市民科学プロジェクトの適切な策定により、SDG6のモニタリング支援が可能に

今年の持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)では、水とトイレの利用と持続可能な管理をすべての人に確保するという持続可能な開発目標6(SDG 6)が議題となる。ターゲットの質的状況を評価し、2030年までに水質改善を図ることは、HLPFの重要な目標の1つである。

ターゲットを評価するうえで重要な指標の1つとなるのが指標6.3.2「良好な水質を持つ水域の割合」だ。

政府はここで、大きな課題に直面する。水質データの不足だ。水素イオン指数(溶液中の水素イオン濃度)や水温、窒素総量など、水質を測定する共通指標はあるが、このような指標は水質を包括的に把握できるほどしっかりと測定されていない。指標6.3.2に関する報告が明らかにしているとおり、指標を管理する多くの機関には、データを照合し、必要な人員を投入するための制度的構造と調整が欠けている。

課題解決に向けて期待できる兆しとして、政府機関が広範なネットワークを通じて水質をモニタリングする従来型のデータ収集から、市民主導型の水質モニタリング活動を通じた追加的なデータ収集へのシフトが見られている。ボランティア集団に焦点を絞ったHLPF向けテーマ別検討文書では、具体的にSDG 6について触れ、すべての人に安全な水とトイレを確保するうえで、市民による採水試験が重要であると強調している。

「市民科学」は、水質データ不足に取り組むうえで、本当に有効なのだろうか。

比較的新しい理念である市民主導型のモニタリングは「市民科学」とも呼ばれている。「一般市民による自然界に関するデータ収集・分析で、通常は科学専門家との共同プロジェクトの一環として行われる」というのが、その定義だ。

それはSDG指標6.3.2の管理機関が提案する手法の1つでもある。しかし、市民の関与は水質データの不足に取り組むうえで、本当に有効なのだろうか。

市民の関与には、特にデータ収集において重要な利点がある。市民なら誰でもデータ収集に出かけられるので、データサンプルが潜在的に大きくなるからだ。このようなデータ収集は、費用対効果が高いだけでなく、環境検出を迅速化、改善できる可能性もある。より多くの人々が良質なデータを収集すれば、環境変化を早期に検出できる確率も高まる。

このように市民科学を活用すれば、利用可能な人員や資金に応じて、より広い地域で、より長期にわたるプロジェクト運営が可能になる。例えば国家水質モニタリング会議は、全米で1,720を超える市民科学団体が、自発的に水質モニタリング活動を行っていると強調しているアースウォッチ(Earthwatch)は120カ国以上で約1,400件のフィールド・プロジェクトを支援し、そのプロジェクトには10万人以上が加わり、延べ1,000万時間のデータ収集に貢献した。

しかし文献を見ると、市民科学の欠点も指摘されている。ボランティアには、正確なデータを収集するための適切な科学知識や技能があるとは限らないため、収集されたデータには歪曲や偏りが生じるおそれがある。また、ボランティアには適切なデータ収集に必要な実験装置や資金がない場合もあるため、水質モニタリングを行う科学的プロジェクトへの参加を促すことが困難となりかねない。最後に、人々の関心が異なるため、どの市民科学プロジェクトに参加するかについて、選り好みが見られる傾向もある。例えばオオカミやクマ、一定の鳥類など、魅力のある生物種に関する生物多様性のモニタリングには、一般市民の関心と募金が特に多く集まる

水質モニタリングにおける市民科学の先行き

市民科学におけるこうした弊害をどのように克服すべきかについては、活発な議論が続けられている。科学者以外の人々が市民科学に参加する理由は、取り組んだ活動の成果と事実を認識するとともに、収集データがどのように活用されたかについて科学者がフィードバックすることで、それらを高められるためである。分析結果を見ると、ボランティアのコミュニティ関与意識が高ければ、意欲も高まると分かる。しかも、データサンプルが大きく、不備や偏りのあるデータを是正できれば、市民科学データの統計検出力も高まる可能性がある。

では、市民科学は水質データ不足に取り組むうえで効果的な手段なのだろうか。文献を検討し、市民科学プロジェクトを概観する限り、水質モニタリングに市民を巻き込むことに大きな潜在的可能性があるのは間違いない。しかし、市民の関与から十分な利益を得るためには、生じうる弊害を克服しなければならない。

既存のプロジェクトやその他の実践分野から得た教訓を考慮し、我々は水質モニタリングに対する、適切に策定された市民科学プロジェクトの実施を主張する。指標管理機関は、適切な市民科学のためのガイドラインの提供を検討するとともに、水質データ不足の解消を目指し、適切に策定されたプロジェクトの実施を奨励できるだろう。

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本記事の原文はSDG Knowledge Hubで発表された。原文はこちらで閲覧できる。

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著者

タマーラ・アベリャンは、国連大学物質フラックス・資源統合管理研究所(UNU-FLORES)研究員。生物学者であるアベリャンは、水質が水生生物に与える生態学的影響と、過剰な養分の植物生態学的影響に関する研究を行ってきた。UNU-FLORESでは、資源損失削減に向けた水、土壌、廃棄物の関連を中心に取り組んでいる。

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