世界水の日:水とエネルギーのつながりに注目する

水とエネルギーの根深い関係は、国連世界水の日(3月22日)の主要テーマだ。

私たちは転機を迎えている。この転機に、水とエネルギーのつながりの重要性を認識することが未来の課題に取り組む上で役立つ。国連の予測によれば、世界人口は2030年までに、今より少なくとも35%多くの食料と、40%多くの水と、50%多くのエネルギーが必要となる。現在すでに7億6800万人が清潔な水資源を利用できず、25億人は適切な衛生設備を持たず、13億人は電気を使えない状況だ。

「水とエネルギーは世界が抱える最も顕著な課題の一部です。今年の世界水の日は、こうした問題に世界の関心を引きつけることに重点的に取り組みます」と世界気象機関の事務局長であり、国連水関連機関調整委員会(UN-Water)の議長を務めるミシェル・ジャロー氏は語った。UN-Waterは世界水の日や淡水に関連する国連の取り組みを調整している。

「これらの問題には、現時点だけではなく、ポスト2015年の開発議論においても早急に注意を向けなければなりません。現状は受け入れられない状況です。多くの場合、水と衛生を確保できない人々はエネルギーを確保できない人々と同じなのです」とジャロー氏は語った。

本日、UN-Waterの旗艦報告書が発表された。この報告書は世界水アセスメント計画(国連教育科学文化機関、ユネスコが主催し主導する計画)が作成し、調整を行った。世界の淡水資源に関する現況報告書であり、水とエネルギーの優先事項へのアプローチを認識して統合する政策や規制の枠組みの必要性を浮き彫りにしている。

『世界水発展報告書(WWDR)』は、2003年から2012年までに3年ごとに発表された報告書である。国際社会の高い関心により、今年は年刊の報告書を発表する年になった。『WWDR 2014』は、いかに水関連の問題や選択がエネルギーに影響を与え、またその逆もあるという点を強調している。例えば、干ばつはエネルギー生産を減少させるが、その一方で、電力を利用できない状況が、かんがいの可能性を狭めてしまう。報告書は、産業用の総取水量の約75%がエネルギー生産に利用されていると記している。公共料金も、こうした相互依存性を示している。つまり、(よくあることだが)水を経費よりも安く売るために補助金を投入すると、エネルギー生産者(つまり主要な水消費者)が節水する傾向は低くなる。結果として、エネルギー補助金は水の使用量を増加させてしまう。

報告書は、政治的ガバナンスを調整し、実際のコストと環境への影響を水とエネルギーの価格に反映させることの重要性を強調している。

「エネルギーと水は世界の開発アジェンダの最優先事項です」と、国連大学(UNU)学長のデイビッド・マローン氏は語った。UNUは、UN-Waterに代わり、国連工業開発機関(UNIDO)と共に2014年の世界水の日のコーディネーターを務めた。

「水とエネルギーのつながりには現在、著しい政策の隔たりが存在します。そして国連は、エビデンスと政策関連のガイダンスを提供する上で有益な役割を果たします。世界水の日を通じて、私たちは政策決定者、ステークホルダー、実務実行者に、水とエネルギーの結びつきや、考え得る相乗作用、トレードオフについて伝えようとしています。また、水とエネルギー両方の優先事項に取り組む適切な対応と規制の枠組みの必要性を強調したいと考えます。UNUの見地から言えば、エネルギーと水の課題に対する考えられる解決策に関して、より多くの議論と双方向の対話を促進することが重要です」

UNIDOの李勇(リー・ヨン)事務局長は、包摂的で持続可能な産業発展にとっての水とエネルギーの重要性を強調した。

「経済的側面と、とりわけ生産業を含む産業の役割を、ポスト2015の世界の開発優先事項に統合することは、今日強く求められています。生産業界での環境に健全な介入策は非常に効果的で、環境劣化を著しく減らせるということは、経験的に示されています。私は、包摂的で持続可能な産業発展が、経済、社会、環境といった側面をうまく統合する主要な要因となることを確信しています」とリー氏は語った。

水とエネルギーのつながりに関する事実

世界的に

水に関する事実

世界的に

エネルギーに関する事実

世界的に

翻訳:髙﨑文子

Creative Commons License
世界水の日:水とエネルギーのつながりに注目する by キャロル・スミス is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 4.0 International License.

著者

キャロル・スミスは環境保護に強い関心を寄せるジャーナリスト。グローバル規模の問題に公平かつ持続可能なソリューションを探るうえでより多くの人たちに参加してもらうには、入手しやすい方法で前向きに情報を示すことがカギになると考えている。カナダ、モントリオール出身のキャロルは東京在住中の2008年に国連大学メディアセンターの一員となり、現在はカナダのバンクーバーから引き続き同センターの業務に協力している。