火を再発明する

ロッキーマウンテン研究所(RMI)は1982年の創設以来、時代に変化をもたらす発明で、世界をより豊かに、公平に、素晴しく、そして安全にするため尽力してきた。

とりわけ、自動車、トラック、飛行機の燃料効率を3倍に向上させることに大きく貢献した。また、電気・水の効率的利用、再生可能エネルギーの普及、地域の経済開発に関する概念的・実践的な礎を築き上げた。気候変動、石油依存、世界の不安定、核拡散防止や脆弱なインフラなどの問題を解決する収益性のあるアプローチを考案し、(ポール・ホーケン氏と共に)自然の資本主義を育んできた。これらすべての蓄積が、私たちの次の計画へとつながっている。

RMIの次の大仕事は、その27年間の革新の集大成であり、これまでで最も意欲的で重要な事業へと世界を引き込むだろう。それは、多くの人々が産業革命以降行ってきたエネルギーの獲得と使用の方法を変えるという試みである。

私たちは、蔓延する浪費からエレガントな倹約への迅速な移行を目指している。怠慢により不足を引き起こすよりも、デザインで豊かさをもたらし、エネルギー資本を売る生活からエネルギー収入に基づくより良い生活へと世界を変えていく。要するに、私たちは「火を再発明」しようとしているのだ。企業を中心として、石油、石炭およびガスを効率化や再生可能エネルギーに置き換えていくのだ。

効率化+太陽:エネルギーの主脈

火を再発明するためには、エネルギーの2つの源泉に注目する必要がある。効率化と太陽である。エネルギーの効率的な利用は、目に見えづらく理解されにくいプロセスであるため、一般的に見落とされがちだが、最も安く、良質で迅速に着手できる、経済全体の中でも最大のチャンスである。効率化により米国の石油とガスの消費量は現在の半分に、費用は約5分の1にまで節約できる。おそらく電気使用量も4 分の3、その費用を8分の1に抑えることが可能だろう。

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RMIは膨大な「効率化資源」を迅速に拡大・獲得しようとしている。私たちの10xE(ファクターテンエンジニアリング)プロジェクトでは、システム全体の設計統合がどのようにしてエネルギー貯蓄を増やす(10倍になる場合もある)一方で、そのコストを縮減していくかを示している。

コストを節約しながらエネルギーを利用すれば、供給は改善される。そしてエネルギーの効率的利用と再生可能エネルギーの供給の間に重要な相乗効果が生じる。太陽は、世界が1年間にわたって文明生活を営むのに必要なエネルギーを70分間ごとに地球に供給している。地面1平方メートルが1年間で太陽から吸収する平均エネルギー量は、石油1バレルに相当する。そして太陽は富裕国も貧困国も関係なく、確実に、自由に、そして比較的公平に世界中に降り注ぐ。

人工密度の高い都市に覆われている地球面積のうち、その1%の上にあるビルの屋上に、発電効率20パーセントの太陽電池を取り付ければ、理論上は世界の電力需要20回分を確保できる。太陽エネルギーは常に備蓄されていて、決して枯渇することがなく(夜の間も太陽はどこかで輝き続けているのだから)、安全である上に、テロリストの陰謀に利用されて私たちを脅かすこともない。

太陽はとりわけ夜間に風を生み、風力は世界需要の35倍以上の電力を供給する可能性を秘めており、その費用効果も高い。太陽と風力は世界のエネルギー資源として最も急速に成長している。風力発電は、米国では2008年、ヨーロッパでは2007年から2008年にかけて、発電キャパシティの向上に最大の貢献を果たした。2008年に(大型水力発電ダムを除く方法で)作り出された世界の再生可能エネルギー400億ワットのうち、6億ワットが太陽、27億ワットが風力によって供給された。

太陽は、食糧や繊維の生産を妨げたり、自然の生態系を破壊することなく光合成を促し、そこからバイオ燃料が作られる。太陽熱は、私たちが地球で暮らす上で必要な暖房効果の98%を担っている。太陽熱なしでは、地球上の平均気温は15℃ではなくマイナス269℃となっていたであろう。

火の再発明とは太陽の優しい熱を効率的に使用し、乗り物、住宅、工場、近隣、飛行機、電力システム、船、機械、トラック、都市で活用することである。これら全ての機器、システムおよび社会秩序がエネルギーと情報を共有し相互に価値を生み出すのである。

情報技術を活用する

しかし、火の再発明の筋書きで重視されるのは、効率化、太陽、風力、その他の再生可能エネルギーばかりではない。私の著書「ソフト・エネルギー・パス -永続的平和への道-」が出版されてから約30年が経過したが、この間に強力な新しい力が社会を再形成し始めた。近代的情報技術(IT)である。ITを活用すれば、化石燃料から低燃費燃料および再生可能エネルギーへの飛躍は加速するだろう。

30年前、電力会社のトップの中には、家庭や工場の電力消費に影響を与えようと考えた人はほとんどいなかった。しかし、現在では多くの優秀な経営者たちがこれを実践しようしている。顧客と情報を共有し、よりスマートな選択を提案することで、電力の使用時間帯を調整し、コストや温室効果ガス排出量を削減できる場所(プールや温水器、エアコン、製造装置、商業用照明など)を探し出そうと懸命だ。連邦エネルギー規制委員会は、すでに1,880億ワットにもおよぶこの様な「需要応答」型エネルギー源を国内に見出している。これ以上のエネルギーが埋もれている可能性もある。

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情報技術は、さらに、再生可能エネルギーが互いに、そして電力網に順応する過程に変化をもたらした。世間では、太陽電池や風力は天候に左右されるため有用性が低いとされている。(これは他の電力源にも言えることだ:様々なタイプの発電所は、サイズ、頻度、稼働時間、予測可能性、障害の原因が異なるにすぎない)

RMIのアナリストは独自のシミュレーションツールを開発し、このように変化しやすい再生可能エネルギーをどうやって発電に運用していくかを研究している。風が吹き、太陽が輝いている日に、石炭やガスの燃焼で発電をしないためである。私たちの初期の調査結果は、変化しやすい再生可能エネルギーを大量に電力網に取り込むためには、新しい技術ではなく、新しい取り組みと処理手順が必要であることを示唆している。電力会社も、現在では断続的に稼動する巨大発電所を統合し、変動する需要に対応している。新しい取り組みによって良いサービスを安価で提供し、リスクを軽減しながら収益を上げていかなければならない。

ヨーロッパの一部ではすでに行なわれているが、RMIは現在、提携する電力会社に理解を深めてもらうため、お互いのビジョンの統合を進めている。両者が共有しようとしているのは、効率的で、多様、分散型、再生可能、高い回復力および経済性や環境への配慮を備えた電力システムの形や、その安定性、経済性、移行過程に関する実践的なビジョンである。

進化的・革命的瞬間

現代社会は化石燃料で成り立っている。化石燃料こそが私たちの社会の富と力の源だ。しかし、私たちの安全、お金、生活圏への負担が極限まで増えるにつれ、私たちは一つのシステムが消え、新たなシステムが生まれようとしているのを目撃しているのだ。

現在、歴史は進化的かつ革命的な局面にある。火を再発明するためのツールは進化し、ついに何十年もの間温められてきたビジョンに追いついた。そして、私たちがようやく答えを想像するだけではなく、培った知識を統合し応用して、実際に石油や石炭やガスを排除しようという段階に来ていることは革命的でもある。世界に向かって火の再発明の必要性を訴える必要はもうない。代わりに、私たちは力を合わせてこれを実現していかなくてはならない。

だからこそ、火の再発明は「壮大な統合」であり、数十年分にもおよぶ知的資本を、私たち自身の知識も他社のそれも含め、体系的に集約し、化石燃料の向こう側に続く道を実践的な地図に示していかねばならない。そして、世界がこの道を適切なスピードで進んでいくのを後押ししなければならない。火の再発明では、石油や石炭からの離脱を5年前よりも遥かに魅力的にした、近年の進歩を統合し、世界状況を視野に入れながら、米国を拠点に、効率的で再生可能な化石燃料の代替物を、強力で弾力のある多層的なエネルギー網へと紡いでいく。

人類の歴史において最も複雑なジグソーパズルのピースはあるべき場所に収まろうとしている。RMIが想像する世界が形作られ始めている。そして、私たちはその実現のために日々まい進している。新しい世界の形成を少しでも急がなければならない。なぜなら、ダナ(ドネラ)メドウズ氏も述べているように、人類には「今から始めて何とか間に合う時間」しか残されていないのだから。

翻訳:森泉綾美

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Reproduced with permission.

著者

エイモリー B.ロビンスはロッキーマウンテン研究所の共同設立者であり、同研究所の所長、主任研究員である。米国出身、現在61歳。コンサルタント、実験物理学者であり、1993年度マッカーサー・フェローでもあるロビンスは、50以上の国々で、エネルギー、資源、環境、開発、および安全保障の分野で35年間にわたり活躍している。このうち14年間は活動の拠点をイギリスにおいた。エネルギー分野における世界的なリーダーであり、とりわけエネルギーの効率的利用と持続可能な供給を専門分野としている。統合的デザインにおいて創造力に富んだ革新を起こしている。