地方自治体の防災対応能力を強化

各国政府は「仙台防災枠組2015-2030」(SFDRR)の実施を積極的に進めているが、災害の影響がますます大きくなる中で自治体をはじめとする地方のステークホルダーの防災対応能力の強化が急務となっている。防災における地方自治体の役割と、防災対応能力強化に向けた戦略について述べたい。

「仙台防災枠組2015-2030」における地方自治体の役割:進展と課題

図1:全世界でUNISDR「災害に強い都市プログラム」を実施中の都市の分布(UNISDR, 2019)

SFDRRは、2015年に災害リスクとその影響に取り組むための世界的枠組みとして採択され、その実施は国連国際防災戦略事務局(UNISDR)が調整を行っている。4つの優先行動分野(リスクの理解、ガバナンス強化、リスク削減への投資、備えとより良い復興)のほか、7つの目標が定められている。そのうち目標7では、国と地方の防災戦略を持つ国を2020年までに大幅に増やすよう求めている。UNISDRが調整役を務める「世界防災キャンペーン『災害に強い都市の構築』」は、地方自治体に焦点をあてている。全世界から4,000強の都市が参加している。(図1)

図2:日本でUNISDR「災害に強い都市プログラム」を実施中の都市の分布(UNISDR, 2019)を元に作成

その内、日本からは仙台、長岡、神戸などの市が参加している。(図2)。その他に、ロックフェラー財団の「100のレジリエント・シティ(100RC)」、クリントン財団などの主要慈善団体の支援を受けた「C40ネットワーク」が、都市のレジリエンス構築を支援するツールを開発中だ。こうしたプログラムを 通じ、グローバルな枠組みに対する地方自治体の貢献が認識されつつある。

地方自治体のエンパワーメントを図る戦略

これまで各国政府は、SFDRR実施に向けた中心的役割を担ってきた。特に、災害リスク管理やリスク削減、法令の採択、リスクを削減するための財源の充実化に取り組むなどの防災に特化した部署の設置、推進といった面で、大きな前進が見られている。しかし、災害の影響への対処という点では、政府と地方自治体の能力に大きな格差が生じている。地方自治体に災害リスクを削減する能力が欠けているのは、必要なスキルや機材、研修に使える資源や財源がなく、しかも貧困削減や地域経済開発という競合する開発アジェンダを抱えているなどが理由として挙げられる。その中で、災害対策は優先課題とされてないことが多い。

これらの課題を背景に、地方自治体のエンパワーメントを図るため、次のような戦略を提案したい。

  1. 具体的なマンデートの明示:各国政府が地方自治体に法令遵守が必要なマンデートを明示するとともに災害リスクを管理する部署や担当者など、具体的な主体を設置する。これにより、災害リスク管理のマンデートが達成される可能性が高くなる。
  2. 財源の充実化:災害リスクの削減に向けた地方自治体の財務能力の強化は、大きな課題となっている。災害による緊急事態だけでなく、リスクの削減に割り当てる資金も増額すべきだ。
  3. データの入手と解析の支援:危険や脆弱性、リスクに関するマップや評価、早期警戒システムなどに関する研究は十分になされておらず、データが揃っていないことが多いまた使用出来るデータがある場合でも、地方政府にはこれらを解釈し、検討する能力が欠けていることが多い。データの入手と解析を支援する必要がある。
  4. 研修の実施:災害データを用いた意思決定、緊急事態の管理と調整、災害を想定した避難訓練やシミュレーションの研修に取り組むことで、防災に関する地方自治体のスキルと専門知識を向上させる。また、研修に消防署やボランティアなどと共に行うことで関連の深いステークホルダーを把握し、関係強化につなげる。
  5. マルチステークホルダー型のアプローチ:地域のステークホルダーやコミュニティとの連携強化も、地域防災のエンパワーメントを図る戦略となる。例として、市民社会団体や非政府組織、大学、地域社会が挙げられる。災害発生直後の初動対応を直接行なう地域のステークホルダーは、地形やリスク特性に詳しく、被災する可能性も高いことから、高いモチベーションを維持し、積極的な参加が見込まれる。

災害が頻発し、そのコストも複雑性も増す中で、災害に強い世界を実現するためには、地方自治体のエンパワーメントを図る必要がある。

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参考資料:
EM-DAT, 2018, Emergency Management Database, https://www.emdat.be/emdat_db/, 2018年11月1日時点の災害データ
United Nations Office for Disaster Risk Reduction (UNISDR) , Participating Local Government, https://www.unisdr.org/campaign/resilientcities/home/cities, 2019年1月16日時点のデータ

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この記事は環境新聞で最初に公表されたものであり、許可を得て転載しています(一部編集しています)。

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著者

リヤンティ・ジャランテは、国連大学 サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)アカデミックプログラムオフィサー。2016年よりIPPC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書の執筆者に選出され、20224月に完成予定の第6次評価報告書の執筆にも携わっている。そのほかにも、統合防災研究計画(IRDR)の科学委員のメンバーなどに選出されている。2002年~2015年までは、ケンダリ(インドネシア)の地方政府災害管理部に務め、地域社会から国家レベルまでの開発計画・実施に10年以上取り組んだ経験がある。

マッコーリー大学(オーストラリア)にて博士号を取得。

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