はここに、女性にとどまらず、すべての声が確実に届く、民主的な政策の導入を目指す社会に組み込まれたあらゆる多様性も含めています。
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この記事は最初にUNU-MERIT のウェブサイトに掲載されたものです。UNU-MERIT ウェブサイトに掲載された記事はこちらからご覧ください。