世界の海洋は現在、増加の一途をたどる深刻な脅威にさらされている。例えば、海洋生物資源の乱獲、生育域の劣化や荒廃、汚染、気候変動の影響などだ。しかも世界の多くの地域では、海洋は地域住民の文化と経済に欠くことのできない存在である。
今回、インド洋西部におけるコミュニティー主導の海洋保護対策が初めて評価され、地域社会が漁場管理の責任を負う場合に海洋保護は最も成功することを示すさらなる証拠が集まった。これは世界の海洋と地域社会にとって吉報である。
報告書を執筆した国際的な研究者チームは、現在、インド洋西部の海洋保護区のほぼ半分(1万1000 km²以上)が地域社会の管理下に置かれている事実を指摘し、今回の調査が保護区の管理における「革命」を暗示していると語る。
海洋保護区(MPA)は、野生生物を損傷や妨害から守るために計画された海洋や沿岸の区域である。各国が国際的な保護に関する誓約を守ろうとしているためMPAの数はますます増えている。現時点まで、MPAは典型的に、地域社会ではなく政府によって管理されてきた。
「MPAは海洋保護にとって重要なツールですが、その効果は多くの場合、不十分で、地域の漁業に負の影響を与える可能性もあります」と、報告書の主要筆者であり、ヨーク大学環境学部の研究者であるスティーヴ・ロックリフ博士は語った。
「こうした背景のもと、インド洋の広大な範囲に所在する沿岸地域社会が『地域的に管理された海洋区』、略してLMMAとして知られる保護区を設定し、資源をより積極的に管理していることが分かりました」
「LMMAは人々を中心に据えています。つまり、管理上の決定を下すのは漁業従事者たち自身であり、その決定は彼らのニーズ、優先事項、伝統的な生態学的知識に基づいているのです」
PLOS ONE(プロスワン)に発表されたばかりの同調査は、北はソマリア、南は南アフリカまで広がる11の沿岸国および島国を対象に行われた。
「LMMAは海洋資源管理の従来の『トップダウン型の』方法に代わる、費用対効果が高く、大規模な実現が可能で、柔軟で、社会的により受け入れやすい選択肢であることが証明されました」と、共同筆者のショーン・ピーボディ氏は語った
報告書の目録は、62の地域的イニシアチブと74のMPAに関する情報が要約しており、関係機関、研究者、政府関係者が同地域で海洋保護を拡大するために今後の取り組みを評価する際の重要なベースラインとなるだろう。
研究者らは地理、数、面積、ガバナンス体制の観点からLMMAを調査した。さらに、政府の管理下にある保護区の状況と比較し、2020年までに海洋および沿岸の生態学的地域の10%を効果的に保護するという生物多様性条約の目標達成への貢献度を評価した。
「LMMAは十分に開発されていない法体制や法施行のメカニズムによって妨害されているにもかかわらず、タンザニア本土やマダガスカルでは選択肢の1つとして浮上しつつあることが明らかになりました。中央政府に管理されたMPAと比べると、LMMAの面積はタンザニアでは3.5倍、マダガスカルでは4.2倍でした」とロックリフ博士は語った。
「LMMAは海洋資源管理の従来の『トップダウン型の』方法に代わる、費用対効果が高く、大規模な実現が可能で、柔軟で、社会的により受け入れやすい選択肢であることが証明されました。また、食料安全保障を守り、沿岸地域の貧困に対処し、気候変動に適応する沿岸コミュニティーを支援する方法として、LMMAが有望であることも分かりました」と、報告書の共同筆者で、科学主導の社会事業であるBlue Ventures(ブルー・ベンチャーズ)のショーン・ピーボディ氏は語った。
「今後の課題は、LMMAの従事者たちが経験とベストプラクティスを共有できるようなネットワークを確立することです」
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翻訳:髙﨑文子
地域社会が海洋保護で重要な役割を担う by キャロル・スミス is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 4.0 International License.