ミレニアム開発目標(MDGs)の期限が迫っているが、2015年以降の開発課題を明確にする新たな目標やターゲットの設定にあたり、今回もおなじみのパターンが見られる。国連ミレニアムサミット(2000年)で、それぞれの開発「セクター」が自らの目標とターゲットを優先的に認めてもらうよう強硬な姿勢をとり、しばしば他のセクターをないがしろにするようなことが見られたが、その時と似ているのだ。 その結果、MDGsに関しては、個々の孤立した目標が出来上がり、それぞれが孤立した、時には矛盾した開発の流れを作ることとなった。2015年以降を見据える今、この状況の再来を避けるには2つの主な開発の軸を考えねばならない。
まず、開発軸の1つ目は水、食料、エネルギー安全保障の3点で括られるべきだ。もし大々的な変革がなされなければ世界の水の需要は2030年までに供給を40%も上回ると予測されている。別の予測では、2035年までにエネルギー需要は50%の増加が見込まれている。そのほとんどは途上国での需要だ。また食事の需要は2050年までに70%増加すると予測されている。このような需要に応える、または需要を緩和するには革新的で統合された政策対応が必要である。この括りの3要素は三角関係にある。 食の供給増加には、水とエネルギー効率のよい食料生産サイクルが必要だ。水 の需要を満たすには農業生産用の水(世界の平均は現在70%)を節約せねばならず水1滴につきより多くの電力を生み出さねばならない。エネルギー供給を増やすには一般的に水効率のよい再生不可能なエネルギー供給の割合を増やさなければならず、持続可能なかんがいを通して食を確保してくれるような水力発電プロジェクトも増やさねばならない。リオ+20宣言のときのように、この三角形の要素から水を度外視することは水・食料・エネルギーの安全保障を不可能としてしまう。
2つ目の開発軸は人類の幸福と権利に関するものだ。教育、貧困、健康、性別に関する問題を関連付けるもので、人類の最新の権利である安全な飲料水と衛生の確保に関する問題も含む。安全な飲料水と適切な衛生の確保と貧困削減、健康状態の改善と教育率の改善(特に少女や若い女性の間)の関連性について数多くの議論がなされてきている。リオ+20の宣言でうたわれているように、全ての人の水と衛生の確保を中心とした開発目標は、経済の業績、人類の健康と幸福という点で共通したターゲットを立てるべきであることも当然だろう。飲料水と衛生に関する国際対話においては、そのようなターゲットの統一感は大部分で欠落している。今回も再びそれぞれに孤立した目的とターゲットが見られる。それでは個々の手段に任されることとなり、成功しない可能性が高い。水と衛生に関するMDGターゲット達成が不可能であることと同様である。
結局のところ、私たち国際開発コミュニティは、密接に関わり合った世界の問題解決に真にコミットしていることを示すべきだ。それらはバラバラに解決できるものではない。このコミットメントを明白に示す方法は、持続可能な開発目標(SDGs)が底辺の10億人の人々への投資を組み込むことだ。彼らは今、十分な水も衛生環境もエネルギーも持たず、栄養不良と高い幼児死亡率に苦しんでいる。このような底辺の10億人が抱える問題を今後10年か20年で解決できるなら、途上国では著しい変化が期待されるだろう。よってSDGsは開発目標とターゲットに対する疑問に対し、統一されていて密接に関わり合う方法で対応しなければならない。国連安全保障理事会が設立し、デビッド・キャメロン英首相、スシロ・バンバン・ユドヨノ・インドネシア大統領、エレン・ジョンソン=サーリーフ・リベリア大統領(Liberia)の3名が共同議長を務めるハイレベルパネル がこれを達成することもあり得るのである。
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翻訳:石原明子