気候サミットにおける石炭産業の精査

気候会議の会期中に石炭サミットを開催することを決めたポーランド政府に抗議するデモが行われる中、ワルシャワでの会議の議題は石炭に集中している。

安全と考えられる気温上昇幅を産業革命前のレベルから最高2℃までとする国際的に合意された設定値を超えないためには、石炭は地中に埋蔵されたままにしなければならないと、科学者、国連関係者、環境団体は訴えた。

気候変動に関する国連枠組条約の事務局長、クリスティアーナ・フィゲレス氏は、石炭・気候サミットで演説するために気候会議を退席し、サミットに集まった石炭企業の最高責任者たちには耳の痛いメッセージを送った。

「すべての人のために石炭産業は急速かつ劇的に変わらなければならないことを伝えるために、私はここに来ました」と彼女は出席者たちに語った。石炭の継続的利用は二酸化炭素の回収と貯留が行われる場合に限り、それができなければ、世界は風力や太陽光エネルギーに転換すべきだ。フィゲレス氏によれば、風力や太陽光による発電コストは世界の多くの地域ですでに競争力を有している。

「石油、ガス、エネルギー技術の主要企業の中には、すでに再生可能エネルギーに投資している企業もあります。お集まりの皆さんの中で、そのような投資をまだ行っていない方々には、ぜひ前例に倣っていただきたい。石炭を超えて投資構成を多様化することによって、汚染を低減し、国民の健康を強化し、エネルギー安全保障を高め、新しい雇用を創出するクリーンなエネルギーを、皆さんも生産することができるのです」と、フィゲレス氏は産業代表者たちに要請した。

銀行の「偽善」

石炭サミットが開催される中、世界有数の気候およびエネルギー科学者ら27人が、二酸化炭素の排出を回収しない新たな石炭発電所への投資は容認できないという声明を発表した。

声明文に名を連ねた専門家の1人で、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の元共同議長であるバート・メッツ博士は、気候を安全な状態に保つためには、最も効率性の高い石炭発電所でさえ容認できないと語った。そのような石炭発電所は、ガスの2倍、また再生可能エネルギーの15倍の汚染源を発するという。化石燃料に代わる選択肢はすぐに利用可能であり、費用も手頃であると彼は語った。

気候会議のポーランド代表団長のベアタ・ヤチェフスキ氏は、気候会議と同時期に石炭サミットを開催した同国政府の決定を擁護し、「石炭は解決策の一端を担わなくてはなりません」と語った。ポーランドは電力の86%を石炭で生産している。

環境活動家たちは、自らが「銀行の偽善」と呼ぶ状況を明らかにした。すなわち、銀行は新しい石炭採掘場に融資し、株式発行を引き受け、さらには銀行自体が採掘場を所有するために、何十億ドルもの資金を提供しながら、気候を大切に考えていると主張するのだ。

Banking on Coal(石炭に関する銀行取引)』という報告書は、「地球の気候システムと人類が共有する未来を損なう金融機関のリストを提供している」。報告書によると、アメリカ、中国、イギリスの銀行が現在、石炭への投資額が最も多く、すべての投資が利益を生んだ場合、地球温暖化の大損害から地球を救うという希望は一切なくなるという。

報告書の執筆者の1人、ヘッファ・シュッキング氏は次のように語った。「気候変動について言えば、数多くの国の銀行のうち、わずか24行に満たない銀行が、私たちを地獄に向かう高速道路に乗せているという状況には、あ然とさせられます。大手銀行はすでに、現実の経済をメチャクチャにできるということを示しました。そして今、銀行は気候を瀬戸際へ追い込めるという状況を私たちは目の当たりにしているのです」

先頭はアメリカの銀行

京都議定書が2005年に発効して以来、アメリカの4銀行、すなわちシティバンク、モルガン・スタンレー銀行、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェース銀行が、石炭への最大の投資を行ってきた。4銀行を合わせると、石炭採掘に240億ユーロ以上を投資してきた。

「2012年の石炭採掘産業への銀行の財政支援は、京都議定書が発効した2005年と比べ、397パーセント高かった」と報告書は記している。

報告書は銀行の「偽善」を明らかにするために、一部の銀行が地球に大きな損害を与える化石燃料への投資を行いながら、カーボン・ニュートラルだと自称していることを示した。シティバンクは「気候変動と持続可能性のために最も革新的な投資銀行」であると主張している。モルガン・スタンレー銀行は「あなたの暮らしをよりグリーンにし、気候変動への取り組みを支援」するという。バンク・オブ・アメリカは「低炭素経済に資金提供している」と自称している。

こうした偽善はアメリカの銀行に限ったことではない。なぜなら化石燃料に融資している20の主要銀行のほとんどが、再生可能エネルギーやエネルギー効率性への、割合としては小規模な投資を行っていると言及しており、大規模な石炭開発への加担を見つかりにくくしているのだ。20の銀行はいずれも、責任ある融資機関であると自称している。

台頭する中国

報告書が「石炭銀行」と呼ぶ銀行のリストで、上位20位の残りをほぼ占めているのは、ヨーロッパと中国の銀行である。研究者は、2011年以来、中国の銀行は石炭への投資を強化し、石炭投資レースで他の銀行を追い抜いた結果、上位7席のうち4席を占めたと指摘している。

こうした状況にもかかわらず、アメリカは過去2年間にわたって最大の石炭投資国であり、直接融資あるいは株式や債権の引き受けに150億ユーロ以上を費やしている。2位の中国は150億ユーロをわずかに下回り、3位のイギリスは80億ユーロ、4位のフランスは50億ユーロをわずかに下回っている。

2011年~2013年中旬の石炭銀行トップ20

  1. モルガン・スタンレー銀行
  2. シティバンク
  3. 中国工商銀行
  4. バンク・オブ・アメリカ
  5. 中国建設銀行
  6. 中国農業銀行
  7. 中国銀行
  8. ロイヤルバンク・オブ・スコットランド
  9. BNPパリバ
  10. 中国国家開発銀行
  11. JPモルガン・チェース銀行
  12. スタンダードチャータード銀行
  13. バークレイズ銀行
  14. ドイツ銀行
  15. UBS銀行
  16. クレディ・スイス銀行
  17. 三菱UFJフィナンシャル・グループ
  18. 香港上海銀行
  19. 三井住友銀行
  20. ゴールドマン・サックス

本稿は、ポール・ブラウン氏の原稿にOur World 2.0チームによる若干の加筆をした上で掲載しています。

翻訳:髙﨑文子

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著者

ポール・ブラウン氏は Climate News Network の共同編集者である。イギリスの地方紙および全国紙で新聞記者やニュース編集者として働いた40年の経験を持つ。『ガーディアン』紙で24年間働いた後、2005年8月に退職した。同紙を離れるまでの16年間は環境担当記者として、特に気候変動に重点を置き、幅広い問題を取り上げた。環境問題に関する8冊の著作がある。現在は『ガーディアン』紙でウィークリーコラムを執筆しているほか、フリーランスで執筆活動をしている。テレビのドキュメンタリー番組の脚本を書いた経験があり、ラジオ番組への出演も数多い。彼はケンブリッジ大学ウルフソン・カレッジのフェローであり、Guardian Foundation(ガーディアン財団)の活動の一環で東欧およびアジアでジャーナリズムを教えている。