サンゴを絶滅から守る計画

自然保護活動家たちが世界で最も重要なサンゴ種を守る計画を発表した。数十年後の「機能的絶滅」につながると考えられる、増大しつつある脅威への対策だ。

ロンドン動物学会の科学者たちによるEDGE Coral Reefsプロジェクトは、絶滅のリスクが最も高いサンゴ10種を特定した。

科学者たちによると、気候変動による海水温度の上昇、酸濃度の上昇、乱獲や汚染といった様々な脅威がさんご礁に悪影響を及ぼしているという。

EDGEの計画では、最も独特な進化を遂げ世界的に絶滅の危機にさらされている種に注目し、その保護に向けて地域を絞ったアプローチを行う。

その地域とは、フィリピン近海の「コーラル・トライアングル」、インド洋西域のモザンビーク海峡付近、およびカリブ海である。

「さんご礁は20~50年後、機能的絶滅に陥る危険があります。その原因は主に世界的な気候変動です」と本プロジェクトの共同コーディネーターであるキャサリン・ヘッド氏は言う。「対象地域にある国の自然保護活動家たちが調査や目的に合った保護活動を行えるように、私たちは支援とトレーニングを提供していきます」と彼女は語った。

「彼らのプロジェクトはひとまず2年間続きます。私たちは資金や集中トレーニングを含む、プロジェクトの実施に必要な手段を提供するのです」

白化の進む未来

さんご礁は地球上で最も多様な海洋生態系で、海洋の雨林として知られている。海底面積の0.2パーセントに満たないにもかかわらず、全海洋生物の3分の1をはぐくむ場所だ。気候変動によって海水温度が上昇すると、サンゴの白化現象を引き起こす。

「海水温度の上昇によって、褐虫藻と呼ばれるサンゴと共生する藻がサンゴの体内から排出されると、白化現象が起こります。サンゴ独特の色は褐虫藻によるものなのです」とヘッド氏は語った。

「2010年はサンゴの白化現象が特に進んだ1年だったようです。インドネシア沿岸では、多くのサンゴ群で最高100パーセントの白化現象が見られたとの報告があります。1998年には、全世界のさんご礁の16パーセントが白化現象により死滅しました」

サンゴは白化すると光合成ができないため、養分を吸収できない。およそ数カ月という限られた時間内に褐虫藻を再び体内に取り戻せなければ、サンゴは死んでしまう。

「2010年はエルニーニョの影響で海面の温度が非常に高かったのですが、最近ではこういった猛暑の年が間隔を明けずにやって来るのです」とロンドン動物園内の水族館で飼育員を務めるレイチェル・ジョーンズ氏は言う。

「さんご礁が白化の影響から回復するには数年かかります。白化現象の生じやすい状況が頻繁に起こるようになれば、サンゴが死滅する可能性は高くなるのです」

強力な計画

EDGEプロジェクトの開始にあたって選ばれたサンゴ10種には、タイマイの食糧源となるオオハナサンゴ(Physogyra lichtensteini)や、コロールアネモネシュリンプ(Periclimenes kororensis)のような色鮮やかなエビの少なくとも15種をはぐくむパラオクサビライシ(Heliofungia actiniformis)などが含まれる。

将来的な解決策の1つとして、より多くの海洋保護区を制定することが挙げられると保護活動家たちは言う。

それまでは、環境の変化に対するさんご礁の回復力を強化することを中心に、保護活動が続けられる予定だ。

「要するに乱獲を減らし、汚染の影響を抑えるということです」とジョーンズ氏は言った。

「非常に良好な状態のさんご礁がある地域、例えば1998年に壊滅的な白化現象に見舞われたにもかかわらず今では見事なさんご礁が存在するチャゴス諸島では、インド洋のどの地域よりも回復後の状態がよく、回復のスピードも速かったのです」

さらに彼女は続けた。「環境はかつてないほどの速さで変化しています。サンゴは非常に特殊な条件下で進化してきました。大気と海の両方に作用される境界で生息しており、そこは生きていくのが非常に難しい環境です」

「しかしサンゴは進化を遂げた結果、条件が安定している限り、その環境で生きられるようになりました。現在、サンゴの適応が追いつかないほどの速さで条件が変化しているのです」

ロンドン動物学会の国際海洋および淡水保護プログラム・マネージャーであるヘザー・コルデヴァイ氏は次のように語った。「サンゴは地球で最も絶滅の危機にさらされている動物の1つであり、海洋環境を象徴する重要な存在なのです」

「EDGE Coral Reefsは、さんご礁が健やかに育つ未来のために、世界で最も多様性に富むサンゴ種の回復力の強化を中心に活動していきます」

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この記事は2011年1月11日火曜日にguardian.co.ukで公表されたものです。

翻訳:髙﨑文子

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著者

アロック・ジャはガーディアン紙の科学と環境の記者でグリーンテクノロジーが専門。 ニュースや記事を書くだけではなく、サイエンスウイークリーのポッドキャストやガーディアンの科学webサイトも担当。インペリアル・カレッジ・ロンドンにて物理を学び、ガーディアンには科学部門が2003年に立ち上げられた時から勤務。