キーラン・クック氏は、ボランティアのジャーナリストたちで構成された独立系 Climate News Network チームの一員である。クック氏はアイルランドと東南アジアで、BBCおよびフィナンシャル・タイムズの通信員を務めた経歴を持つ。
「国際オゾン層保護デーを記念して、オゾン生成の影響を受けやすい地域について、またこの温室効果ガスを最も排出していた航空機について、最新のニュースをお届けします。」
「パン・ギムン国連事務総長によるこの日のメッセージにあるように、一世代前、「国際社会は、新たな道を切り開くため各国政府間イニシアティブを取りながらオゾン層保護の推進に合意」しており、さらに「『オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書』の成果が……オゾン層保護をもたらし、気候緩和に貢献した。またこの議定書は、存在に関わる脅威に直面しながらも、国際社会が公共利益のために協力できることを再認識させてくれる」
「このような脅威がかつてないほど高まっている現在、議定書の成果をもとに、より一層達成に貢献する科学の成功を確立する必要がある。」
科学者たちは、太平洋上空を飛行する航空機の排出物が、短寿命温室効果ガスであるオゾンを最も増加させているということを明らかにした。
もしあなたに航空機を利用する予定があり、その航空機の温室効果ガスの排出量を心配しているのであれば、オーストラリアあるいはニュージーランド発着の便を利用しないことをお勧めする。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、全球化学輸送モデルを用いて、オゾン生成の影響を受けやすい地域を調べ、その後、オゾンを最も生成する航空便について調査を行った。
英学術誌Environmental Research Letters(環境研究報告)に発表されたMITの調査結果では、太平洋のソロモン諸島東1,000キロメートル周辺が航空機排出物の影響を最も受けやすいということが明らかになった。
調査により、太平洋のこの地域では、航空機排出物1kgが1年かけてさらに15kgのオゾンを生じさせることが分かったが、この数値はヨーロッパの5倍、北アメリカの約4倍に相当するということである。
オーストラリアの大部分、東南アジア、アフリカ東海岸沿いマダガスカル方面もまた航空機排出物の影響を受けやすい地域にあたる。
オゾンは、短期的には二酸化炭素に匹敵する強い影響力を持つ短寿命温室効果ガスであり、排出された窒素酸化物(NOx 例:一酸化窒素、二酸化窒素など)が日光と相互作用することにより生成される。
したがって、オゾンの生成及び破壊は特定の環境下で発生し、その影響は限定された地域にとどまる(特定の時期に特定の地域が影響を受ける)。
この調査では、全世界8万以上の航空便が分析され、その結果、オゾンを最も生成するトップ10の航空便はニュージーランドあるいはオーストラリア発着便であることが明らかにされた。なかでも、シドニー発ムンバイ行きの航空便が25,300kg相当という最大量のオゾンを生成することが分かっている。
その他、シドニー-ホノルル間、オークランド-ソウル間、ブリスベン-バンコク間の航空便でもオゾンを多く生成している。本調査主任のスティーブン・バレット氏は、Climate News Networkに対して、次のように伝えている。「航空機によるオゾン生成は季節によって変動しており、秋に最もオゾン汚染が起きています」
「民間機排出物の大気へのインパクトに関する研究は多いが、個々の航空機が環境にどのような影響を与えるかについてはほとんど情報がありません」
「現在、最も強い影響を被る地域は民間航空の成長が最も著しい地域であるため、排出された窒素酸化物がオゾン生成に強く結びつく特定地域を避ける航空路選択に取り組むことで、航空機による気候への影響を大幅に削減できる可能性があります」
しかしこういった取り組みでオゾンが減少しても、その他の温室効果ガスが大気中に増加する可能性がある。
「たしかに長距離フライトはより多くの燃料を消費し、より多くの二酸化炭素を排出するため、飛行距離の延長とオゾンへの影響のような気候に対するインパクトとの間でトレード・オフ(二律背反)の関係になるでしょう」とバレット氏は言う。
「このトレード・オフの関係を支える科学的根拠については、いっそうの研究が求められますが、研究が進むことにより、トレード・オフに対する理解が深まり、またそれが理にかなったものであるかどうかがわかるでしょう」
オゾンを最も生成させる 太平洋横断飛行 by キーラン・ クック is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.