ポスト・コロナの世界でSDG 6達成への取り組みを加速

SDGs目標6「全ての人にきれいな水と公衆衛生を」に向けた世界の進捗は極めて不十分だ。

最新のSDGs達成度評価によれば、今なお20億人が安全に管理された飲料水をず、36億人が公衆衛生サービスを、30億人が基本的な衛生サービスさえも享受できていない。

水を媒介とする感染症は今も世界中で多くの被害をもたらしているが、特に途上国の一部地域で、その影響は深刻である。

この問題に対処するため、国連は2020年にSDG 6 グローバル・アクセラレーション・フレームワークを立ち上げ、進捗の加速を図っている。このフレームワークは、各国の政策と財源を調整し、あらゆるレベルで活動を拡大するためのロードマップであるが、根本的な欠陥が2つあり、その解消が必要である。

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響

第一に、このフレームワークでは、必要な場所に安全な飲料水や公衆衛生サービス、衛生サービスを届けるための手段に対し、パンデミックが及ぼした影響の多くが見落とされている。

パンデミックは、各国の財政的、政治的、機関・制度的構造や社会組織を大きく傷つけた。多くの国で債務の増加やインフレが進み、海外からの投資は2019年から2021年までの間に35パーセントも減少した。

重要設備の整備を行う能力もコロナ禍で大きく損なわれ、水道・公衆衛生インフラ整備計画の完成に遅れが生じたことで、既に資金不足に苦しんでいた途上国のサービスが、さらに弱体化することとなった。

真に現状を変え得るサステイナビリティ・アジェンダの一環として、世界的及び各国の財政的、政治的、機関・制度的構造を作り直し、社会組織を復興させる必要がある。

SDGsの連関性の過小評価

第二に、SDG 6 グローバル・アクセラレーション・フレームワークでは、SDGs間の連関性を強化することで得られる可能性が過小評価されている。SDG 6と他のSDGsとのつながりの重要性を認識しながら、水・公衆衛生分野における従来型の政策決定方法を抜本的に変えることは求めていないのだ。

相互の関連性を考慮せず、それぞれの目標に個別に取り組むことのリスクは、SDGs達成に向けた世界的プロセスで早期に警告されている。加えて、SDGsの目標間の連関性は、状況毎に異なり、地理や統治あるいは社会・経済状況など、いくつもの要因に左右される。

現在の景気停滞により、2022年にはさらに2億6300万人が極度の貧困に追いやられる恐れがある。この数は、ドイツ、フランス、英国、スペインを合わせた人口にほぼ匹敵する。また、保健や教育、ジェンダー、水・公衆衛生など、持続可能な開発のさまざまな側面で、さらなる難題が生じかねない。

政策の一貫性は、持続可能な開発に不可欠である。サステイナビリティのためのポスト・コロナ枠組みでは、複数の分野にまたがった相互支援的な政策が求められている。各国は、単にSDGs間の連関性を特定するだけでなく、それを強化し、それに基づいて行動し始めなければならない。

ギャップを埋める2つのアクション

パンデミックの影響により、より連携の取れた複数部門間の政策の必要性が明らかに高まっている。来年開催される2023年国連水会議には国連加盟国が集い、2018年から2028年までの「水の国際行動の10年」を見直すことになっている。これは、社会、経済、環境行動の活発化に向けた取り組みである。

各国の政策決定者や開発関係者には、下記の提言に沿った行動が求められる:

1. ポスト・コロナでは、重要なSDG 6の諸ターゲットを優先させること。つまり、現在の不十分な実施手段を作り直し、強化して、2030年までに女性や少女たち、移民、都市貧困層、学校、病院など、最も弱い立場にある人々に飲料水、公衆衛生、衛生サービスを届けるためにリソースを集中させるという大胆な約束を携えて2023年国連水会議に臨むということである。

2. 政策や実施計画のあらゆるレベルにおいて、SDGs間の連関性が持つ可能性を引き出すこと。SDGsの目標6の達成を加速させることは、特に保健や教育、食料、ジェンダーの平等、エネルギー、気候変動に関する目標など、他の多くのSDGsを後押しする。財源が乏しく能力が不十分であるという状況では、各国は、連関性の強いSDGsを優先させることで、複数分野にまたがって成果を上げることができる。

私たちは、持続可能な開発に向けた必要条件を後押しするという公約を世界中でしばしば見聞きしてきた。パンデミック後の世界では、水・公衆衛生分野における進捗は、多くのメリットをもたらす多面的な目的を有するに至った。そうしたメリットを実現する時は、今だ。

•••

この記事は最初にInter Press Service Newsに掲載され、同社の許可を得て転載しています。Inter Press Service Newsウェブサイトに掲載された記事はこちらからご覧ください。

著者