経済成長だけで貧困に終止符を打てるだろうか

 国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関する新たな予測

本日、10月17日は、(すでにご存じのとおり)国連による「貧困撲滅のための国際デー」である国連の「貧困撲滅のための国際デー」である。国連大学世界開発経済研究所(UNU-WIDER)の新たな分析では、世界の貧困に関連するSDGs、特に金銭的貧困、栄養不足、子どもと妊産婦の死亡率、安全な水と基本的な衛生設備へのアクセスに関するSDGsに向けた進捗状況を評価している。そして、私たちの分析では、SDGsの達成期限である2030年までの今後数年間の世界の進捗状況を予測し、将来を展望している。

見通しは良くない。私たちの調査結果は、経済成長だけでは世界の貧困に終止符を打ち、世界規模の貧困に関連するSDGsを達成するには不十分であり、目標を大幅に下回ることを示している。これは単なる数字にすぎない。私たちは、この数字の意味を、病気や貧困、死によって不必要に失われた何百万もの人生という、極めて人間的な言葉で思い起こす必要がある。

これらの基本目標は、国内および世界的な不平等に対処するための政策を抜本的に変更しない限り、2030年までに達成されることはないだろう。社会政策と並んで、包摂的な成長と生産能力(すなわちSDGs目標8「働きがいも経済成長も」)により重きを置く必要がある。

失われた10年は戻るのだろうか

1980年代、多くの開発途上国で生活水準に関する多数の指標において進展の停滞や後退がみられ、この10年間は悪名高い「失われた10年」のレッテルが貼られることになった。私たちの新たな厳しい予測によると、緊急の行動を起こさない限り、2020年代に再び「失われた10年」に直面するおそれがある。

私たちは、貧困に関連する一連のSDGsについて、一貫した方法論により新たな予測を行った。(私たちが検証している)一人当たりGDPとの歴史的な強い相関関係と、予測を立てるのに十分な国レベルのデータを基に7つの指標を選定した。これにより、成長予測を用いた信頼性の高い予測が可能になる。

なぜ今なのか

今年は、SDGsが合意された2015年から、2030年の期限までの中間地点にあたる。さらに、私たちの試算では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックやウクライナ戦争に端を発したインフレショックなど、最近の世界的なショックを考慮に入れた経済成長予測を用いている。

判明したのは、貧困に関連する一連のSDGsを広い範囲で達成できていないことである。

グローバル・サウス諸国に関する主要な調査結果を以下に示す。

実際、債務の返済こそがこの破滅的となり得る失敗の根本原因なのだ。パンデミック後の過剰債務と金利上昇のせいで、グローバル・サウスの多くの国々が、確実に債務を返済するために緊縮財政の新たな時代に突入した。その結果、政府が収入を増やしてSDGsに必要な支出をするための能力を妨げている(さらに、不可欠な気候変動適応策への投資が後回しにされるおそれがある)。

何をすべきか

緊急の政策措置が必要であり、再分配策が急務である。

軌道を修正するためには、2つの面で緊急の政策措置が必要である。

第一に、包摂的な成長と生産能力に一層重点を置く必要がある。具体的には、債務免除やその他の形態の資金調達を通じて新たな国際的な資金調達を利用できるようにし、グローバル・サウスの国々が財政余力を拡大してSDGs目標8に一層焦点を絞るようにする必要がある。こうした資金調達により、社会的・生産的支出は縮小するどころか、むしろ拡大するはずである。

第二に、そうした焦点は、生産能力を構築し、極度の貧困に関する目標を達成するための所得移転を導入または拡大し、保健、水、衛生に関するSDGsを達成するために十分な公共投資を確保する政策を通じて、成長と並んで再分配を伴うものでなければならない。

つまり、今日の軌道は、国レベルでも世界的なレベルでも、再分配への強力かつ劇的な移行を必要としている。

また、グローバル・サウスに新たな資金を流入させる必要もある。過去と現在の失われた10年に直面している今、抜本的に政策を転換することが世界の貧困に終止符を打つ一縷の望みとなっている。

これこそ、貧困に関連するSDGs達成への希望をつなぐ道である。

1:貧困に関連するSDGsの予測(20152030年)

Figure 1. Projections of poverty-related SDGs, 2015-2030

出典:執筆者による推計

 

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この記事は最初にUNU-WIDER のウェブサイトに掲載されたものです。UNU-WIDER ウェブサイトに掲載された記事はこちらからご覧ください。

著者

ズージー・アンナはインドネシアのパジャジャラン大学でSDGsセンター長および水産業・海洋科学部講師を務めています。

アーマド・コマルルザマンはインドネシアのパジャジャラン大学経済学部に所属する講師および研究者です。

アンディ・サムナーはキングス・カレッジ・ロンドンで国際開発教授を務め、国連大学世界開発経済研究所(UNU-WIDER)にノンレジデントの上級研究フェローとして所属しています。