2008年世界エネルギー展望

国際エネルギー機関(IEA)が世界エネルギー展望 (The World Energy Outlook)の、2008年版を発表した。この報告書の結果に、我々は果たして笑うべきか泣くべきか。これは、我々の見方によっては、楽観的にも悲観的にも解釈できる問題なのだ。

報告書は、2030年までに世界のエネルギー需要が伸び続け、現在より45%増加するとの見方を示している。年率平均で1.6%増加し、今後も石炭が主たるエネルギー源であり続けると予想される。

石油に関しても、1日当たり1億600万バレルの増産を見込んでおり、現消費量の8500万バレルに比べると、これは大幅な増加だ。拡大する需要を満たすには、サウジアラビアの現生産量の6倍に当たる供給が必要になるだろう。

さらに、現存する油田から採掘される原油生産量が、年率約6.7%の割合で急速に減速していることもエネルギー事情を悪化させている。需要と供給の格差を埋めるためには、新規油田の開発に加え、石油燃料代替資源や液体天然ガスの開発も必要になってくる。

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2030年までの世界の石油生産予測

困難な道

石油産業の展望が変化する中、石油生産国の国営石油会社の存在感が増し、従来の石油メジャーの影響力が薄れ始めている。IEAは、石油輸出国機構(OPEC)が増産に向け十分な投資をすれば、OPECの石油生産が大幅に伸びるだろうとの見方を示している。

「非OPEC加盟国による石油生産は、すでに停滞しており、次の10年の半ば頃には落ち込み始めると予測されている。」

また、2015年までに新たに3000万バレルの増産が必要とされており、適切な投資なくして、石油危機を回避することは難しくなる。今後は、石油価格の急騰が予想され、景気低迷が回復すれば、2015年までに平均価格は1バレル100ドルに達するとの試算もある。石油が安く手に入った時代は終焉を告げた、とIEAは協調する。

IEAは(現段階では)ピークオイル論を支持しているわけなく、むしろ「問題は資源不足ではなく、投資不足だ」との見方を示している。OPEC加盟国には十分な備蓄があり、開発コストも低く抑えられるとの考えだ。

もう一つの明白なメッセージ

この報告書で注目すべきは、「石油需要を維持していく上での不安の高まり」に加えて、「近年のエネルギー供給と消費の傾向が明らかに持続不可能になっている」と指摘している点にある。

そこで問題となるのは、「我々がどう行動すべきか」だ。

世界のエネルギー展望2008年版は、エネルギーシステムの本格的な脱炭素化を訴え、2つのシナリオを提示している。ひとつは大気中の二酸化炭素(CO2)濃度を550ppmに、もうひとつは450ppmに安定した場合だ。いずれの場合も巨額投資が不可欠で、増え続けるエネルギー需要を満たすために燃料混合に転嫁する、または需要の伸びを抑えていかなくてはならない。

これらを実現させるためには、来年コペンハーゲンで開催される温暖化会議で、気候変動に対応する有効な体制を構築しなければならない。IEAは楽観視しているように見えるが、懸念も拭えないのが現実だ。

「全世界の政府、生産国、消費国は、独自にまたは協力し合い、よりクリーンで、優れた、かつ競争力のあるエネルギーシステムを構築する力を持っている。我々に残された時間は少ない。今こそ行動に移す時なのだ。」

さあ、すぐに始めよう。あなたにはこの新しい活動の兆しが見えているだろうか?

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2008年世界エネルギー展望 by ブレンダン・バレット is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

ブレンダン・バレットは1984年からイギリス原子力発電所の環境アセスメントに従事して以来、環境分野に従事してきました。環境スペシャリスト、都市設計者でもあり、コミュニケーションや教育をはじめ環境問題の研究のため、ITを駆使しています。

博士課程を終了後、1997年から国連大学に加わり、2002年に国連大学メディアスタジオを立ち上げました。

IUCN(国際自然保護連合)教育・コミュニケーション委員会のメンバーでもあり、オーストラリア環境研究ジャーナルやサービス・リサーチ・ジャーナルの国際編集顧問委員会のメンバーとして活躍。2002年から2005年には情報社会サミットで、国連大学の中心的役割を果たしました。

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