福島の放射能状況:進展しつつも「非常に複雑」

国連の原子力監視機関が水曜日、福島第一原子力発電所の廃炉に向けた日本の計画と取り組みに関する暫定レポートを提出した。同発電所は2011年の東日本大地震と津波の災害中にメルトダウンの被害を受けた。

10日間の視察後、19人の専門家から構成された調査団は、損壊した発電所の閉鎖へ向けて日本が進歩している点を称賛したが、現地の状況はいまだに「非常に複雑」であると警告した。国際原子力機関 (IAEA)の調査団は、現在敷地内に保管されている処理済みの水は恐らく海に放出せざるを得ないだろうと認めている。

「我々は長期に及ぶプロセスの始まりの段階にあるが、日本は状況の理解、すなわち課題に取り組むためには重要な理解を深めつつある」と、調査団長でありIAEA核燃料サイクル・廃棄物技術部長のホアン・カルロス・レンティッホ氏は述べた。「しかしながら状況はいまだに非常に複雑であり、発電所の長期的安定性を確保するために解決しなければならない大変困難な問題が今後も存在し続けるだろう」

今回の視察と報告は、原子力安全に関するIAEA行動計画から生まれたものである。この行動計画は2011年9月、IAEA全加盟国によって承認され、世界規模で原子力の安全性を強化する目的の下、世界各国の体験を十分に活用するためにピアレビュー・ミッションの利用を奨励している。

このような枠組みの中で、日本政府はIAEAを招き、「東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4号機の廃炉措置等に向けた中長期ロードマップ」に関する独立性の高いレビューを実施させた。その目的は主に次の2点である。

今回の視察は2回目である。ロードマップに関する第1回レビューは2013年4月に行われ、廃炉戦略、計画、廃炉段階の時期に関する評価と、幾つかの特定的な短期的問題や課題のレビューが含まれた。

2013年11月25日から12月4日までの視察の間、調査団は廃炉に関する幅広い問題を調査した。特に東京電力による4号機の使用済み燃料プールから燃料集合体の取り出し作業と、汚染水の管理問題に関する調査が重点的に行われた。また調査団の専門家らは、海水や沈殿物や生物相を含む海洋環境での放射能状況をモニタリングする日本政府の取り組みを検討した。

The 暫定サマリーレポートは、「今日までの19分野における重要な進展(認容できる点)」を強調し、「調査団が現行の実践方法は改善できると感じた19の助言を行っている」

しかしレポートの全体的なトーンは好意的なようだ。レポートは、廃炉措置は「莫大な資源の割り当てだけでなく最も難しい活動に取り組むための革新的技術の開発と利用が必要な、非常に困難な課題である」としながらも、政府と東京電力は4月の視察以来、さらに積極的な手法を取り入れているとしている。「日本は戦略と関連計画の改善、および安全な廃炉措置に向けて必要な資源の割り当てにおいて良好な進歩を遂げている」

「さらに調査団は、現状は非常に複雑であり、極めて困難な問題(例えば汚染水の管理、核燃料の取り出し、燃料デブリの取り出し)がいまだに存在していると述べている。それらの問題は、発電所の安定した状態を長期的に維持するために解決されなければならない」

好意的な称賛の声は別として、上記のような難しい問題は実に厄介である。最近始まった4号機の使用済み燃料プールからの燃料集合体の取り出し作業では、1533体の燃料集合体を取り出さなければならない。それは大規模かつ繊細な任務と『ガーディアン』紙がいみじくも表現した作業である。

炉心を冷却するために使用された汚染水の管理も、多方面に関連する課題だ。近隣の山々から流れる地下水が発電所敷地内へ流れ込み、原子炉建屋に浸入しているため、400トンの放射性の水が毎日発生している。日本のロードマップでは、山から流入する水の経路を変えるために地下水バイパスの建設が進行中であり、また1号機~4号機の建屋のために地下水を遮断する凍土壁を作る計画が概要設計の段階にあり、予備的作業が11月半ばに始まる予定だった。

一方、約1000個のタンクには40万トンの水が入れられ、敷地内に貯蔵されている。多核種除去設備(ALPS)は、トリチウム(アメリカの環境保護局によると「放射性核種の中で最も危険性が低いものの1つ」)を除く、すべての放射性物質を取り除くことが可能である。さらにIAEAの暫定レポートは、ALPSの「安定した高いパフォーマンス」を強く印象づけている。残念ながら、このシステムは問題が起こりやすく、先週末、報告書の発表直前に再び運転停止となった

つまり、この問題に関する専門家たちの助言から何が出てくるのか、現時点では分からないままなのだ。

「東京電力は汚染水の処理の取り組みを強化し、今後の水の管理について、あらゆる選択肢を検討すべきである。選択肢には、決められた基準に照らし合わせて管理された方法による汚染水の(海への)放出が含まれる。この選択肢を実行するためには、東京電力は安全性および環境への影響に関する適切な評価を実施し、その結果を規制に関するレビューに提出すべきである」

IAEAの調査団は視察の最終報告を1月末までに発表する予定だ。全体的に、福島原子力発電所の廃炉措置に向けての政府のロードマップは、30年あるいは40年続くと予想されるプロセスを想定している。

翻訳:髙﨑文子

Creative Commons License
福島の放射能状況:進展しつつも「非常に複雑」 by, キャロル・スミス is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 4.0 International License.

著者

キャロル・スミスは環境保護に強い関心を寄せるジャーナリスト。グローバル規模の問題に公平かつ持続可能なソリューションを探るうえでより多くの人たちに参加してもらうには、入手しやすい方法で前向きに情報を示すことがカギになると考えている。カナダ、モントリオール出身のキャロルは東京在住中の2008年に国連大学メディアセンターの一員となり、現在はカナダのバンクーバーから引き続き同センターの業務に協力している。