Our World 2.0 — 2009 年を振り返って

2009年、それは世界が気候変動条約の締結に苦闘し危うく失敗に終わる寸前であった年として記憶に残るだろう。

2007年のバリサミット、米国でのバラク・オバマ大統領就任で勢いづいた機運、そして西暦2000年の最初の10年を締めくくるこの1年は願いの年であったと言える。

この1年の間、私たちの期待は一丸となり膨らんだ。しかし、結局は今月初旬にコペンハーゲンで開催されたCOP15の多国間交渉における現実的政治という名の壁に阻まれてしまった。温室効果ガスの濃度を危険値以下に抑え、将来の気温上昇を2℃以内に維持する。世界のリーダー達はその意欲的な合意に達することが出来ず、多くの人々がひどく失望した。

果たして私たちは窮地に立たされたのか?進行の一途を辿る気候変動を食い止めるチャンスを逃してしまったのか?残された選択肢は?重要な問題を残したまま1年が終わる。この先何が起こるのか真剣に検討する時期であるのは確かだが、ここで私たちOur World 2.0チームが提唱する2010年の展望は「解決策がないわけではない、冷静になろう」である。

希望を呼び起こす

Our World 2.0ウェブマガジンの主要目的は何百万という人々とつながり、気候変動、ピークオイル、食糧安全保障、生物多様性といった分野においてポジティブな変化を起こすため、行動を起こすきっかけをつくることだ。変革を起こし知識を結合させることがどのように、そしてなぜより良い世界の構築につながるのか。Our World 2.0では、それを明らかにするため全力を尽くしている。

この1年、様々な現場レポートを特集できたことを非常に嬉しく思う。ボルネオグアテマラ中国などで変化を起こそうとしている市民によるもの。ケニアとイギリスの青年活動チームが文化や国境を越えて協力する様子などである。さらに、地球温暖化により直接的な被害を最も受けている人々(その多くは先住民社会である)も環境リスクを対処する伝統的方法について、とても大切な話を聞かせてくれた。

これらの話には、環境や社会的議論に人々を直接関わらせる力がある。政府機関や政府間組織にはなかなかできないことだ。

草の根レベルであること、そしてシンプルであることの方が個人の心に響くようだ。2009年度のレポートで最も人気があったのは、プラスチックを油化している起業家のビデオブリーフと記事。同様に、最もコメントが寄せられた持続不可能な紙コップの使用に関する記事は、より持続可能な生活を実現するちょっとした方法に焦点を当てている。

変革を起こすための活動

私たちが将来に明るい兆しを感じることができるのは(政治的意思は弱まりつつあるが)、Our World 2.0が重要視し、そして世界が取り組む課題の本質に対し人々の関心が高まり、個人や市民の集団的活動が増えたおかげである。

この1年は急速に拡大したオンライン活動家の取組みを総括し、地球が直面する問題について芸術分野のコミュニティがどのようにその事実を広めたのか紹介した。

世界規模で変革運動が高まっているのが食糧分野であることは間違いない。有機栽培、地元産、旬の食材を食べることで持続不可能な食糧生産構造の問題に取り組むことの重要性を様々な地域の人々が強調している。

世界では議論の中心が気候変動問題一色のようだ。しかし、ピークオイルの問題も一段と顕著になり、気候変動と同等に深刻であると考える人々もいる。トランジション(移行)・ムーブメントの話を聞き、安価で容易に手に入る石油を超越する未来の展望についてもこの1年で取り上げた。

世界の説明責任

そのようなムーブメントの高まりや、その活動をサポートしたいと思う一方、企業や国連の勢力とともに政治に何が起きているのか把握しておくことも重要である。ここ国連大学には多くの有能な学者が揃っており、例えば食糧不足など、重要な問題に対する彼らの研究や専門知識を今後も活用していく考えだ。

気候変動に懐疑を唱える傾向が高まっているが、この原因の一端として圧倒的に受け入れられている科学を共に示すことが出来なかった各国政府の無能さが挙げられる。この傾向に対し、私たちは引き続き注視していく必要がある。

メキシコシティでCOP16が開催されるまで、気候変動問題は再び問題の焦点となる。しかし、2010年は国際生物多様性年であり、COP16同様に重要となる生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が2010年10月に名古屋で開催される。Our World 2.0は、私たちとこの地球を共有する多種多様な生命に関する問題ついてさらに考察を深めていく。

寄せられた101の貢献

最後に、ガーディアン紙をはじめ、Our World 2.0を支援して下さった寄稿者、コメント提供者、討論者、読者、国連大学のパートナー、全ての方々に心から感謝の意を表したい。皆さんに力を与えられ、Our World 2.0のサイトが運営を始めた最初の一年間で掲載された記事は101に達することができた。

皆さんの継続的な支援とフィードバックをいただくことで、より持続可能な未来に向けて活動する素晴らしい人々の記事を引き続き共有していく(皆さんが同じ思いであることを願い)ことができる。

是非Our World 2.0にもっとアクセスし、FacebookTwitterで私たちを見つけつながってください。

ハッピーニューイヤー!

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国連大学メディアスタジオの2009年度の活動をより詳しくお知りになりたい方はこちらをご覧ください。

翻訳:浜井華子

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Our World 2.0 — 2009 年を振り返って by ブレンダン・バレット and キャロル・スミス is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

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著者

キャロル・スミスは環境保護に強い関心を寄せるジャーナリストで、グローバル規模の問題に公平かつ持続可能なソリューションを探るうえでより多くの人たちに参加してもらうには、入手しやすい方法で前向きに情報を示すことがカギになると考えている。カナダ、モントリオール出身のキャロルは東京在住中の2008年に国連大学メディアセンターの一員となり、現在はカナダのバンクーバーから引き続き同センターの業務に協力している。

ブレンダン・バレットは1984年からイギリス原子力発電所の環境アセスメントに従事して以来、環境分野に従事してきました。環境スペシャリスト、都市設計者でもあり、コミュニケーションや教育をはじめ環境問題の研究のため、ITを駆使しています。

博士課程を終了後、1997年から国連大学に加わり、2002年に国連大学メディアスタジオを立ち上げました。

IUCN(国際自然保護連合)教育・コミュニケーション委員会のメンバーでもあり、オーストラリア環境研究ジャーナルやサービス・リサーチ・ジャーナルの国際編集顧問委員会のメンバーとして活躍。2002年から2005年には情報社会サミットで、国連大学の中心的役割を果たしました。

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