気候が変わり、人も変わる

コペンハーゲンでの気候変動会議が数日後に迫っている。気候変動の現状は解決の方向に向かうのか、それとも悪化するのか。それに関わる私たちの役割について、じっくり考えてみるよい機会である。

国際連合大学(国連大学)は、この数年まさにそのことについて考えてきた。国連全体ではクライメイト・ニュートラル(Climate Neural)を目指し、相当の努力が費やされているところだ。 これは温室効果ガスの排出量と削減量、あるいはオフセットを数値化して表す方法だ。

この流れの中、東京の国連大学は2001年以降、CO2排出量を減らすため様々な取り組みを行ってきた。各施設の利用による排出量を削減するため、「クール国連大学キャンペーン」、 「ウォーム国連大学キャンペーン」を行った結果、コスト抑制と温室効果ガス排出量の削減が達成された。

だが大きな問題点も残っている。国連大学の研究員は世界各地で行われているプロジェクトに参加するため航空機で移動する際、膨大な量のCO2を排出しているのである。まずはこの量を計算することが最初の難関だった。

計算と分析

国連大学では2004年から2008年にかけてのスタッフの出張のデータを分析してみた。この分析に含まれるのは国際線のみである。それぞれのフライトをテラパス社によるオンラインのカーボンカリキュレーター(二酸化炭素計算機)を使用して算定した。乗り継ぎや途中降機の場合も計算に含めた。

最終的な数値は概算に過ぎないが、それぞれの移動ごとにどのくらいのCO2が排出されるのかをおおよそで捉えることができる。結果は興味深く、驚くべきものでもあった。国際便で移動する国連大学スタッフのマイレージの合計は、2004年から2008年の間に着々と減少していた。2008年に関する最新の分析では移動の総距離は30%も減少していた。これらの移動によるCO2排出量は405,822 kgで2007年と比べると33% の減少だった。

2008年のトラベルデータによると国際便の利用は389 件で、前年より12% 減少していた。そのうち247 件は先進国への移動、132件が開発途上国、10件が後発開発途上国への移動だった。この理由のひとつは、ほとんどの国連機関が先進国に本部を置いており(ニューヨーク、パリ、ジュネーブ)、そこで国連の定例会議が行われていることである。さらに、ほとんどの国連大学研究所も先進国に置かれている。とは言え、対処能力向上のための支援が最も必要とされている開発途上国、後発開発途上国への派遣を増やす必要があるのは明らかである。

これに加え、利用するフライトの総数を減らし、スタッフの平均CO2排出量を減らすことも必要である。現在の平均一人当たりのCO2排出量は5,411 kgである。一般市民の平均年間CO2排出量が4,080kgなのに比べると、相当多いことがわかる。 この数字は国際連合環境計画(UNEP) のe-book Kick the Habit: A UN Guide to Climate Neutrality(悪習を絶とう:国連クライメイト・ニュートラリティに関するガイド)に報告されている。

行動、削減、オフセット

確かに国連大学は変わりつつあり、CO2排出量を削減してはいる。しかし出張のための優先順位付けや、ビデオ会議、ネット会議などの利用など、まだまだできることはあるはずだ。(インターネット接続が良くないのは開発途上国や後発開発途上国だということを考慮に入れるべきだろう)
どうしても現地に赴く必要がある場合には、乗り継ぎ便より直行便に乗るべきだ。飛行機は一定の高度で飛んでいるときより、離着陸時に最も多くの燃料を使うため、乗り継ぎがあるたびにCO2排出量は大幅に増えるのである。UNEPのKick the Habitによると、席はエコノミークラスのみを使用すべきだ。 エコノミーなら1,000kmの飛行に対しCO2排出量は220kgに過ぎないが、ビジネスクラスでは510kgに、ファーストクラスでは770 kgにまで跳ね上がる。

国連では航空機を選ぶにあたって、費用や利便性、所要時間などが主要な基準とはなるが、国際線においてはCO2排出量も考慮に含めるべきだ。いくつかの航空会社では機体に改良を加え、燃料効率を上げている。

国連大学のスタッフは、意識的に出張に優先順位をつけるべきである。国連大学の使命に見合う必要性や目的に基づいて移動することが大事だ。 これを徹底することで、出張に伴うCO2排出量は最低限まで削減できるはずであり、オフセットによるカーボンニュートラルも可能になるはずだ。

会うべきか 会わざるべきか

UNEPのグリーンミーティングガイドによると「国連機構は毎年膨大な数の会議を開催している張本人である」。例えば12月7日~18日にかけて行われるCOP15には数千人もの会議参加者やオブザーバーたちが集結する。国連のプログラムや活動の性質を考えれば、ある程度は仕方がない。国連は切迫した環境問題、社会問題、経済問題を解決するため国際協力を促進する場なのだから。

これらの問題を解決するにはかなりの技術と外交手腕が必要であるから、新しい電気通信手段は、昔ながらの対面式の会議より難しいかもしれない。しかし対面することが必ずしも必要ではない場合も少なくはないのだ。(特に既に信頼関係が出来上がっている場合や、研修が中心の会議など)
排出量削減活動をさらに前進させるには、それぞれの会議はその成果によって評価されるべきだ。成果にはプロジェクト型の活動などでは特に重要であるネットワーキングの機会なども含める。こういった評価は難しく複雑であるが、やってみる価値はあるだろう。

ビジョンとモチベーションを持って行動する

国連でクライメイト・ニュートラルを達成するには、全ての機関、基金、プログラムが温室効果ガス排出量を減らし、残りの分をオフセットしてゼロを達成しなければならない。

国連のシステムの中ではUNEP が最も早く2008年1月にクライメイト・ニュートラルを達成した。どうやって成し得たか?第一に排出量が算出され、様々な方針が見直された。これらは(a) フレックス制の勤務形態や在宅勤務を奨励すること (b) 世界各国のUNEP施設における再生可能なエネルギー源を利用すること、(c) ナイロビに2011年完成予定のグリーンオフィスを建設すること (d) すべての会議をCO2排出量とその他の環境影響を削減するような会議とするようめざすこと、だった。

第二に、(削減できなかった)排出量の残りをオフセットに投資することで相殺した。(UNEP Climate Neutral Strategyをご覧ください) 一般的な購入方法で、様々なオフセットプロジェクトを選抜したのだ。購入の際は、再生可能なエネルギーを使い、エンドユーザーのエネルギー効率がよく、バイオマスやバイオガスを利用するといった、後発開発途上国でのプロジェクトを優先した。それらはガス排出量削減だけでなく貧困や環境の改善全般に貢献するようなプロジェクトである。

エコセキュリティーズ社(温暖化ガス排出権取引の大手)は、インド(風力)とニカラグア(エネルギー/バイオマス)で11,508もの認可プロジェクト契約をおよそ225,800USドルで受注した。

今やこの地球に住む人々の大多数は、気候が変化していることを理解している。炭素排出量を減らし気候変動に適応することは、私たち一人ひとりの課題だ。国連は他者も同様に行動するための模範となるべきなのである。

翻訳:石原明子

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気候が変わり、人も変わる by カール・ エストラレン and タチアナ・ チェルナフスカヤ is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

著者

カール・ エストラレン

東京工業大学

カール・レナン・エストラレンは2009年8月から10月にかけて国連大学のサステイナビリティと平和研究所におけるグローバルチェンジとサステイナビリティプログラムの研修を受けた。現在は東京工業大学国際開発工学部院に所属している。研究対象は水処理用途における高度酸化プロセス、残留性有機汚染物質の管理と処理、二酸化炭素排出量削減による気候変動緩和である。

タチアナ・チェルナフスカヤは現在、オーストリアのウィーン経済・経営大学(Wirtschaftsuniversität) の経済地理学・経済情報科学科で博士課程に所属している。

研究対象は、BRICS経済のイノベーションシステムにおける未来の官民パートナーシップ。未来志向の研究においてその洞察力を発揮している。最近国連大学のサステイナビリティと平和研究所において研修を終え、今後も国連での経験を積み、研究課題を追究したいと希望している。